【エプロンで、チャーミング】後編:人生の途中。17歳差のふたりではじめた、新たな道のり(エプロン商会)

編集スタッフ 糸井

洋服感覚で今日の柄を選んだり、重ね着したり、そのまま出掛けてみたり。そんな「とっておきのマイエプロン」があったら、家時間はどんなに楽しくなるでしょう?

このエプロンを作るのが、エプロン商会の市村美佳子さん滝本玲子さんのおふたりです。

素敵なエプロンを作る、ふたりのチャーミングな魅力を知りたくて。前編では、まずエプロンの魅力について。後編では、ふたりがブランドをはじめるまでの道のりを伺いました。

前編はこちら

 

わたしにとって「おしゃれ番長」だったんです

17歳差で、メインの仕事はそれぞれ別(市村さんはフラワーデザイナー、滝本さんはデザイン事務所の代表をしています)。そんなふたりの出会いは、行きつけのギャラリーでした。

市村
「オーナーに紹介してもらい話してみたら、中学高校がたまたま一緒。それからも、あちこち展示会に行くなかで偶然会うことも多くなったんです。

その頃から滝本さんは、わたしたちのなかで『おしゃれ番長』。コーデはもちろん、小物使いやアクセサリーの取り入れ方が上手で、自分に似合うものがパッと分かる人。まさに格好いい大人の女性でした」

 

もう、飽きたのかなと思っていたけれど


エプロンブランドのきっかけを作ったのは、市村さんから。

市村
「エプロン商会を始める数年前の40歳頃、プリザーブドフラワーの仕事を始めたんです。注文数も売り上げも順調だったけれど、切り花を扱ってきた自分にとって、言葉にならない違和感がありました。

何年か続けるうちに、切り花さえも楽しくなくなって、花自体が好きじゃなくなったんです。年も年だし、ある程度やりたいこともできて、もう飽きちゃったのかなと思っていました。

そんなあるとき、山形でオーガニックのバラを育てる知り合いが、庭の新鮮な薔薇をたくさん送ってきてくれて……」

届いた薔薇は小さかったり、曲がっていたり、仕分けにも手がかかりそうでした。前の自分ならワクワクしていたのに正直腰が重かったの、と市村さん。

せっかく送ってくれたのだから、仕事で疲れた夜に、静かに活けはじめました。バラを花瓶にいけた途端に、その可愛らしさに感動し、涙が止まらなかったといいます。

市村
「身体だけは、自分が好きなものをおぼえていたんです。

でも泣くなんてびっくりしたから、理由をしばらく考えたり、相談したりするうちに、『そうか、飽きたんじゃなくて、自分にとっての違和感を感じないようにしてるうちに、好きなものも感じなくなったんだ』と気がついて。

人間、好きなことだけを感じて、苦手なことを感じないようにはできないのね」

意を決してプリザーブドの仕事は辞め、ぽっかり空いた心と時間。どうしようかと途方に暮れた時、新たに浮かんだ好きなものがありました。それが「エプロン」です。

 

大人に似合う花柄のエプロンが作れたら

市村
「昔から、母がやっている美容室用のエプロンを、アルバイトがてら楽しく作っていました。母は身長が高くて、似合うエプロンを探すのも大変だったから。

保護するだけじゃなく、着ていてテンションが上がるものがいいよね、とレースや刺繍で工夫していたのを思い出して」

その後のイギリス旅行で見つけたのが、リバティ社の布。それで作られたエプロンの可愛さに惹かれ、数枚買って帰ったのだとか。

普段目にする花柄にはない、リバティならではのパンチのある生地を使って、大人のエプロンを作りたい。そこで浮かんだイメージ像が、「おしゃれ番長」こと滝本さんでした。

市村
「うちの母も、可愛い系というよりかっこいい系だったから。軽く玲子さんに相談したら、『一緒にやってもいいよ』と言ってくれて、驚きました」

滝本
「私は、普段あまりエプロンはつけない方。それでも、ものとしては好きだったの。布好きの延長で、家にはコレクションがたくさんありました。

話を聞いたときに、『そうそう、可愛いと思えるエプロンは昔からなかったわよね』と。私の場合は身長が低いから、市販のエプロンは基本サイズが合わないし、付けてみたいとそそられるデザインもなかった。

