【スタッフコラム】20年前の住まいが、教えてくれたこと。
お客様係 石井
大学時代に住んでいた寮が建て替えられてしまった、ということをつい先日知りました。
20年前(!)の4年間、私が暮らしたあの場所は、あの部屋はもうないんだ思うと、しんみりするのと同時にたくさんの思い出が一気によみがえってきました。
大学入学と同時に、親元を離れての生活がスタートした、あの寮。
準備期間がほとんどなかったので、引っ越しは最低限の洋服と食器と寝袋を持ち込んだだけでした。布団や冷蔵庫などの家電は翌日から少しづつ買いそろえて。
引越し当初はとくに、朝が来るたびに緊張していたことをよく覚えています。
そんななか、二人部屋で同室だった先輩の存在はとても頼もしいものでした。近すぎず遠すぎずほどよい距離感を保ちながら、とても親切に接してくれていた先輩。
当時20歳か21歳だったはずですが、とても思慮深い方だったのだなと改めて感謝の気持ちもわいてきます。
大学生30人以上での共同生活には、トラブルや窮屈な思いもあったはずなのですが、今思い出すのは楽しかった出来事や、「よくあんな生活ができたな」と思うような笑えるエピソードばかり。
唐突に映画やドラマの観賞会が始まったり、昭和のマンガたちに出合わせてくれたりした談話室、試験前だけ妙ににぎわう学習室、銭湯みたいなサイズのお風呂や、冬は寒さに震えた洗濯室に、複数人が同時にトースターやヒーターを使うとすぐに落ちるブレーカー。
もし寮ではなくて、ふつうの一人暮らしをしていたら、私の大学時代はまた違ったものになっただろうと思います。
住まいはどれも「今だけ」だから
……ああ、やっぱり、あの寮がなくなってしまったこと、とっても寂しいなぁ。
あの建物だったから、あの部屋の作りだったから、生まれた雰囲気や関係性が確実にあったと思うのです。建て替わった今の寮には、あの頃とはまったく異なる雰囲気がすでにあることでしょう。
そう考えると、これまで私が暮らしてきた住まいはどれも、「その時だけ」の特別なものに思えてきます。
社会人になって本当の「一人暮らし」がスタートした1Kのマンション、転勤後に迷いに迷って決めたアパート、夫と一緒に探したマンション、そして今の住まい。
自分でもびっくりするくらい散らかっていた部屋も、逆にほとんどモノがなかった部屋もありますが、それぞれが当時の仕事やプライベートの状況が反映されたものだったなぁと感じます。
そして今、子どもたちのランドセルやおもちゃがいくつもあふれた家に住んでいるなんて、あの寮に住んでいたころには想像もしなかったこと。
「住まい方に、一つだけの正解なんてないんだな」と改めて強く感じます。
そして、住まいをつくるのはやっぱり「今の自分」でしかないんだということ。自分がどう暮らしたいのか、その気持ちはちゃんと自分自身で大切にしてあげなくちゃ、そう思います。
今は家族の意見を考慮しないといけないこともあり、実はここ数年、一人暮らしが恋しくなることがよくあります。
その気持ちって単なるないものねだりだよね、と私自身で軽んじていたことがちょっと申し訳なくなった週末。ささやかですが「私が一人暮らしだったらこうするよ」というわがままを通すスペースを、寝室の一部につくりはじめていました。
そうやってこれからも、自分自身が楽しめるような暮らしを日々アップデートしながらつくっていこうと思います。
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