【久しぶりの読書】第2話:活字離れからの第一歩に。肩の力を抜いて読めるおすすめエッセイ
編集スタッフ 岡本
「本が読みたい」久しぶりに生まれたこの気持ちをきっかけに本屋を訪れると、想像以上に緊張している自分がいました。
以前は習慣として本を読んでいたのに、仕事や育児、忙しく過ごしている間に少し本と距離ができていたようです。
この特集では、「久しぶりの読書」をテーマに、青山ブックセンターの青木さんにお話を伺っています。第2話では、久々の読書におすすめの3冊をご紹介。
青木さんによると、エッセイやノンフィクション作品が読みやすいですよ、とのこと。そういえば私・岡本が先日2年ぶりに手に取った本もエッセイでした。
青木さん:
「書く人の暮らしや人生がそのまま読めるエッセイは、一編が短いものが多いんです。
誰もが目にするような日常のシーンをテーマにしていたり、あるあると思わず共感するエピソードがあったり、本をより身近に感じられるのが特徴です。
短いと簡単に読み切れるので小さな達成感を積み重ねられるのも魅力。自分のペースで読めるので、久しぶりの読書にぴったりですよ。
ノンフィクション作品は、実際に起こった出来事をベースにしているので、小説のように想像力をフルに使って読むというよりも、淡々と読み進められるものが多い気がします。
ページをめくって文章を読むことで、その物語を受け止める感覚。ノンフィクションと聞くと、硬い・重苦しいというイメージがあるかもしれませんが、さまざまなジャンルの作品があるのでぜひおすすめしたいです」
写真たっぷりで読みやすい。
おすすめノンフィクション作品
『あなたを選んでくれるもの』
▲ミランダ ジュライ 原著、岸本 佐知子 翻訳(新潮社)
青木さん:
「アメリカの新聞広告欄にさまざまな物を出品する人たちに、その理由を訪ねたインタビュー集です。
日本とは文化が違い、アメリカは個人が新聞広告の一部を買って、売りたいものを載せることができるのだそう。
そこには、革ジャンやオタマジャクシ、思い出のアルバムなど個性あふれるものばかり。中にはどうしてこんなものを?と戸惑うものも。
でもよくよく話を聞くと、それぞれにドラマがあるんです。売り出しているものから、その人の生活そのものや人生、価値観が垣間見えます。
11編のエピソードが書かれていて、1つが3〜4ページ程度の長さ。そのすべてに実際の広告写真が載っていて、写真を見ているだけでも楽しめる一冊です」
『すこやかな服』
▲マール コウサカ(晶文社)
青木さん:
「日本のファッションブランド『foufou』のデザイナーであるマール・コウサカさんがブランド立ち上げから近年までをまとめた著書です。
『健康的な消費のために』という心情のもと、販売はオンラインのみ、セールは一切やらないといったスタイルでありながら、毎シーズン発売するたびに即完するブランド。
その一貫した姿勢が生み出す美しい洋服たちを、たくさんの写真とともに見られるので、すいすい読めてなんとなく読後感がすっきりします。
もともと一着を丁寧に作る『foufou』の存在を知っていて、本を通して改めて出合い直したような感覚がありました。知らないことを知ることができるのは本の醍醐味ですが、すでに知っているものも本で読むことで新しい発見があるのだと、感じられた一冊です」
かわいいイラストにキュンとする。
おすすめエッセイ
『ざらざらをさわる』
▲三好愛(晶文社)
青木さん:
「多くの装丁やアーティストのグッズデザインを手がけるイラストレーター・三好愛さんのエッセイ集です。
三好さんのイラストは一度見たら忘れない、とても特徴的な雰囲気。街中で見かけたら『あ、ここにも。こんなところにも!」と、きっと気付くはずです。
その個性的な感性はどうやって築かれたのか、子どもの頃のヘンテコな話から現在に至るまでを綴っています。
2冊目にご紹介した『すこやかな服』も、この『ざらざらをさわる』も、読むという体験から飛び出して作者を感じられるのが面白いですよね。
本を通して知って、そこで終わりじゃない。その本を書いた人が作った服を着たり、描いたイラストに触れたり、そうやって世界が広がっていく感じも楽しんでいただけたらと思います」
青木さんいわく、これらの本はどれもひとつひとつの話がカケラのようになっていて、日々を切り取った作品ばかりなのだそう。
こういったなるべく生活に近い作品を選ぶと、読書に向かう背中を押してくれる気がしました。
第3話では、開くだけで現実逃避できるおすすめ作品をご紹介します。
仕事の休憩時間に、煮込み料理の最中に。すきま時間で本の世界へショートトリップ、してみませんか?
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
青木麻衣
青山ブックセンター勤務。書店員歴5年で文芸書を担当。公式インスタグラムなどではおすすめの本などを紹介している。一番好きな本は、川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)。
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