
「こんな大人になりたいと思わせてくれるひと」
そう言って大島さんが開いたのは、スウェーデンのデザイナー、カリーナ・セス・アンダーソンの作品集です。
ガラスや陶器、そしてドローイングの、ミニマムに削ぎ落としたフォルムと力強さが込められた作品たち。「マリメッコ」のフラワーベースやテキスタイルのデザイナーとしても知られています。
スウェーデンに行くたびに彼女のショップを訪ね、いつしかアトリエや住まいの様子、身にまとうもの、彼女のライフスタイルそのものに共感とあこがれを感じるようになりました。
なにより心を奪われたのは、彼女の飾らないキャラクターです。凛とした作品から受け取るクールさとは裏腹に、実はとても明るくチャーミング。そのギャップも、きっと惹かれた理由のひとつです。
そもそもひとの魅力はギャップにこそある、というのが大島さんの持論です。
北欧では、彼女のように初対面と仲良くなった後とでは、受け取る印象が大きく変わるひとにたくさん出会いました。一見、シャイでよそよそしく思えるひとも、ひとたび仲良くなれば、やさしく誠実で、人間味にあふれています。
もうひとつ、北欧では多くのひとが「自分は何が好きなのか」をきちんと知っていることも、人間的な魅力を感じる理由です。
誰かに見せるためではないし、みんなと一緒でなくてもいい。
わたしが好きなもの、心地よさ。その豊かさを、心の深いところでわかっているようにも見えます。
大島さんが常日頃見つめ、伝え続けてきた、インテリアやアートを楽しむ暮らし。流行や誰かの真似から始めたっていい。でもその先に、どうして「自分は好きなのだろう」と理由を見つけていくことができれば、日常はどんどん満ち足りていきます。
「インテリアショップで、あるいは美術館で。目にするものの中で、自分にとっての一番はどれかと考えるのもひとつ。好きな理由が積み重なって、それが個性になるのだと思います」
カリーナの作品集をめくるたび、そして作品に触れるたびに、大島さんの中にある「好き」の理由が浮かび上がります。すっかり大人になった今もなお、「こんな大人になりたいな」と思うひとがいることは、なんてすてきなのでしょう。

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Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto
大島 忠智
インテリアブランド『IDÉE』ディレクター。カフェマネージャーや広報担当を経て、2011年よりバイヤーとして国内外で家具や雑貨の買い付けを行う。インタビューウェブマガジン『LIFECYCLING』主宰。現在はブランドの垣根を越え、総合ディレクションを手がける。著書に、染色家・柚木沙弥郎と共にインテリアから暮らしを豊かにすることを考え抜いた『柚木沙弥郎 Tomorrow』(ブルーシープ)がある。
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