特集|わたしたちが北欧に惹かれる理由 Day.3 ーデンマークでみつけたもの

編集スタッフ 松田

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特集「わたしたちが北欧に惹かれる理由」

第三話:デンマークでみつけたもの

6月9日から毎日更新で、
特集「わたしたちが北欧に惹かれる理由」
をお届けしています。

hokuoh_index_02■私がデンマークに惹かれた理由
第一話:プロローグ
第二話:自由と豊かさの手がかりを探しに
第三話:デンマークでみつけたもの
■デンマークに暮らす、針貝さんへ聞いてみました
第四話:憧れのデンマークの第一印象
第五話:デンマークでみつけた本当に贅沢な時間
第六話:暮らしてはじめてみえる、デンマークの内側
第七話:「自分」を求められるとは?
第八話:やっぱり高い税金のコト。
第九話:デンマークに暮らす一人の女性として
■私たちが北欧に惹かれる理由
最終回:編集後記

 

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三日目の本日は、昨日に続けて
私、スタッフ松田がデンマークでの
旅のことを綴ります。

 

自分を育てる=灯りをともすこと

デンマークでは、4つの
フォルケホイスコーレを見学しました。

いずれの学校も
都会から離れた郊外に
位置した場所。

周囲は、奥深い森と広がる野原だけで、
たくさんの緑に囲まれた
学校もありました。

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インタビュー先の、
ある学校の先生は
このように話していました。

「ここでは教師も生徒も関係なく、
お互い親しい友だちのように
ひとりひとりが意見を尊重し合う。

授業は、上から押し付けるような
やり方は絶対しないし、
もちろん試験も成績もないよ。

教えるんじゃなく、
その時のテーマについて
お互いの考えや主張を
“対話”という方法で
深めていくんだ」

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この思想は、時代を遡って19世紀、
教育改革をおこしたグルントヴィという
一人の牧師から生まれました。

彼は、自分自身が経験した、
詰め込み教育の
息も詰まるようなような学校生活を
強く批判して、
このように説きます。

「一人一人が
自分の内側に灯りをともすことで
お互いを照らしあい、
影響を受けあって
一緒に成長をしていくこと。
それこそが教育の本質である」

また、グルントヴィは
「教育」という言葉を避け、
デンマーク語の、
「Oplysning(オップリュスニング)」
直訳で「灯りをともすこと」
という言葉をよく使ったそうです。

そして身分や地位に関係なく、
誰でも学ぶことができる
フォルケホイスコーレは、
デンマーク中に広がりました。

生徒の多くは農民。
農民たちは、そこで先人たちのルーツや
歴史に触れることで
尊厳を取り戻し、
社会的意識に目覚めます。

やがてフォルケホイスコーレからは
国の政治を担う人物も
多く登場しました。

第二次世界大戦
ナチスに侵攻された時代も、
グルントヴィの思想は
多くの人々の心を支え、
その後のデンマークの国のあり方に
大きく影響を与えたそうです。

 

いろいろ聞かれて、タジタジになりつつ…

「どんな目的でここへ来たんだい?」
「何を調査しにきたの?」
「あなたはどう思う?」

フォルケホイスコーレで学ぶ彼らに
教育のことについて
質問をしていると、
目を見据えられ、逆質問にあいます。

いろいろ聞かれて
しどろもどろになりながらも、
何とか答えていくうち、
自分自身の考えの輪郭が
少しずつはっきりしていく
感覚がありました。

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そして、その主張や考えについて
なにかを教えてくれることはあっても、
否定されるような言い方はされません。

「自分」の主張を持ち、
相手の意見を尊重する。

そんなグルントヴィが唱えた、
「自己」を育てていく風土は、
フォルケのものだけではなく、
デンマークの人々の心と
家庭にも根付いてきたといいます。

デンマーク人は、小さい頃から、
子どもも大人と対等に
自分の意見を尊重されて
育っていくそうなのです。

 

フォルケホイスコーレの今

もちろん、実際に訪れてみたら
私が勝手に恋い焦がれていた
理想郷とは、
異なる部分もありました。

かつての思想を受け継いだ
穏やかな学校はその数を減らし、
遊びたい年頃の
若者たちばかりが集まり、
雰囲気は荒れて、夜は毎晩のように
パーティー騒ぎ。
そんな決して、良い学びの環境とは
いえない学校も増えつつあるとか。

また、時代が変わったことで
国全体が国際的な競争力を求められ、
資格や実践的な専門性を
重要視する傾向もあり、
フォルケホイスコーレは
国の助成が受けづらくなっている
とも聞きました。

「フォルケはただの
“just enjoy”の場所さ。
今の時代には合わないよ。」
と言う人もいて、
フォルケホイスコーレへの
私の片思いは、
見事に打ち砕かれました(苦笑)

かつて農民たちの学びの場として
輝いていた時代からみると、
現在のデンマークでは
フォルケホイスコーレの存在感は、
薄れてきているというのが
現実だったのです。

 

かけがえのない時間をみつける

それでも、そこでの学びを通して、
自分を見つめ直すことができた
と話す人や、
かけがえのない時間、
そして大切な仲間をみつけられた、
と笑顔で話す人もいたのも事実。

