【45歳のじゆう帖】「ひとりで全部決めなきゃ」という重圧

ビューティライターAYANA

自分で決めることに疲れてしまう

日常生活のなかで、誰かが決めてくれればいいのに、と思うことがよくあります。

仕事はフリーランス、生活はシングルマザーという属性で生きております。そのため指示をしてくれる人が基本的には不在です。上司とまではいかなくても、あれってどうだったっけ?みたいに確認しあえるパートナーもいない。その状況に地味にしんどくなることがあります。

思考がパンクするのは、結構些細な瞬間です。夕飯を用意しなければならないのにメニューが決まっていないとか、スケジュールが詰まりすぎているとき、あるいはスカスカなとき。要するに状況をコントロールできていないときです。

私は申し訳ないくらいに感覚的に生きている人間だと思います。計画性がなく、色々なことを直感で決めてしまいます。それは自由な生き方と言えるかもしれませんが、私は自分のこの性質をあまり気に入っていません。

どちらかというと計画的に物事を進めたいと思ってるし、誰かの指示にしたがって動き、望まれた結果を出して評価されたいという考えもあります。

けれどどういうわけか先のことを考えられない。具体的な将来の夢を持つことが難しい。これについては昔から何度もトライしていますが、2年以上先のことを考えると頭がぼんやりしてしまい、イメージを描くことができないのです。

また、なぜか昔から上司というものがいませんでした。35歳までの会社員生活のなかで、誰かの部下だったことがないわけではありませんが、すべての上司(かなり限られた人数ですが)が「あなたに構っている暇はないので、あなたはあなたで好きにやってください」という姿勢でした。

だから、誰かのアシスタントとして働くとか、信頼できる上司に仕事を叩き込まれるとか、そういった境遇には非常に憧れがあります。

「すごろくツアー」を思い出した

つまり私は、自分でなにもかもコントロールする才覚がないのに、それをやらざるを得ない状況に置かれていることに悲観しているわけですね。

そんなことを考えているときに、ふと思い出した遊びがあります。大学生のとき、仲のいい友人とふたりでやっていた「すごろくツアー」です。

これはとてもシンプルな遊びで、ルーレットで出た数の分だけ進んだ駅で降り、その駅の周辺を探索するというものです。どこまでも行けてしまうと大変なので、当時はまだ横浜〜渋谷間で路線が完結していた東横線が、定番の開催場所でした。

午前中に集合して、だいたい1日に3駅くらいをまわっていたと思います。といっても、何か特別なことをするわけではなく、ファストフード店や喫茶店で食事やお茶をしたり、古本屋など気になるお店に入ったり、公園で写真を撮ったりと、どの駅でもやることは大体似通っています。要するに散歩ですね。

それでも偶然出会う子供たちや店のおじさん、めずらしい植物、抜け道、おいしいパン屋さんなど、知らない土地の風景が見せてくれるものは色々とありました。もうどこかに行ってしまいましたが、その日にまわった場所の記録をノートに書くのも楽しかったです。

私が欲しいのは「指示」ではないのかもしれない

久しぶりに思い出して、あれって最高の遊びだったなぁとしみじみしてしまったのですが、そこで思い至りました。なぜ私がすごろくツアーを好きだと思うのか。ルーレットによって、その日に降り立つ場所が用意されているからなのです。

たとえばルーレットがない「東横線全駅制覇ゲーム」みたいなものだったら、自分たちで行く駅を決めなければいけません。ひとつずつ順番にいくのか、あいうえお順にいくのか、あるいはランダムにいくのか、いずれにしても、「どこに行くかわからない」というワクワク感はありません。

ですがルーレットであれば、降りる場所は天の采配によって決まります。そうして決めてもらった場所を自由に楽しむというスタイルにたまらなく面白さを感じていたのだと、今はっきりわかりました。

これって、冒頭の「自分でなんでも決めるのがつらい」という気持ちと繋がっているという感じがします。「ここに行きなさい、でも、そこで何をやっても構わないよ」という適度な指示(啓示)。ある程度の自由。

その温度感がよいのだとすると、今の私が立っている場所(フリーランス、シングルマザー)というのは、やはりそれなりに妥当な立ち位置である気がします。

何か日常のなかで「すごろくツアーのルーレットなるもの」をみつけておけばいいのかもしれません。例えばタロットカードのようなものや、友人のアドバイスを頼ってみるなど。方向性を指し示してくれるものがあれば、私はきっともっと楽しくやれるはずです。

こっちに向かって歩いてね。でも、歩き方は自由だよ。そんなテンションがぴったりくるというのは、ある意味とてもわがままだと思います。だからこそ私は感覚的に生きてしまうのであり、そういった自分の特性にあわせた処方箋を自分で探し、持っておかなければならないのでしょう。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

AYANAさんに参加してもらい開発した
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AYANAさんも立ち会って制作した
スタッフのメイク体験
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