【力を抜きたい日の食卓へ】第十回:マンネリばんざい。名脇役の副菜

麻生 要一郎

良い映画やドラマに欠かせないのは、名脇役の存在である。いくら主役が張り切ったところで、一人舞台ではどうにもならない。それは食卓でも、同じ事。

主菜、副菜、ご飯に汁物、お漬物と並ぶと、僕は気持ちが落ち着く。もちろん、食卓にはルールはないから、何が増えても、欠けても、良い。たまに、主菜、主菜、主菜ばかりの日になってしまうと、そりゃ豪華なのだけれど、まとまりがなく落ち着かない。

僕がまだ二十代の頃、初めて自分の部屋を借りて友人達を招いた時、野菜の揚げ浸しを作った。先日、古い付き合いの友人と話していたら、そんな話になり、自分でもすっかり忘れていた事を思い出した。他にも色々作ったはずなのに、二人ともそれ以外の料理の記憶がない。母が揚げ浸しを作ってくれたことはなかったし、インターネットでレシピを検索する時代でもない、雑誌か料理本を読んで作ったのだと思う。宿のお客様への料理としても作った。誰かが来る時、ちょっと野菜が余ったりした時にも重宝する一品。

最近気に入っているのは、その中に人参を入れること。春に出回る小さな間引き人参、いつも持て余していたのだけれど、丸ごとか半分に切って、揚げ浸しにしたらとても美味しい。素揚げして、塩をまぶしただけでも良いくらい。まあ、わざわざ材料を買い揃えなくたって、冷蔵庫の中を眺めてみれば、中途半端に余った茄子や、ピーマン、煮物に使いきれなかった南瓜、サラダで余ったミニトマト、ししとう、いんげん豆、ごぼう、良さそうだなと思えば、何でも良いと思う。

酒の肴にするならば、レシピよりもっと味を濃い目にするのも良い。暑い夏の日、素麺と一緒に食べるというのも美味である。大根おろしを添えるのも、さっぱりする。食卓に出す時、ねぎや茗荷や紫蘇を刻んでお好みで散らすのも、風味が変わって良い。削り節を一緒に盛り付け、ちょっとお酢を効かせるのもまた一興。色々な作り方があると思うけれど、忙しい時には、めんつゆで味を決めてしまうのが、とても楽なもの。めんつゆ、時間と気持ちに余裕がある時には、自家製を1本作っておきますが、今は食料品店に行けば、たくさん種類も揃っているし、お気に入りを見つけておくと、日々の強い味方になります。

揚げ浸しをはじめ、名脇役である副菜は、マンネリで良いといつも思っている。僕のケータリングで届けるお弁当、唐揚げ、焼き魚を支える名脇役達は、卵焼き、青菜のお浸し、切り干し大根が定番。時折、変えようかなあと思ったりするけれど、まあこの味を求めていらっしゃるしと、そのままで。ドラマや映画でも、お決まりの名脇役が出てくると、時には主役以上の存在感で、ストーリーを盛り上げてくれる。

定番中の定番である胡麻和えは、時間がある時には胡麻を煎ってすり鉢でするけれど、忙しい時にもう一品という時には、すり胡麻で済ませてしまう。何も難しく考えなくて良い、野菜を3種類くらい胡麻と合わせたら、彩り綺麗な小鉢の完成となる。

去年の夏、家族のような友人の、小学生になった愛娘が、学校から課された夏休みの自由研究のテーマに「料理を作っておもてなし」を自ら掲げたとのことで、先生役として一緒に料理をしたのは、僕にとっても良い思い出となっている。お母さんと買い物をして嬉しそうに、やってきたお嬢は、手製のお品書きを広げて見せてくれた。その中に「野菜の揚げ浸し」とあった。真剣な眼差しで野菜を切る、こう切った方が良いとか細い事は言わず、怪我をしないようにだけ見守って、あとは自主性に委ねる。「野菜を揚げる時には、油がはねるので水分をよく拭いてから…」と言い掛けた辺りで、もう野菜は油の中に投入された。野菜の水分でパチパチと跳ねる油を、少し驚いた様子で眺めていた。跳ねる油に耐えながら、僕は野菜を引き上げた。

他のお料理と食卓に並べた揚げ浸しは、とても美味しかった。たくさん作ったから、冷蔵庫に一晩置いて翌日も食卓に並べた。その夜にやって来た、友人が一口食べて「美味しい」と言う、僕はそれがとても誇らしかった。いつか彼女がもっと大人になったとき、絹さやの筋でもとりながら、「あなたのお母さんも、そう言えばそんな事言っていた…」なんて、人生相談の相手が出来るような存在でいたいと思っている。

食卓は “マンネリ万歳” そう自分に言い聞かせながら、今夜は揚げ浸しとごま和えを作って、干物でも焼こうかな。いつもの食卓は、いつか必ず恋しい場所となる。

揚げ浸し
材料
・茄子 4本
・ピーマン 3個
・パプリカ 赤 1個
・パプリカ 黄 1個
・にんじん(小さめ) 2本
・ミニトマト4個
・だし 300cc
・めんつゆ 大さじ2(お好みで加減してください)
・醤油 小さじ1
・揚げ油 適量

作り方
1. 野菜はよく洗ってから、食べやすい大きさに切る。茄子には隠し包丁(斜めに切り込みを入れる)をして、味が染み込みやすくする。
2. 油でさっと揚げて(茄子、にんじんはじっくり揚げて、ピーマン、パプリカ、ミニトマトは軽くあげるだけで大丈夫です)、バットに上げて、キッチンペーパー等で少し油を拭き取る。
3. 保存容器にだしを注いで、めんつゆで味を整え、2を漬けていく。30分〜1時間味を染み込ませたら完成。器によそって、おろし生姜を添える。

胡麻和え
材料
・ほうれん草 1束
・舞茸 1パック
・にんじん(小さめ) 1本
・すりごま 大さじ3
・醤油 小さじ1
・砂糖 小さじ2

作り方
1. ほうれん草を茹で、冷水に浸して熱をとり、水気をよく絞っておく。にんじんは細切り、舞茸はほぐして、茹でてから、水気を切る。
2. ボールに、すりごまと、醤油、砂糖を入れて、合わせる。
3. 一口大に切ったほうれん草、舞茸、にんじんをもう一度水分をよく切って、2の中に入れてよく和えたら完成。

家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについてのエッセイなどの執筆を経て、初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を発行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。

Instagram:@yoichiro_aso

 

フォトグラファー。1974年3月東京生まれ。雑誌、単行本で主に暮らしまわりを撮影。 好きな被写体は人物と料理。著書に、17組の人とその人の作った料理を撮り、文章を綴った『人と料理』(アノニマスタジオ刊)がある。他に『まよいながら、ゆれながら』(文・中川ちえ)など。

Instagram:@wakanababa

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