定期的に地元の人たちも巻き込んだ、
地域ぐるみのイベントが催されるなど、
町の憩いの場としての
役割も担い続けています。

フォルケホイスコーレへの見学は
それぞれたった数日間のことでしたが、
幸運なことに、
学生に混ざって寮に泊めてさせてもらい、
一緒に大きなテーブルを囲んで食事をし、
たっぷりと用意された自由時間には
緑いっぱいの森の中をのんびり散歩したり、
寮のキッチンを使ってお菓子を作ったり、
リビングのソファに腰掛けて
何でもないおしゃべりを楽しみました。

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確かに、フォルケホイスコーレの
社会での立ち位置は
昔とは異なってきたのかもしれません。

しかし、デンマークという国を築き上げてきた
多くの人々の
アイデンティティには
「一人一人の意思を尊重しあう」という理念が
深く影響してきた歴史を知り、
フォルケホイスコーレは
その風土をつくるのに欠かせない場所であったこと、
そして、つかの間でも
彼らが笑顔で教えてくれた
「かけがえのない時間」に触れられたことで、
自分の内側にも
ふわっと灯りがついたような気がして、
じんわり温かい気持ちで
フォルケホイスコーレを後にしたのでした。

 

本当の「豊かな」暮らし?

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デンマークで惹かれたものは
他にもありました。

旅の途中、住宅街を歩きながら、
カラフルな家の窓を覗いたときのこと。

窓の奥には、その家で暮らす人に
選ばれ、使い続けられてきた
家具や暮らしの道具たちが、
しっくりと馴染んだ佇まいをみせていました。

その姿に、
ギュギュッと心を掴まれてしまった私は
自分でも怪しいやつだなぁと思いつつ(苦笑)、
ひとつひとつの家の窓を覗き込んでは
一人感動しながら町を歩きました。

窓の中には、
ひとつとして同じものはなく、
それぞれの家のためだけにある
暮らしの景色。

そんな家のしつらいへのこだわりも、
デンマークの人々が工夫してみつけた
「豊かさ」をつくるための
方法の一つなのかもしれない
と思いました。

 

ヒュッゲという言葉の意味

旅が終わりに近づいた頃、
コペンハーゲンの大学に留学していた
日本人の子に誘ってもらい、
その大学の先輩の自宅でのディナーに
お邪魔しました。

電球を落とし、
ろうそくに明かりを灯して
手料理を食べながら
おしゃべりを楽しむ時間。

デンマーク語には
「ヒュッゲ」という言葉があります。
直訳するのは難しいのですが、
「くつろぐ、居心地が良い雰囲気、和む」
というような意味合いとのこと。

それは、デンマークの人々が
とっても大切にしている
概念の一つだそうです。

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ほんの少しだけ垣間見た
窓の奥に広がる、
デンマークの人びとの暮らし。

それは私にとって、
旅を終えて日本へ帰国したあとも、
思い出しては惹かれ、
憧れ続ける風景となりました。

 

日本に帰国してから

帰国後。
気後れがちな性格が一変して、
「これが自分の理想の
豊かな暮らし!」と思う形が、
すぐに見つかったかというと、
そんなに甘くはありませんでした。

でも、自分の興味関心が
日々の「暮らし」そのものに
あることに気づいて、
ちょっとした暮らしの工夫や
雑貨や日用品のお店巡りが
小さな楽しみになっていました。

その先に、出会ったのが
「北欧、暮らしの道具店」。

「フィットする暮らし、探そう。」
というコンセプト。
「仕事」と個々の「暮らし」が
循環するような働き方。

この会社で働いているメンバーや
見てくださっているお客様と一緒に
「暮らし」について
もっと追求していきたい!と、
採用面接に応募しました。

そして、今回この特集を担当し、
デンマークで感じたことを
改めて今、辿っています。

明日からは、
デンマーク在住の
ライター針貝有佳さんの
お話をお届けします。

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私が知ることができなかった、
もう少し奥のところの
デンマークの「内側」について、
針貝さんが発見した素敵なことや
少し困ったことも含めて
いろんな角度から
お話をお聞きしました。

日本に暮らす私たちにとっても
気づかされることが
たくさんありましたよ!

明日からの更新を
ぜひお楽しみに!

 

もくじ

■私がデンマークに惹かれた理由
第一話:(6月9日更新)
プロローグ

第二話:(6月10日更新)
自由と豊かさの手がかりを探しに

第三話:(6月11日更新)
デンマークでみつけたもの

■デンマークに暮らす、針貝さんへ聞いてみました
第四話:(6月12日更新)
憧れのデンマークの第一印象。

第五話:(6月13日更新)
デンマークでみつけた本当に贅沢な時間

第六話:(6月14日更新)
暮らしてはじめてみえる、デンマークの内側

第七話:(6月15日更新)
「自分」を求められるとは?

第八話:(6月16日更新)
やっぱり高い税金のコト。

第九話:(6月17日更新)
デンマークに暮らす一人の女性として

■私たちが北欧に惹かれる理由
最終回:(6月18日更新)
編集後記


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