【一年の終わりに】後編:雑貨のパワーは、やっぱりすごい。
編集スタッフ 寿山
もうすぐ2020年が終わります。
いつになく沢山の感情をくぐり抜けた今年。確かなことは一つもないけれど、一年は終わる。
つかの間でも、ホッとできたなら……
元気ですか?と、当てどもない話をしたくて。西荻窪にある雑貨店「Loupe(ルーペ)」の店主、出下厚子(いでした あつこ)さんを訪ねました。
いつになく、雑貨にパワーをもらった一年
Loupeは、わたし寿山がパワーをもらいたいとき、つい覗いてしまう店です。
店主が世界中から集めた小さな雑貨は、見てるだけでほっこりしたり、ワクワクしたり。生活には直結しないけれど「そばに置いておきたい」と、思わず迎え入れてしまうのです。
身のまわりの雑貨たちから、いつになくパワーをもらっていたこの一年。雑貨店を営む出下さんは、どんなことを感じていたのでしょうか。
悪いことばかりじゃないと、思える瞬間も
春先から2時間ほど営業を短縮しているLoupe。出下さんは、変化にどう対応してきたのでしょうか。
出下さん:
「最初は、2時間のロスは正直きついなあと思いました。客足は減ったし在庫管理も大変ですが、店を閉めたあと、営業中では難しい事務作業やディスプレイ替えが出来るのは、案外いいのかもしれないと思うようになりました。
ふいに手に入れた “ひとり時間” という感覚もあって、本を読んだり、動画を見たり、あまり作らなかった煮込み料理をやってみようと思えたり。こんな言い方をしたら不謹慎かもしれないけれど、ちょっと贅沢だなとも思うんです。豊かになった部分もあるのかなって」
いまの状況でも、出来たこと
大変なことは沢山あったけれど、希望を感じる出来事もあったと出下さん。
出下さん:
「もともとお客さんだった方が、デザインやコンサルティングの仕事をしていて、ここで展示会をしたいと提案してくれたんです。
新しい企画展は久しぶりで、自粛期間が終わった後とはいえ、人を集めるようなことをやってもいいのか。やるならどんな制限が必要か、本当にやるべきなのか。いろいろと悩んだりもしましたが、いま出来る範囲のことで、お客さまに楽しんでもらえたらと、迷いながらも開催しました。人数制限や換気、消毒にご協力いただきつつも、常連さんや、企画してくれた方の知り合いにも喜んでいただいて。
動けなくても、この状況でも、出来ることはあるのかもしれないと感じました」
雑貨のことを考えると、少し明るい気持ちになれる
とはいえ、まだまだ不安がなくなることはありません。それでも、雑貨のことを考えると、少し明るい気持ちになると出下さんは話します。
出下さん:
「不安な気持ちは日によって増えたり減ったり、まだまだ『どうしよう』と思うことはなくなりません。それでも、何も我慢しなくていい時がきたら、どんなに気持ちがいいだろうと想像するんです。
そのときは、どんな新しいモノとの出合いがあるだろうって、考えるだけでワクワクしてきて。新しく見つけたモノの向こう側には、どんな世界が広がっているだろうと、ドキドキしながら待っている自分もいます」
すぐ手の届くところに、救いがあれば
店に並ぶ雑貨を指さして「これ、かわいいでしょ?」と、くったくなく笑いながら話す、チャーミングな出下さんの雑貨自慢が大好きです。聞くだけで元気がでるし、Loupeで手にした雑貨と暮らしていつも思うのは、大袈裟でなく、雑貨は生きる糧になるということ。
抑揚のない毎日を、カラフルに色づけしてくれます。雑貨であれ何であれ、すぐ手の届くところに救いがあるのはいいもの。
日常を、好きなもので埋め尽くしたい。ただただ、自分のために。
いつになく、わがままな自分も受けとめようと、今年を振り返って思うのです。
まだまだ先は見えないけれど、雑貨に元気をもらいながら、来年もなんとかやっていけたなら。
一年の終わりに、そんなことを思いました。
【写真】鍵岡龍門
もくじ
出下厚子
香川県出身。東京西荻窪にて雑貨店「Loupe」を営む。年に数回の企画展を行い、雑貨という括りで世界中のアイテムを扱っている。
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