【家と仕事ともうひとつ】vol.1:タブレットから行ける、「ただの私」という場所。デザイナー佐藤編
ライター 片田理恵
家と仕事は、日常の大部分を占める大切な「私の場所」。それは疑う余地がありません。だけど暮らしってそれだけじゃないんじゃない?ライターとして日々の営みを見つめるうちに、少しずつそう思うようになりました。
もっと個人的で、もっと密やかで、もしかしたらとるに足らない、でも心がそっと寄りかかれるような、自分だけの場所がある気がする。誰かに話したこともなくて、もしかしたら自分でも気づいていない、その人がその人であることを支えている、ささやかな場所。家と、仕事と、もうひとつ。
設立から14年を迎えた現在のクラシコムスタッフのみなさんと、そんなおしゃべりがしてみたいと思いました。
「あなたのもうひとつは、なんですか?」
最初に紹介するのは、デザイナー・佐藤さん。入社6年目。スタッフのみなさんからは「ななさん」と呼ばれています。「北欧、暮らしの道具店」のオリジナルリトルプレス『オトナのおしゃべりノオト』のディレクターである彼女とライターの私とは、定期的に仕事でやりとりをする仲。
ななさんはもの静かで穏やかなタイプ、口数はさして多くありません。言いづらいことは誤魔化さずにビシッというし、こうと決めたら迷わないところは頼もしい限り。とはいえ普段はふんわり穏やかな優しい雰囲気の持ち主で、そのおおらかさに助けられることもしばしばです。
何年か前、旧知のカメラマンと私が撮影のことで主張し合って火花を散らしている(ように見えた)のを、ほかのスタッフの方が心配してくださったことがありました。私たちにそのつもりはなかったんですが、その時本人以上に驚いていたのがななさん。「え?これってケンカだったんですか?」という言葉に、思わずみんなで笑ってしまったくらい。
今回はそんなななさんに「もうひとつ」がなんだと思うか、聞いてみました。
そしてそもそも「もうひとつ」ってなんだろう、ということも。
“
うーん……なんでしょうね。一晩考えたんですけど、正直、これというものが思い浮かびませんでした。私はそんな大それた趣味があるわけじゃないですし、夫とよく行く居酒屋さんも思い浮かんだものの、いまいちピンと来ない気がして。
これはもしかしたら的外れかもしれないんですけど……タブレットで動画を見ることが近いかなと感じます。最近、動画を見るのが好きで、毎日のように気づくと見ている自分がいて。
家事や用事を済ませつつの「ながら観」なんですが、画面の向こうに自分と同じような誰かがいることに妙に安心するんですよね。ごはんを作って食べるみたいなルーティン動画を、私もこっち側でごはんを作りながら見るともなく見る。
仕事が終わって、夫が帰宅する前のわずかな時間。でもそれが、なんでもない『ただの私』になれる時なのかもと思っていて。これって、もうひとつっていいますかね?
”
ああ、そうかもしれない、と思いました。タブレットというドアを開けて行く「ただの私」という場所。確かにそれは「もうひとつ」であるような気がします。私たちはいつも何かしらの役割に追われて、どうしても仕事の顔や妻の顔をして過ごすことが多くなる。でもそのどちらでもない「ただの私」だって、いるんですよね。いつも、ちゃんと、私の中に。
もうひとつというキーワードを糸口にして見えてきた、ななさんの自分自身との向き合い方。1日の中でほんの少し、自分に自分を取り戻す時間を持つということ。一見簡単なようだけれど実は難しい、そしてとっても大切なひとときだと感じました。「ただの私」になれる時間、私はちゃんと作れているかな。
家と、仕事と、もうひとつ。次回はまた別のスタッフとおしゃべりしてみたいと思います。
Photo:平本泰淳
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things.」「天然生活」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
デザイナー 佐藤
クラシコムに入社して6年目。30歳。前職ではエディトリアルデザイン(印刷物などのデザイン)を経験。夫と二人暮らし。「大の運動嫌いなのですが、最近夫が購入したリングフィットアドベンチャーにハマっています」と話す。
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