【積読よもやまばなし】後編:本好きスタッフ3名の積読トーク、「でもまだ読んでないんです!」

【積読よもやまばなし】後編:本好きスタッフ3名の積読トーク、「でもまだ読んでないんです!」

ライター 藤沢あかり



おもしろそうだと買ったはずなのに、読まずに積み上がった本。いわゆる「積読」です。その響きにわくわくするひと、ちょっぴりうしろめたい気持ちになるひと、どうやらその印象はさまざま。

そんな「積読」をテーマにお送りしている今回のよみもの。後編はスタッフ3名が積読を持ち寄り自由におしゃべりしてみました。

読めていない、その『いいわけ』から、長きの積読を経てついに読み終えたきっかけまで。

まだ読んでいないのに(!)盛り上がった積読談義、その様子をお届けします。積読を携え集まってもらったのは、こちらの3人。

編集・津田(左)
SFから人文、文学、詩歌などジャンルを横断する雑食派。最近は名作古典にチャレンジ中。抱える積読は約20冊。

デザイン室・波々伯部(中)
つい手にとってしまうのはデザイン関連の本。洋服も好きで、「このニット1枚か、本を◯冊か」と考えがち。

編集・二本柳(右)
好きなジャンルは英米文学。国内作家だと、新刊が出るとかならずチェックするのは西加奈子さん。歴史小説も好き。


積読は、わくわく?罪悪感?



さっそくですがみなさん、「積読」にはどんなイメージを持っていますか?

波々伯部:
「私はそこまで大量にあるわけではないけれど、読みたい気分になったときにすぐ手に取れるものがあると安心感があるのかな。だから気になるとすぐに買っちゃいますね」

▲波々伯部の積読と本棚:積読や読みかけの本は、リビングの棚の上に。一方、寝室の本棚には長く置いておきたい本を厳選。

津田:
「うちはリビングの本棚の上が積読の定位置。結構あるけれど、罪悪感はないですね。ここに自分の読みたい本が揃っているという、わくわく感のほうが大きいです。

以前、『本屋Title』の店主、辻山良雄さんが、“本を買う、もしくは家に迎え入れた時点で、その本と距離は縮まっているし、何かを感じ取っている”というようなことを言われていたんです。だからむしろ積極的に積むぞ!って思ってます」

※津田が担当した当店の読みもの連載、『日々は言葉にできないことばかり』の中の、「それがないと自分が育たない、と思う時間」での言葉です。

▲津田の積読と本棚:本棚の上だけでなく、下まで本が侵食中。「そろそろ棚が崩壊しそうです」

二本柳:
「なるほど〜。わたしはどちらかというとすこし罪悪感。読書量が多い人なら積む量も多くなるのはわかるんですが、わたしは読むスピードが年々落ちているせいな気もして……。でも書店は大好きで、つい行っちゃうんですよね。いまの積読を読んでからだ!と自分に言い聞かせて、メモだけ残して我慢することもあります」

津田:
「まじめだ……!(笑)」

▲二本柳の積読と本棚:名作から話題の本まで雑多に読む。左、『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』(磯山雅著/講談社)は、音楽を入り口に歴史を学べるかも!と盛り上がったものの積読に。



1ページも読んでいないのに……満足してる!?



津田:
「わたしは1ページも読んでいない本もたくさん。この本なんて字がちいさいし、読もうと思ってもぜんぜん頭に入ってこなくて……。

クロード・レヴィ=ストロースの『野生の思考』(みすず書房)。良書として紹介されているのをあちこちで見聞きして買ったんだったかな。でも、もう7年は経ってると思います」

波々伯部:
「わあ、デザインがめちゃくちゃいいですね、美しい!」

津田:
「そうなんです。この装丁だけで価値ありというか、自分にとっては思い切って買った本だし、いい本持ってるなあ……と、ほれぼれして、その風景に満足してしまった(笑)。いやいや、ほんとうは読みたい! ただ何度チャレンジしても目が追いつかなくて。でも、いつか読むかもしれないし、これを読もうと思った自分はえらいぞ!と、ポジティブに解釈していたりなんかもして。

最初は罪悪感もあったはずなんですけど……(笑)」

つまみ食いみたいな「ちょびっと読み」

波々伯部:
「あはは! でも装丁は大事ですよね。わたしは紙もののデザインが好きなので、本もひとつの『デザイン』として価値を見ている気がします。装丁が凝っていると欲しくなるし、手元に残したくなります。

