【44歳のじゆう帖】「別れ」と「新しい環境」について
ビューティライターAYANA
別れの季節に思うこと
春はお別れの季節です、と昔のアイドルは歌いましたが、毎日が夏休みのようなフリーランス生活が10年目となっている私にとっては、毎日が節目のようでもあり、永遠に節目が来ないようでもあり。そういえば近頃はそんな風に別れを意識することも少なくなったな、と思っております。
会社員だったころは、同僚の移動や転職などで別れを感じることもありました(春とは限りませんが)。学生の頃は言わずもがなで、進級・進学は必ず何かしらの別れを伴うものです。
そんな私のもとに、別れの香りを彷彿とさせる書類が届きました。息子が4月からお世話になる小学校より配られた、入学準備の冊子です。
5年間通った保育園とはお別れし、知っている人のいない小学校へと生活の場を移す……これはなかなかに怖いことではないでしょうか。手提げ袋、体操着、ランチョンマット、防災頭巾など、用意せねばならない物量に動揺しながら、息子は新天地でちゃんとやっていけるだろうか、色々な変化についていけるだろうか、と心がざわざわしてしまいました。
この心のざわつきは、かつて経験した進学やクラス替えのときの自分の心境をありありと思い出させてくれる、とても久しぶりに感じるものでした。
心の様子を言語化するなら「恐れ・不安・心配」といえます。新たな環境でうまくやれなかったらどうしようとか、誰からも相手にされなかったらどうしようとか、そんな思惑で構成されているような気がします。
新たな環境は、わからないことだらけ
思えば私はいつも、慣れ親しんだものと別れを悲しむよりも、別れたあとにやってくる新しい環境(に慣れていないこと)に怖れを抱く傾向が非常に強い人間でした。誰かとの別れについては、単純に会う時間が減ることはあるかもしれませんが、関係性が変わらない以上そこにある価値も変わらない、と思っているからかもしれません。
それよりも、何かとの決別によって、自分のなかに大きな空洞や余白が生まれる。そのスペースが何で埋まるのかがわからない、埋まるかどうかすらわからないという未知の状態が怖いんだと思います。
保育園に息子を預けて仕事をするという慣れ親しんだスタイルを卒業して、これからライフスタイルはどうなってしまうのか。息子がどんどん多感になり、やりたいことややらねばならないことが増えていくとき、寄り添っていくことができるのか。
今でさえ大したことのできてない母親なのに、小学生になった息子にとって、いい感じの「お母さん」になれるのか?ということですね。
未知なるものを楽しみに思うために
この気持ちは(繰り返しになりますが)クラス替えのとき、大学に進学するとき、就職先にはじめて行くときなどなどに感じてきた不安とまったく同じもので、むしろ懐かしさすら感じてしまいます。
思わず若かりし頃の気持ちに身を委ね、これからどうなるのか不安だよーと叫びたくなるのですが、冷静になると、これまでの経験上、新しい環境に飛び込むときの不安は最初だけで、永遠に続くということはあり得ません。
そのことを振り返り、大丈夫だよ、なんとかなるよと自分に言い聞かせるしかないし、むしろ未知の世界に飛び込むことを、そろそろ楽しめるような大人でありたいものです。
そして、こういった私の不安な心境を変に息子に重ねることなく、息子の心の機微には可能な限りニュートラルな状態で向き合いたいものだな、と思います。
なんて精神論を語ってないで、息子が少しでも不自由なく過ごせるよう、入学準備の手をさっさと動かせよと自分にツッコミを入れたくなります。「備える」ことは、不安を減らして楽しみを増やすひとつの大きな方法ですよね。
【写真】本多康司
AYANA
ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang http://www.ayana.tokyo/
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