【台所道具のいろは】キッチンツール編:ピーラー・竹ザル……毎日のモヤっとを解決する、素朴な疑問を集めました
編集スタッフ 小林
毎日のように料理はするけれど、台所道具を大切にできている自信はない。
けれど、そのコンプレックスを克服できたなら。今より気持ちよく、毎日の台所仕事に向き合える気がして。
そんな想いから、合羽橋にある老舗の料理道具専門店「釜浅商店」に、「台所道具のいろは」について教えもらう本特集。
第1話は「包丁」、第2話は「まな板」、第3話では「鉄フライパン」と「行平鍋」のいろはについて教えていただきました。
最終話である第4話では、縁の下の力持ち「キッチンツール」のいろはを伺います。
普段は特に意識せずに使っていたけれど、毎日のように使っているツールたち。改めて考えてみると、実は知らないことが次々に出てきました。
そこで、今回は恥をしのんで、普段はなかなか聞けないような素朴な疑問を聞いてきましたよ。
竹ざるとステンレスざる、どう使い分ける?
──ざるはざるでも、ステンレスと竹の2種類あると思うのですが、ステンレスのざるのほうが優れている道具なんでしょうか?
百合岡さん:
「それぞれ用途が違うものなので、そんなことはないんです。
ステンレスのざるは、ボウルとセットになっていたり、脚が付いていたりと、料理のときに使いやすく、衛生的に使えるメリットがあります。
対して竹ざるは、ステンレスのざるよりも目が細かく、金属臭が移らないので長時間食材を載せておくのに向いています。
例えば梅干しや、干し野菜を作るときなどは、竹ざるが活躍してくれますよ。他にも食材をそのまま載せて、お皿としても使えるので便利です」
──「普通のお皿のように」使っていいんですか?
百合岡さん:
「もちろん、いいですよ!おにぎりやお素麺、これからの季節ならお鍋の食材を乗せるなど、どんどん使ってあげてください。
天ぷらなど、油の多いものに関しては半紙などを一枚ひくのがいいかもしれませんね。
使い込んでいくと、だんだん味わいのある良い色になっていきますよ〜!」
自然素材の台所道具、お手入れ方法って?
──竹ざるや蒸籠など、自然素材の台所道具は佇まいが素敵なのですが、実はお手入れが大変なのでは?と思ってしまいます。
百合岡さん:
「自然素材の道具のお手入れは、基本的にはたわしで水洗い・湯洗いするだけで十分です。
もし使っていて食材の油が気になるようだったら、洗剤で洗ってもいいですが、その素材がもつ本来の油分を落としてしまうので、あまりオススメはしません。洗剤を使うなら、しっかりとすすいでくださいね。
また、カビが生えてしまったら、たわしでよ〜く落としてください。しっかり洗ったら、最後に熱湯をかけて殺菌しましょう。
何よりもとにかく一番大事なのは、カビを生えさせる暇を与えないこと!
大切にしまっておくよりも、日頃から定期的に使ってあげるほうが、結果としてこまめに洗うので、より清潔。ですので、すぐに手に取れるところに置いて、ラフに使ってあげてください。
ちゃんとしまわないと……と思ってビニール袋に入れて保管すると、湿気がこもってカビが生えてしまうので注意です」
ピーラーの端がうまく洗えず、汚れてしまいます
──かなり登場頻度の高いキッチンツールのピーラーですが、正しい洗い方がよくわかっておらず、端っこが洗いきれていないのが気になっています。
百合岡さん:
「ピーラーを洗うとき、スポンジだと引っかかって切れてしまうし、素手だと怪我をしてしまいそうで怖いですよね。
そこでこんなときこそ、たわしがオススメです! 悩んでいたピーラーの端っこの汚れも、すっきり落とせますよ。
洗ったあとは、錆びさせないように、すぐに水気を拭いてしまいましょう。吊るしたり、引き出しにいれるなど、湿気がこもらないように注意してくださいね」
▲左から、鉄(リッターピーラー/Sparschaler)、セラミック(セラミックピーラー/京セラ株式会社)、ステンレス(ステンレスT型ピーラー/貝印株式会社)、I型(プラスティック柄I型ポテトピーラー/VICTORINOX)
百合岡さん:
「ピーラーの素材は、おおまかに分けると3種類。
切れ味がいいけれど錆びることもある鉄(鋼)、軽くて漂白可能なセラミック、錆びにくいステンレス、とそれぞれに特徴があります。
形も一般的なT型のものから、I型と呼ばれるものまで、幅広くありますよ。
I型ピーラーは包丁で皮を剥くように、横に動かして使うもの。小回りが効くので、ジャガイモなど小さなものを剥くのに向いていますね。海外で人気があるタイプです」
木べらはかたちや素材で、どう変わる?