わたしたちが着たいデザインで、かつリバティで作るって聞いて、楽しくなったんです」

コレクションのヴィンテージエプロンを沢山広げたり、古着屋を回ったり、イギリスのドラマ『ダウントン・アビー』や、古い映画にさっと映るエプロンを参考に、作って直すを繰り返す。

デザイン画は書けないけれど、楽しく、するすると進んでいったといいます。

▲着ているのは、愛用中のキッチンコート。ずっと作ってみたくて、ようやく完成したの、と市村さん。

市村
「リバティは新しい生地なので、布見本帳から選んで注文していますが、他の布は自分たちの足で探します。以前は海外に買い付けしに、ロンドン郊外やパリに行っては、蚤の市を覗いていました。布って結構重くて、途中からスーツケースは2つがマストだと気がついたのよね」

滝本
「この頃は価格高騰で、海外の買い付けは難しくなりました。だから代わりに、国内を回るの。するとそこで見つけた着物に惹かれ、最近ふたりで別のブランドを立ち上げてね。ちょくちょく困難はありますけど、無理せずゆったりと楽しめているんじゃないかしら」

 

ひとりと、ふたりの世界観

それぞれが、ずっとひとりで仕事をしてきたなかで、誰かとお店を始めてみるとき。難しさはなかったのでしょうか。

市村
「ひとりの世界観がふたりになるのは、新鮮でした。自分にとってお花は、仕事でありながら生きることと同等。それを誰かとシェアするのは難しいけれど、エプロンやお洋服は専門外。ひとりではできないし、一緒にあーでもないこーでもないって、普段できない進め方が楽しいんです。

あと、得意なことがそれぞれ違うからかな。玲子さんは、パソコンがとっても得意。商品ページを作ってもらっているけれど、私が中途半端に得意だったら口出しちゃうかもしれないし

滝本
「写真や生地選びのような大事な場面では、自然と意見が一緒。ただ、派手なもの、地味なものを選びがちという違いはありますよ。それがすり合わされるから、余計よくなることもあると思いますね」

市村
「とはいえ、それぞれ共有してないことが沢山あるんです(笑)それがいいんじゃないのかしら

▲2年前からは、着物を使ったブランド「around」もふたりで立ち上げたのだとか。

 

「チャーミング」の種になるもの

見たことのないような、チャーミングなエプロン。それを作るおふたりは、人生を軽やかに潔く、喜びとともに進みます。それが、似合う生き方だから。

チャーミングさとは、自分が喜ぶことを増やしていくことで醸成されるものなのかもしれません。

そんなエプロン商会は、来年の1月、四ツ谷にお引っ越しするそう。そこではギャラリー兼エプロン商会のお店を作るのだとか。

取材後、スタッフとカメラマンそれぞれで、エプロンを試着することに。一同、数の多さに選べずにいたら、「あなたはこれ、こちらの方にはこれがいいんじゃない?」と滝本さん。

普段自分では選ばないような柄だったのに、その馴染み方には着てみて「え!」っと驚きました。日頃ワントーンコーデが多いカメラマンも、選んだのはブルーの花柄。鏡にうつる姿を見たときの笑顔が、忘れられません。

(おわり)

【写真】メグミ


もくじ

 

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市村美佳子(左)

フラワーデザイナー、緑の居場所デザイン主宰、オーガニックフラワー研究会代表
イベントの花装飾、雑誌やカレンダーのフラワースタイリングを手がける他、これまでの花教室の他に、毎日の花をテーマにした、生きるための「日々の花」レッスンを2015年3月から新たにスタートさせた。http://midorinoibasho.jp

滝本玲子(右)

デザイン事務所主宰 雑貨バイヤー、店舗企画等に携わる。2011年11月、喫茶店 西麻布Rをオープン。その場所で器やデザイン系企画展等を開催。http://merge.co.jp/

 


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