ほら、この本なんて表紙が金箔押しだし、同じデザインのしおりも入っていたんです。こういうの、うれしいです」

▲『贈り物の本』(牟田都子編/亜紀書房)は、金色に縁取られたリボンが美しく、本そのものが贈り物のよう。

波々伯部:
「こっちの『宗教とデザイン』(松田行正著/左右車)も、すごい素敵な本なんですよ。

これだけ分厚くて、つくりも凝っていて、小口(本の裁断面)にデザインまで。カラー図版もたくさんだし、このお値段でいいの!?って思うくらい。

世界中の宗教画や文字などの具体例も多く、かなりのボリュームです」

▲『宗教とデザイン』は厚みが約4センチほど。「へー、アミニズムの話とかもあるんですね」と興味津々の津田。

津田:
「これだけの情報量を、手元で何度でも読み返せる。そう思うと本ってありがたいですよね。読んでみたいなあ」

二本柳:
「たしかに、おもしろそう!」

波々伯部:
「でしょう? でも……まだ読み切ってないんです(笑)。そういえば、わたしのは積読というのか、“読みかけ”だらけなのかも。

買ったらその日にちょっとだけ読むんです。まえがきだけとか、エッセイ集なら最初の1篇だけとか。この『宗教とデザイン』も、ちょびちょびと読み進めて、また止まって……という感じ。でも、もうこれはいまの興味や気になるところを拾い読みするのでもいいのかな。そういう読み方もアリだなあと思い始めています」



積読からひそかにエッセンスを受け取っている?



二本柳:
「尊敬する方が読んでいる本って、気になりませんか?

わたしが持ってきたのは、この『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる著/講談社)。写真家の川内倫子さんが雑誌で紹介されていたんです。

子どもの頃に読んで、いまも自分の根底にある大切な本だそうで、川内さんのエッセンスをすこしでも分けていただきたい!と、すぐにシリーズのうち3冊をまとめて手に入れました。

児童書だし読みやすいはずなのに、子どもの純粋な気持ちではないからなのか、なかなか入り込めなくて……。もうすこししたら年長の息子と一緒に読めるだろうと、かれこれ2年くらい本棚に飾っているような状態です」

▲「表紙の色がいいですね」という波々伯部に対し、「タイトルがかわいい!」という津田。視点もいろいろです。

津田:
「古い本ならではの装丁がたまらないですね。見えるところに並べているんですよね?

それなら、このタイトルと背表紙だけでもエッセンスは受け取っている気がする! うん、きっとそう! 読んでないけど……!(笑)」



読めない本の救世主、生成AIを使ってみました


二本柳:
「読み始めたら想像より難しかった、という本も多いですよね。

読んでいる途中で、難しい単語が出てきたときはどうしてますか? そのまま読み進めますか? ちゃんと調べますか?」

津田:
「結構、雰囲気で読み流してますね。むしろ調べようとスマホを手に取ってしまったら、そこから無意識にSNSや動画を見ちゃって、本の世界に帰ってこられない……」

波々伯部・二本柳:
「わかります!!!!!!(笑)」


津田:
「あ、でもこの『ソラリス』(スタニフワフ・レム著/早川書房)は、わからないことが多すぎたので、スマホで生成AIを使いました。おかげで、長いあいだ積読だったけれど、つい先日読み切ったんです」

波々伯部:
「AI? どういうことですか?」

津田:
「これ、ソラリスという惑星を舞台に、“意志を持った海”との接触を試みる話なんです。それだけ聞くと、なんだ?って感じですよね。ポーランドの作家ということで名前もなじみがなくややこしいし、設定も難解で。そこで最初は、AIに登場人物の特徴や専門分野を表にしてもらいました」


津田:
「未知の生物に対してのアプローチとしていろいろな実験が出てくるんですけど、科学や物理の知識がないからさっぱり。『この実験で、どういうことがわかるの?』って聞いたり、読書を再開するときにそれまでのあらすじを簡単にまとめてもらったり。

難しかったけれどおもしろかったし、SFの名作でずっと気になっていたから、まず読めたことがうれしかった!」

波々伯部:
「津田さんの話を聞いていたら、めちゃくちゃ読んでみたくなりました! 去年読んだ『源氏物語』も、この方法があれば人物相関がわかりやすかったのかなあ」

津田:
「古典や名作と呼ばれるものは、ネット上にあらすじや解説がたくさんあるのでAIを活用しやすい気がしています。ただしAIなので、間違っている可能性もあるという前提で。自分がなんとなく思い出せたらそれで良い、というくらいに使ってます」

二本柳:
「なるほど〜! 挫折した『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス著/新潮社)、これなら読めそうな気がしてきました」

持ち寄った本をみんなでのぞき合ったり、パラパラめくったり。まだ読んでいない、読み進められないという本も、別の誰かにとってみたら「いますぐ読めそう!」という視点が見つかったりもして、想像以上に盛り上がりました。

話を聞いていると、読んでみたい本は増えるばかり。

いつかのための本の山は、どんどん高くなる一方。でもそれでいい、それがいいのです。


【写真】濱津和貴(4〜6枚目以外)


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