──木べらは穴あきのもの、先が平らになっているものなど、かたちがさまざまですが、違いがよくわかっていません。
百合岡さん:
「木べらは作り手さんのこだわりによって、いろいろなかたちがありますが、もうこれは好みの話と言っていいかもしれません。
例えば先が平らなものは鍋底にしっかりあたるので、ご家庭にあるような平鍋を、底からしっかりと混ぜられます。若干斜めに角度がついているのは、木べらを実際に持ったときに、先端が底にあたるようにするためですね。
穴あきタイプだと、混ぜる際の抵抗が少なくなるので、ホワイトソースなど重たいものを混ぜるのに向いています。
スプーンのようにカーブしているものは、すくいやすくするためだったりと、どれも工夫されて出来上がったかたち。
気になる方は、お店の方や作家さんに聞いてみてくださいね」
百合岡さん:
「素材の違いだと、さくらのような硬い木は、摩耗しにくく長持ち。そして先端を薄く加工できるので、食材への当たり方が違います。お米粒のような繊細な食材を返しやすいなどの良さがあります。
逆に柔らかさのあるブナなどは、薄くすると割れやすいので厚みを持たせてあることが多いですね。そうすると大量の食材を混ぜやすいなどのメリットがあります。
何がいいというわけではないので、革靴と運動靴とで用途が違うように、そのときに合わせて、お好みで使い分けてみてください」
木べらってお手入れは必要?
──油を塗るなどのお手入れは必要ですか?
百合岡さん:
「特別なお手入れはいらないです!油も塗らなくて大丈夫。
木べらは長く使っていると、だんだん削れて小さくなってきますが、『自分の癖』がついて使いやすい形になっていきます。
焦げたり、少し欠けたり、なんて失敗もあると思いますが、それもそのへらの歴史。気にせずどんどん使ってください!」
▲こんなに大きな、業務用の木べらも発見!家の木べらもどんどん使って、マイ・木べらとして育てるぞ〜
台所道具の相棒は、たわし?
▲オススメの棕櫚(しゅろ)のたわし。いろんな形があって、どれも可愛い!
──ここまでさりげなく何度も話題に出てきた「たわし」について、気になっているのは私だけではないはず!ということで、たわしについて教えてください。
百合岡さん:
「キッチンで洗う道具だと、まずはスポンジが定番だと思いますが、少しでも表面に凹凸があるものには、たわしが大活躍!
先ほどお話ししたピーラーの端っこや、おろし金、ざるなど、スポンジだと上手に洗えないものも、しっかり洗うことができますよ。
特にオススメなのは棕櫚(しゅろ)という素材でできたもの。棕櫚のたわしは繊維が細く、天然素材ならではのしなやかさが特徴で、細かいところもしっかり洗えます。
熱にも強いので、フライパンなど熱いものを洗うときにも大活躍。さらに驚きなのが、テフロンも洗える優しさ。
とにかく万能なので、台所にひとつあると非常に便利な道具として、有名なアイテムです。
たわしと言うと最初は驚かれるのですが、実際使ってみると喜ばれるので、わたしも友達によくプレゼントしていますよ」
「知る」ことも、道具を大切にする第一歩
取材前は台所道具を大切にできていないことに、後ろめたさを感じていました。わからないが故に苦手意識を感じて、どんどん腰も重くなっていって。
けれど今回お話を聞くと「大切にする」ためのことって、意外にも些細なことばかり。何よりも、知るだけでも十分、道具を大切にすることへの第一歩を踏み出せた気がします。
いきなり明日から、完璧にはできないかもしれないけれど、まずは自分にできることを始めてみればいいのかも。
たとえ上手くできずに失敗しても、そうやって日々を重ねて愛した道具は、自分にとってかけがえのない、大切な味方になってくれるのだと思います。
(おわり)
【写真】木村文平
もくじ
釜浅商店
明治41年に合羽橋にて創業。「良い道具には良い理(ことわり)がある」を信念とし、100年以上もの間、プロの料理人や道具と向き合ってきた「良理道具(りょうりどうぐ)」専門店。包丁・まな板・鉄鍋などをはじめとした、数多くのこだわりの道具を取り扱っている。2018年5月にはパリのサン=ジェルマンにも店舗を、2019年10月にはサンフランシスコにインショップもオープンし、海外でも愛されている。
営業時間:10:00~17:30
定休日:年中無休(年末年始を除く)
Web:http://www.kama-asa.co.jp/
住所:東京都台東区松が谷2-24-1
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