【エッセイラジオ】第12夜:山本ふみこさんのエッセイ「口癖」(読み手 スタッフ齋藤)
編集スタッフ 岡本
今日も1日おつかれさまでした。
皆さんこんばんは。日曜日の20時、いかがお過ごしでしょうか?
週末でリフレッシュされた方や、明日からの一週間に備えて気持ちを整えている方、思い思いの時間が流れていることと思います。
そんな誰もがほっと一息つきたい時間に「おつかれさま」の気持ちを込めて、「エッセイラジオ」をお届けします。
思うようにいかなかった昼間の出来事や、いつも心の端に引っかかっている悩み事など。生活していると日々色々とありますが、このラジオを聴いているその時間だけは、一旦それらを手放して、ゆったりと声に身を任せていただけたら幸いです。
今夜のエッセイの書き手は、随筆家・山本ふみこさん。読み手は、当店スタッフの齋藤です。
ではさっそく、今夜のエッセイの世界へ、どうぞいってらっしゃいませ。
口癖
山本 ふみこ
焦げ臭い!
あ、煮ものを火にかけていたのを、
うっかり忘れました。
忘れたのは、ほんの短い時間だったけれど……
煮ものはしっかり焦げました。
罪なき大根、にんじん、里芋、油揚げたちに
詫びながら、わたしはまたこうつぶやきます。
「ちっちゃな不幸が
ところどころ混ざってるのが、いいのよ」
これは、わたしの口癖です。
友人にも、家人たちにも
「あはは、また云ってる」と指摘されます。
それはこれまでだいぶ長いこと
生きてきたわたしが、なんとはなしに
「償っておきたい」という気持ちを
持っているからだと思います。
かつてひとを傷つけたあれやこれや、
自らつくり出した災いを、ふと思い返すのです。
気づかぬうちに誰かさんを傷つけたり、
無意識のうちに災いをつくったり、
そういうことだってあったにちがいありません。
けれども
思い返して落ちこんでいる、というのでは、
今生を精一杯たのしんで生きるという
めあてに反するというもの。
だから、ちょこちょこ償いたいのです。
借りたお金をローンで
返済するような感覚でしょうか。
ちょっとイヤなこと、困ったことが
わが身に降りかかったり、損をしたりすると、
「これで返済がすすむな」と思えて、
ほっとします。
大きくどーんと返すのは恐ろしいから、
ちょこちょことね。
「ちっちゃな不幸が
ところどころ混ざってるのが、いいのよ」
は、いまの自分を支える指針とも
いえるでしょう。
先日も末娘が、
いちにちがかりの用事を引き受けて、
「タダ働きだー!」とこぼすので、
「そりゃラッキーだわよ」と
太鼓判を押してやりました。
こんな若い時分からタダ働きだなんて、
それは返済というより、貯蓄ですもの。
ところで、
本日わたしが焦がした煮もののはなしです。
仕方がないのでザルにあけ、
水洗いしてからカレーに変身させました。
玉ねぎと肉をさっと炒めて加え、
カレー粉を振ります。
チーズとヨーグルトも加えて味を調え、
知らん顔して供しましたとさ。
あらま美味しい!
果たしてこれで
返済はすすんだことになるでしょうかね。
いかがでしたか?
ほんの数分ではありますが、心の緊張がほどけたり、すうっと眠りに入るきっかけとなれたなら、これほど嬉しいことはありません。
次回の配信も、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
エッセイラジオを通して、このささやかなエールが届きますように。それでは、おやすみなさい。
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