
にわとりのオブジェを見つけたのは、スウェーデンで買い付けにまわる道中でした。
朴訥とした木彫りに、職人の筆の動きが見えるようなイキイキとした色使い。イースターを祝う飾りもので、地域ごとにさまざまな作り手がいるのだと店の人が教えてくれました。
オブジェとしての完成度がありながらも、田舎町のおみやげみたいな、どこかのんびとしたおおらかさ。有名な品ではありません。ましてや誰が、いつごろ作ったのかも分かりません。
けれども、これはアートだ。そう直感し、どこにもない味わいと表情をもつにわとりを、大島さんはすっかり気に入りました。
職人的なクラフトから洗練されたプロダクト。古い道具やぬくもりを感じるオブジェ。さまざまなものに出会えるのも、大島さんが北欧を愛する理由のひとつです。
その後も見かけるたびに買い集め、そのうちに大切な年上の友人の顔が思い浮かびました。染色家の柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)さんです。
世界中の民藝品やフォークアートを集めるのが大好きな柚木さんは、部屋に遊びに行くたびに、ユニークなコレクションをうれしそうに紹介してくれました。
「きっと、柚木さんなら気にいるだろうなあ」
そう思った大島さんが、このにわとりをプレゼントしたところ、はたして柚木さんはたいそうよろこんでくれました。
クリスマスシーズンのフィンランドを訪れたとき、こんなことがありました。
インテリアショップの「アルテック」ではホリデーシーズンを前に、たくさんのオブジェが美しく飾られていました。聞けばこの国では、クリスマスのギフトには置物やアートを贈る人が多いのだということでした。
なかでもキャンドルスタンドは、贈り物として広く人気があり、その日もディスプレイにはあらゆる作家やデザイナーの作品が並べられていました。
「こんなふうに、インテリアにまつわるものを贈り合う習慣があるのは、なんて素晴らしいのだろう」
これが好きそうだな、あの人の部屋に似合いそうだなという気持ちは、相手を思うからこそ。ギフトには、送り主が選んでいるときの気持ちや時間が詰まっていると大島さんは考えています。
あのにわとりを、柚木さんは自身の個展でもコレクションのひとつとして飾ってくれていました。その光景はギフトのうれしい記憶として、大島さんのなかにずっと残り続けています。

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Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto
大島 忠智
インテリアブランド『IDÉE』ディレクター。カフェマネージャーや広報担当を経て、2011年よりバイヤーとして国内外で家具や雑貨の買い付けを行う。インタビューウェブマガジン『LIFECYCLING』主宰。現在はブランドの垣根を越え、総合ディレクションを手がける。著書に、染色家・柚木沙弥郎と共にインテリアから暮らしを豊かにすることを考え抜いた『柚木沙弥郎 Tomorrow』(ブルーシープ)がある。
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