【スタッフコラム】わが家のトーストはだいたい焦げている

編集スタッフ 津田

あっ、しまった。と思ったときは時すでに遅し。フライパンの上のトーストはだいぶ黒く焦げていました。

平日の朝の、とても忙しい時間の、悲しい出来事です。思わず「はあ〜」とため息が漏れますが、落ち込んでいるひまはありません。

あたしゃ大人ですからね、こんなことでは動じませんよ、という表情をつくり、バターナイフで焦げたところをざっざっざっと落として、ざわつく心に凪をつくります。

てきとうな鼻歌を歌ってみたりなんかして。誰にも見られていないのに、わたしはご機嫌ですよ、と証明するかのようで、我ながらおかしいのですが。

さあ、もう大丈夫。バターを溶かしはちみつをかけたら、息もつかずむしゃむしゃと食べて、キッチンを片付けておしまい。

牛乳をたっぷり入れたアイスコーヒーとともに、パソコンのまえに座って、会社のみんなへ始業の連絡をします。今日も、いつもと変わらぬ一日をはじめよう。そう自分に言い聞かせて。

 

ふと冷静になったタイミングで、わたしってよくトーストを焦がちゃうんだよなあと、この朝の出来事を思い出していました。

朝だしやっぱり慌ててるのか。いや、ぼんやりしているのか。あるいは、ひょっとすると、わたしはトーストを焼くのが苦手なのかもしれない……?

その可能性に気づいたら、なんだか愉快な気持ちになってきました。

トーストを焼く。喫茶店みたいに、分厚くてじゅわっとバターが染み込んだトーストのうれしさってあるから、そういうのが焼けるひとは「得意」だとしても、逆に苦手だという人はあんまりいなそうじゃないですか。

だってわたしはべつに、特別においしく焼こうとか、理想の焼き目じゃなきゃいやだとか、並々ならぬこだわりをもっているわけではないんです。もちろん喫茶店のトーストにあこがれはあるけれど、自分で焼くときはふつうに焼けたら十分。それなのに高確率で失敗するってどうなんだろう。

うん、これはやっぱり苦手と言っても差し支えないんじゃないかな。

ウィークポイントだと認めてしまったら、肩のチカラがふっと抜けるようでした。平然とした顔で、いろいろなことを、そつなくこなそうとしている自分でいるときより、よほど人間くさかったりして。それも悪くないなと思ったら、うっふっふ、と小さな笑いが込み上げてきました。

わたしの焼くトーストはだいたい焦げてる。それでも今日も前を向いて生きていこう。黒々とした面は下にして、あむあむと素知らぬ顔で食べちゃおう。前向きに。前向きに。おまじないのように繰り返しながら。

 


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