【私たちの常連店】京都「swiss coffee,plants」前編:のんびり気分を満たしてくれる場所。
商品プランナー 加藤
コーヒーを飲んでホッと一息。なにをするでもなく、ぼんやりする時間。
気持ちがゆるりとほどける感覚が心地よく、気づけば長居していたり。
そんな心の拠り所のような場所、ありますか。
シリーズ 「私たちの常連店」では、クラシコムのスタッフがつい足を運んでしまう、お気に入りのお店をご紹介しています。
第3弾に登場するのは、京都市・左京区にお店を構える「swiss coffee,plants(スイスコーヒープランツ)」。
お店を営む岩﨑和(かず)さん、佐藤洋平さんにお話をうかがいました。
京都にあるスイス?「swiss coffee,plants」へうかがいました。
こちらのお店は、私・加藤が紹介したい場所。
ちいさな川のそばで、ぽつんと佇む感じが可愛らしくて、おもわず足を踏み入れたのが最初でした。
かつて和食屋だったのを自分たちで改装したという店内は、ペンキの塗装や布の仕切りなど、ところどころ手づくり感があって、ドライのお花や、摘みとった野草があちこちに飾られています。
和さん:
「以前は、山梨県にある清里高原で働いていて、森の小屋のような住まいで暮らしていました。
キツネや鹿に出会うのが当たり前の、見渡す限り山に囲まれた様子に、友人が “清里高原はスイスのようだね” と言ったのが気に入って。
そんなかつての風景に思いを残す意味で、店名に “スイス” をつけました」
高原の景色の一部が受け継がれたような、どこか山の風を感じるさわやかな店内。
のびのびと葉を広げる植物や、古い電話が印象的な雑貨たちは、森の住まいから一緒にやってきたものが多いそうです。
清里高原のおだやかな景色とは裏腹に、夏場は避暑地として、ホテルで忙しく働く日々を過ごした和さん。
無理のない自分のペースで、ひとりのお客さまと向き合えるような場所を持ちたいと考えていたそうです。
山梨から京都へ。移住をきっかけにカフェをオープン。
そんなあるとき、共通の友人を通じて洋平さんと知り合い、「豊かな自然、人の流れや雰囲気に惹かれて」と、心機一転、ふたりは京都へ移りました。
キッチンを切り盛りし、手づくりのお菓子を焼くのは、和さん。
ケーキには、和さんがかつて暮らした土地に近い、長野の小麦を使用しているそう。それをひと口食べたとき、小麦ってこんなに香りがあるんだ!とびっくりしたほど、豊かな風味が口一杯に広がったのを覚えています。
もうひとりのオーナーである洋平さんは、コーヒーを担当。生豆からハンドロースターで焙煎するコーヒーが、ふんわり心地よく香ります。
洋平さん:
「生豆は、吉祥寺珈琲の店主さんから仕入れています。店主の中島さんが淹れるコーヒーは、当日焙煎した豆を、臼を使って目の前で挽いてくれるもので、忙しない作業ですが、とても丁寧に淹れてくれるんです。
お客さまの目があるなか、ごまかしの効かない方法で淹れる姿勢に、信頼感があって。だから自分もここから、豆を仕入れたいと思いました」
そう話す洋平さんは、新鮮な豆を季節にあわせて焙煎時間を変えるこだわりよう。和さんの焼くケーキとの相性も抜群で、ここに来ると必ずコーヒーとケーキのセットを注文したくなるのです。
この場所へ来たくなる理由
「何もしない」を許せる時間。
何もしない、空いた時間があると、ちょっぴり罪悪感を感じる私。時間を無駄にしてはいないか、どこか心配になるからです。
でも、swiss coffee,plantsで過ごす時間は、そんな「何もしない自分」を許せるひととき。
それは、ケーキもコーヒーもおいしくて、それだけで十分気持ちが満たされるからなのだと思います。
はじめてお店に訪れたのは、ある休日。自家製ジンジャーエールが、しみじみと滋味深く、ただおいしいを感じる時間が幸せで、大事に少しずつ味わったのを覚えています。
実は、せっかくの休みだからと勢い込んで、買い物など予定をつめ込んでいたその日。この後はあそこに行って、その次は…と、急いた気持ちでいたのですが、ふと「まぁ、いっか!」と思いました。また今度の機会でいいじゃないと。
ジンジャーエールを味わううち、何もしない自分を受け入れられる、どこかおおらかな気持ちになれたのかもしれません。その後の予定は変えて、ゆっくり本を読んで過ごしました。
再訪したときに飲んだアイスコーヒーは、添えられたシロップのおいしさに小さく感動したほど。ブラック派の私ですが、おもわずたくさん入れてしまいました。
これは取材で知ったのですが、きび砂糖を使った和さん手製のシロップなのだそう。ちなみに、はじめに飲んだジンジャーエールなど、自家製のジュースは産地直送の素材を使った手づくりです。
そんな手づくりの素朴であたたかみを感じる味は、私の母がお菓子を焼いてくれた、幼い頃の思い出を呼び起こしてくれます。
特に好物だったのが、チーズケーキ。つくるたびに出来が変わるようで、母は「もうちょっとふくらめば良かった」などと、ひとり反省会をするのですが、私は料理上手な母がどこか誇らしくて。
プロがつくるケーキのほうが、きっと何倍も美味しいはずですが、幼い私にとっては、母が家で焼いてくれる手づくりのケーキが、どこよりもおいしいと感じたのでした。
swiss coffee,plantsで過ごす時間は、そんな根っこにある自分が、ひょっこり顔を出すひととき。「何もしない」で自分を見つめたいときなのかもしれません。
先客がいると嬉しくなる。
店内は席と席の距離が近く、お客さん同士の会話がよく聞こえます。でも、お店にいる皆が、それを承知で話している雰囲気がまた良いな、と思うのです。
「今日は百万遍さんの手作り市だね〜」と話すおじいちゃんの隣の席で、フランス人の女性がにこやかに本を読む光景になごみます。
壁を向いてひとり気分を味わえるベンチがあれば、コーヒーを抽出する姿がしっかり見えるカウンター席もあって、一人一人好きな過ごし方ができる雰囲気。
ひょんな拍子に話しかけてしまいそうなくらいの距離感ですが、ばちっと目が合うような配置ではないから気まずさがなく、リラックスした時間を共有できる空間に感じます。
私のお気に入りは、壁に向かって座るベンチ席。そばには小さな本棚があって、そこから気に入った本を見つけ出し、しばし読みふけります。
正直に言うと、私が普段カフェに行く時は、店内が空いていてほしいと思いがちです。考え事をしたい、ひとりになりたい、孤独な気持ちを味わいに行くから、人が多いと気になってソワソワしまうんです。
でも、swiss coffee,plantsに限っては、ちょっと違っていて、ひとり時間に没頭しながらも、店内で交わされる会話が耳に入ってくる。それが心地よいBGMのようでもあって。
だから、先客がいるとひそかに嬉しい気持ちで席につくのです。
取材を進めるうちに、私以外にも同じような気持ちでお店に通っているであろう、お客さんのお話をお聞きすることができました。
後編では、そんなエピソードをお届けしたいと思います。
「swiss coffee,plants」
アクセス:銀閣寺より徒歩10分、市バス:錦林車庫、浄土寺、法然院より徒歩4分
住所:京都市左京区浄土寺下南田町39-3
定休日:月曜日と火曜日
営業時間:10:00-18:00
もくじ
前編(11月2日)
前編:のんびり気分を満たしてくれる場所。
後編(11月3日)
後編:人々が集うその理由って?
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