【おしゃれな人】03:オンオフは、無理して作らない。移住して気づいた、暮らしと仕事のバランス

ライター 瀬谷薫子

50代後半でスキンケアブランド「joscille(ジョシーユ)」を立ち上げ、鎌倉に喫茶兼ギャラリー「アピスとドライブ」をオープン。やりたいことに真っ直ぐな今井クミさんに、今回はお話を聞いています。

第1話では仕事、第2話ではおしゃれについて伺いました。第3話では、都心から鎌倉へ移住をした経緯と、今の暮らしについて伺います。

第1話はこちらから

 

縁もゆかりもない鎌倉に、移住を決めた理由

東京・神宮前に暮らし、都心で長く働いてきた今井さん。もともと都会派で、東京以外に住む選択肢は全くなかったといいます。そんな彼女が、鎌倉に拠点を移したきっかけは何だったのでしょうか。

今井さん:
「コロナ禍1年目の夏、どこにも出かけられない中で、少しだけ羽を伸ばそうと思って鎌倉へ出かけたんです。

ちょうど今の『アピスとドライブ』がある場所の方へ、山を眺めながら坂を登っていくときに、なんだか気持ちが楽になって。都心で肩に力を入れながら暮らしていた自分に気づきました。

もちろん、私にとって東京は大好きな場所です。そして、長く仕事を頑張ってきた場所。

けれど、そことはひと区切りをつけて新しい暮らしを始めてみてもいいのかも、と。そんな気持ちになったんです」

思い立ったら早いのは「joscille」を立ち上げた時と同じ。旅行から帰って2ヶ月後には、土地を探して移住を決めたといいます。

 

人見知りだった自分が、お店を始めることに

そしてこの場所を見つけたとき、お店を作ることが頭に浮かんだという今井さん。喫茶店も、いつかおばあちゃんになったらやってみたいと思っていた夢のひとつだったそう。

どうせなら思い残すことなく、やりたいことをやろうと。そんな気持ちで開いたのが『アピスとドライブ』でした。

▲店に並ぶ書籍やプロダクトの多くは、今井さんや旦那さんがデザインした思い入れのあるもの

今井さん:
「ここに場を作ることで『joscille』の商品をはじめ、デザイナーとしてこれまで関わってきた沢山のプロダクトが置けたらいいな、と思っていました。

自分が心からおすすめしたいものを、実際に人の手に渡せる場所を作ることが、デザインをしてきた自分にとっての終着点なんじゃないかと。今、実際にそれができているのは幸せなことだと思います」

▲同じ鎌倉で製陶を行う林彩子さんの器も店で取り扱う

実際に店を営んでみると、日々の在庫管理や商品の発注、ギャラリーの展示の企画など、やることは本当にたくさん。それに今井さん、じつはかなりの人見知り。慣れない接客にも、最初は緊張しきりだったそうです。

それでも、お店をはじめて1年。少しずつ常連のお客さまも増え、場をもつことの楽しさを感じているそう。

今井さん:
「駅から離れたこの場所に、忙しく働く人が、週末にゆっくり羽を伸ばしにきてくれたら嬉しい。自分が鎌倉にきてリフレッシュしたように、束の間でもほっとするひとときを共有できたらと思います」

 

疲れたら休む。当たり前のようで、忘れがちなこと

▲自宅にも大きな窓を設け、家の外にある山々と共に過ごせるようなつくりにしたそう

そう話す今井さん自身も、じつは休むのが苦手。けれど鎌倉に来て、それが少し変わったそうです。

今井さん:
「ここに越してきて驚いたのは、日が沈むと一気に、辺りがしんと静かになること。周囲でお店をやっている方たちも、ぴったり閉店時刻にはお店をでて、自宅に戻っていくんです。

疲れたら、休むこと。それがここに来てからはできるようになりました。よく考えれば、それって当たり前のことだったはずなんですが、知らぬ間につい頑張りすぎていたんですね」

休みの日は、外をぶらぶら散歩したり、近くの海や山へ出かけたりと、休日の過ごし方もごくシンプルになったという今井さん。これからしてみたいことは、山登り。まさか自分が山に興味を持つなんて思わなかったそうです。

▲愛猫のトラと共に過ごす時間が、自宅では大切な息抜きに

 

それでも、仕事は好き。オンオフは無理につけなくてもいい

鎌倉への移住を経て、大きく変わった暮らしに対する見方。

けれどそれは「オンオフをつける」ということとは少し違って、やっぱり四六時中、仕事のことを考えてしまうのだと今井さんは笑います。

今井さん:
「仕事を終えて、夜に着ていた服をハンガーにかけながら『ああ、やっぱりこの服素敵だな。お店で扱えないかしら』なんて次の仕入れで頭がいっぱいになることも。今の私にとっては、暮らしがそのまま仕事になっているんでしょうね」

仕事=暮らしであることが、今井さんにとっては心地よい働き方。思い切って立ち上げたスキンケアブランドと、お店という2つの軸は、彼女にとって理想的な「仕事」の形を見つけるきっかけになったのかもしれません。

今井さん:
「これからやってみたいのは、日本全国を旅すること。魅力的な生産者の方に出会いながら『joscille』のものづくりを広げていきたいと思います。

実はこれまでの人生では、海外ばかりで国内に目を向けることがほとんどなくて。まだまだ、知らないことがあるんだろうとワクワクします」

長年人見知りだったはずなのに、最近は新しい人との出会いが楽しくなってきたという今井さん。彼女に吹く追い風は、まだまだ続いていく予感です。

私もその風に乗せてもらったように、軽やかな気持ちになりながら、アピスとドライブを後にしました。

 

【写真】濱津和貴


もくじ

今井 クミ

デザイナー・アートディレクター。スキンケアブランド「joscille」を立ち上げ、鎌倉で喫茶兼ギャラリー「アピスとドライブ」を営む。https://apis-and-drive-shop.com/

 


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