【新連載|我がままな晩酌】今夜は、やさしいハムエッグで晩酌を

ツレヅレハナコ

皆様、こんばんは。
ツレヅレハナコと申します。

普段は、食まわりやお酒、旅についてのエッセイを書いたり、簡単だけれどお酒が進むおつまみレシピを紹介したりしています。

都内でひとり暮らしをしていて、仕事場は基本的に自宅。台所で料理の撮影をしたり、書斎で原稿を書いたり、リビングで打ち合わせをしたり……。毎日朝9時から仕事を始め、夕方の17時にはビシッと終了します。

それは、なぜか。一番の理由は「早く晩酌したい」から! 正直、いつも16時半くらいになると、もうソワソワ。「今夜のおつまみは何にしよう……」脳内ではアップが始まり、書きかけの原稿は「⌘S(保存)」キーを押されまくります。

とはいえ私の晩酌スタイルは、日によっていろいろ。気力も体力もある日は、テーマを決めて3品も4品も作る豪華晩酌。逆にへとへとな日は、ちくわをそのまま1本かじってビールを飲んで終了。そんな夜だって(わりとよく)あります。でも共通しているのは、食べたいものだけを食べながら、飲みたいお酒を自由に飲む幸福感。「はー、今日も1日おつかれさん!」と自分をねぎらえる時間は、ほかでもない私にしか用意ができません。

なにしろ、ここは自分の家。誰に気を使うこともないのです。部屋着にすっぴん、眠くなったらベッドはすぐそこ。お酒を片手に、スマホをいじるもよし、ぼんやり考え事をするもよし、なにもしなくてもよし……。

今は少々きゅうくつな日常ではあるけれど、そんな時間を1時間でも過ごせれば、明日をちょっと元気に過ごせる心のチャージができるような気がします。

さあ、今夜はどんな晩酌をしましょうか?

 

ハムエッグとは、トーストやコーヒーと朝ごはんに食べるもの。そんなイメージが強いかもしれません。でも私の場合は、断然、晩酌のつまみ。

そもそも、好きな食べ物を聞かれたら「卵!」と秒で答えるほど、私にとって卵は欠かせない存在。

生卵とゆで卵は10個ずつ、時には味つけ卵や温玉も冷蔵庫に常備しています。毎日3個は必ず食べるし、甘いものを食べない分、小腹がすいたらゆで卵をひとつ。ハムエッグが晩酌に登場するのも自然な流れなのです。

「今日はハムエッグで呑もうかな~」と思ったら、用意するのは小さめのフライパン、オリーブオイル、卵、塩、こしょう。私のフライパンは、鍛造作家・成田理俊さんによる鉄製のもの。とても軽くて焦げ付きにくく、なによりその美しいデザインが気に入っています。そして、これがハムエッグをつくるのにぴったり。

台所に立ったら、まずはビールを片手にフライパンを中火で温めます。(呑みながらつくるのが晩酌の醍醐味)

よーく温まったら、オリーブオイルを大さじ1くらい。鉄製なので、ちょっと多めの油がポイントです。半分に切ったハム2枚をフライパンの中央が空くように放射線状に敷き詰めたら、卵を2個割り入れましょう。そう、晩酌の卵は2個! だって、これが今夜の主役ですから!

ここからは、自分が今夜どんなハムエッグを食べたいかによって、調理方法が変わってきます。

黄身がオレンジ色に輝くハムエッグにしたければ、ふたをせず超弱火にしてじりじりと黄身に火が通るのを3~4分待ちましょう。少し時間はかかるけれど、この方法なら白身のふちも茶色く色づき、カリカリのふち、プリプリの白身、ねっとり半熟の黄身に出会えるはず。この焼きあがるまでの様子を、ビール片手にぼんやり眺めるのも晩酌の楽しさ。

でも、今夜の私は、「蒸し焼きハムエッグ」気分。卵を割り入れたら、卵の周りに大さじ2くらいの水を回し入れてふたをします。弱火にして待つこと1~2分。ふたを開ければ黄身の上には白い膜ができ、白身はプリッと分厚く仕上がるのが、蒸し焼きハムエッグの特徴。蒸気のせいか、なんだか少しやさしいハムエッグになるのです。

私は、しょうゆ派だけれど、もちろん味つけだって自由。塩&こしょうでもソースでも、ケチャップでもマヨネーズでもお好きなものを。せっかく2個あるのだから、半々の味つけにするのも良いし、ナンプラーをかけると一気につまみ度がアップするのでお試しを。

半熟の黄身にぷちゅっと箸を入れたら、少しずつ切り取った白身やハムをソースのように黄身にからめていただきます。ひと口食べたら、ビールもひと口ゴクリ。食べ終えるころには、「ハムエッグは立派なおつまみだー」と思えることでしょう。

ちなみに、大きいフライパンで作るハムエッグ晩酌も良いものです。プチトマトやピーマン、ズッキーニなど、焼くとおいしい野菜をハムエッグの脇で一緒にジュージュー。ボリュームもアップするし、野菜も摂れて一石二鳥。

外食では、なかなかできないものこそが、「ハムエッグ」晩酌。とことん自分好みに焼きあげて、お酒とゆっくり楽しむ時間はプライスレスです。一皿のハムエッグが、その夜を特別なものにしてくれる。そんな自分だけの晩酌を、ぜひ楽しんでみてくださいね。

 


食と酒と旅を愛する文筆家。東京都中野区生まれ。お酒とつまみと台所道具がある場所なら、日本各地から世界各国まで旅をし続ける。著書に『女ひとりの夜つまみ』(幻冬舎)、『食いしん坊な台所』(河出文庫)。最新刊は『ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳』(扶桑社)。食や日常を綴るSNSも人気。
Instagram:@turehana1
 

大阪生まれ。東京を拠点に書籍、雑誌、WEBなどで、人、食、旅など幅広いジャンルの写真を手がけている。食いしん坊がゆえに、旅先では必ず市場に行き、働く人や、美味しいごはんの写真を撮り続けている。

Instagram:@etokiyoko HP:http://www.etokiyoko.com/

 


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