【スタッフコラム】実は短所じゃなかったのかも。10年越しで救われたこと。
バイヤー 山根
出会いや別れ、なにかと転機がおとずれる春。人生の節目としてこれまでを振り返る機会も多い季節です。
僕にとって今年の春は、特にこれといった転機の予定はありませんでした。でもつい先日、日常の中で人生を振り返る瞬間が突然やってきたんです。
長い「悩みの旅」のはじまり
「他のみんなとは違っていたい」
そう強く信じていた10代の頃。自分の意見を強く表明するのが大好きで、他人に相談なんてことはしない性格でした。
そんなとんがった自分が変わり始めたのが、20歳のときです。
大学時代のサークルでのうまくいかなさをきっかけとして、ちょっと遅いとは思うのですが、社会の中で生きていくのには「同調」が大切と気がつきました。
そこから僕の悩みの日々が始まります。同調が大切と気づいたとはいえ、具体的な方法は急にはわからないもの。友達に聞いてみたり、他人の様子を観察したりと考える日々が続きました。
ただひとまずのところ、「自分の意見を強く表明する人は、それだけで迷惑になることがある」と自分を戒めていました。
周回遅れでスタートした、僕のコミュニケーション能力向上プロジェクト。何年も意識しているとできるようになるもので、そのうち自然と他人に頼ったり、和を大切にするようになりました。
そして同調することの生きやすさを実感するようになったのです。
そんなある日のこと。
オフィスでのおしゃべりの中、ふとこんな話題が出てきました。
「深みのある人は魅力的だ」
「深みのある人になりたい」
同僚がそう話すのを聞いていて、なんだか心にひっかかりました。
(自分にももっと深みがあったほうがいいのかも……そう言えばしばらくそういうこと考えてなかったもんなぁ……)
自分の魅力について妙に心配になった僕は、仕事のあとで妻に聞いてみることにしました。そのときはちょうど外食をしていてお酒を飲んでいたので、こんな話もしやすいムードでした。
「今日ちょっと思ったんだけど、やっぱり深みのある人になった方がいいのかなぁ?」
僕がそう聞くと、
「私の場合は、深みはいらないと思ってる」と、自分なりの持論を展開する妻。意外とはっきりとした意見を持っていました。
(そんなふうに思うんだ。深みがなくてもいいのかぁ、ちょっと安心かも)
そのとき突然気がついたんです。あれ、自分ってこんなに人の意見に左右されてたっけ?
思えば最近の悩みや関心事は、他人が関わることばかり。原因は、もしかしたら周りの意見を気にしすぎていたせいかもしれません。
「こんな今の自分を昔の自分が見たら驚くだろうなぁ」10年来の付き合いがある妻にそのことを話し、笑い合いました。
ほんとは短所じゃなかったかも?
自分の悩みを客観視できたのと同時に、ひとつ気づいたことがあります。
それは「自分の意見を強く表明する人は、それだけで頼りになることもある」ということ。
今回の僕のように、自信をなくした人にとっては、はっきりと意見を言ってくれる誰かが必要でした。もしかしたら今の自分が昔の自分を見たら、案外頼もしく見えるのかもしれません。
そう思うと、あてのない長い旅からようやくわが家にたどり着いたような気分になりました。
他人と違うものを選ぼうとするのも、他人に合わせようとするのも、どこかに無理を感じるならそれは不自由なこと。それなら自分にしっくりくるものを選んで、あとは堂々としてればいいんだな。
食事を終えてうちに着くころには、そのことがすっと腑に落ちていたのでした。
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