【おしゃれな人】第3話:白髪に悩み、シルバーヘアを楽しめるようになったのは。(CHICU+CHICU5/31デザイナー山中とみこさん)

ライター 長谷川未緒

ナチュラルだけれど甘く見えない、かっこいいおしゃれが印象的な「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)」のデザイナーで主宰の山中とみこさん。

前回は、トータルコーディネートのヒントや、キャップを楽しむ小物遣いなど、年齢を重ねてますます自由になるファッションについて聞きました。

続く第3話では、シルバーヘアにした経緯や、最近変わってきたおしゃれについて、伺います。

 

白髪でおしゃれは、むずかしい?

山中さんといえば、モノトーンの服にシルバーヘアのゆるやかなパーマがマッチして、年齢を重ねていくのも素敵だな、と思わせてくれます。

山中さん
「最近は白髪頭のことをグレーヘアとかシルバーヘアとかいうんですよね。

私は白髪の出はじめた40代のころから、白髪でおしゃれが決まるとかっこいいな、と思っていたんです。それに、これからどんどん白髪が増えるのに、染め続けるなんて面倒くさいですから、染めないことにチャレンジしました。でも、40代の顔に白髪は釣り合わなくて、仕方なく髪染めをしていました」

山中さん
「50代になると、髪の半分くらいが白髪になって、そろそろ白髪頭も似合うかな、と染めるのをやめてみたんですが、黒い髪と白髪の混じり具合がやぼったくて、また染めることに。

でもそれまでの髪染めでは、髪が伸びてきたときにものすごく白髪が目立ってしまって。それで美容師さんにお願いしたのは、白髪を黒く染めるんじゃなくて、黒い髪を明るい色に染めて、白髪によせることでした」

 

60代、ようやく理想のシルバーヘアになったと思ったら……

髪が伸びてきても、黒髪と白髪との落差が激しくなく、いい具合にしのげるようになって、ついにやってきた60代、髪を染めるのをやめることに。

山中さん
「ほぼ全体が白髪になって、ようやくあこがれのシルバーヘアになった!と喜んだのですが、理想とはずいぶん違いました。なんだか顔の印象がぼやけて、似合わないのです。

ストレートヘアではバランスが悪く、おしゃれに見えないと思い、パーマをかけたのは1年前です。私の髪はボリュームがあるので、美容師さんからは反対されたのですが、どうしてもパーマをかけたかったので、いろいろ考えて、髪の内側は刈り上げてもらい、パーマは縦方向に巻いてもらいました。

ボリュームも気にならないし、直毛のときよりやわらかい印象になったと周りからも評判で、パーマをかけて良かったと思っています」

ただ染めるのをやめるのではなく、さまざまな試行錯誤を経て、白髪と上手につきあえるようになったのでした。

 

はじめての眼鏡選びは失敗だらけ。

▲いちばんよくかけているのは、いちばん下のアンバレンタインの眼鏡。

山中さん
「パーマをかけたら、それまで大好きだった帽子があまり似合わなくなってしまって。それでダテ眼鏡をかけてみたところ、帽子と同じようにおしゃれのワンポイントになって、髪型ともぴったり。

加えて、眼鏡をかけると相手の目線が眼鏡にいくからか、人前に出たときの緊張が緩和されることにも気がつきました。あがり症なのですが、人前でも話しやすくなりましたね」

眼鏡はいまではお守りのような存在で、いろいろなものを試しているところ、と山中さん。でも、これまでのファッションになかったアイテムのため、眼鏡選びでは失敗もしているのだとか。

山中さん
「おしゃれな友人が、赤い小さなフレームの眼鏡をかけていて、素敵だなと思い、真似してリーディンググラスを買ってみたんです。でも私には似合いませんでした。友人はすっきりした目だから小さいフレームもバランスがいいんでしょうね。

ほかにも、知り合いがアンティークのフレームにブルーがかったグラスが入った眼鏡をかけていて、かっこいいと思って買いました。台湾で個展をしたときにかけていて、あとで集合写真を見てびっくり。裏社会のボスみたいだと思って、あれからかけていません」

誰かが素敵に取り入れていたら真似してみるけれど、似合わないものもある、と朗らかに笑います。

いまでも買って失敗することがあると聞くと、ほっとします。

山中さん
「衝動買いしたわけでもなく、よく考えて購入したにも関わらず、似合わなかったんです。眼鏡歴は浅いから、仕方ないんですよ。最近は眼鏡屋さんの意見を参考にするようにしています」

 

出産太りは元に戻らないと思っていたけれど。

おしゃれというものは、服だけでなく、小物や、髪型や体型まで含めた、トータルのバランスで成り立つと、最近、つくづく感じているといいます。

山中さん
「出産で太ってから、ずっと体重を減らせずにいましたが、限界まで太ってしまい、このままじゃあ健康によくないからと、体を絞ることにしました。

まずは運動をしたほうがいいだろうと、近所でマンツーマンの筋トレと食事法もアドバイスを受けました。糖質を減らして良質なタンパク質と野菜を摂る食事法です。

2か月で体重が落ち、次にピラティスをはじめました。これがすごく気持ちのいい感じなんです。運動が苦手だったので、60歳を過ぎてはじめての経験をしています」

また、知人が月曜断食(週に1日だけ断食をして胃腸を休め、ルーティン化した食事を採って食生活を変え、体質を改善するという養生法)をして劇的に痩せたのを見て、やってみることにしたそう。

山中さん
「体質に合っていたのか、3ヶ月で4キロ痩せました。

希望の体重になったことで、出産してから一度も履いていなかった、ジーンズを買ったんですよ。年齢で諦めなくていいんだ、と実感しました」

▲出張先でぱっと入ったお店で求めた、45Rのストレートジーンズ。

自分のスタイルができあがったと思っても、年齢を重ねることで白髪やしわ、たるみなど、いろいろな変化があり、そのときそのときで、失敗しながらもアップデートしていくことが必要。そして、年齢にとらわれず、なりたい自分でいられるように、努力していくことが大切だと教わりました。

最後に、山中さんにとっておしゃれとは?

山中さん
「服だけおしゃれならいい、ということではないんです。住みたい空間に住んで、ごはんも自分がいいと思う器で食べて、服も着たい服を着る。自分の物差しで考えて、いいと思うものを取り入れていくことが大切だと思います」

 

【写真】大森忠明

 

もくじ

 

山中とみこ

1954年生まれ。専業主婦、古道具屋店主、小学校の特別支援学級の補助職員などを経て、2003年49歳のときに大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU5/31(ちくちくさんじゅういちぶんのご)をスタート。著書に『時を重ねて、自由に暮らす』(エクスナレッジ)がある。インスタグラムアカウント@chicuchicu315


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