【35歳の仕事論】第4話:仕事とプライベートは線を引くべき?混ぜこぜだからできること (BEAMS鈴木修司さん×編集マネージャー津田)
ライター 小野民
「あの人」の仕事が、生き生きと輝いて見えるのは、どうしてなんだろう。かつて自分と同じ歳だった頃、「あの人」は何を考え、どんなふうに働いていたんだろう。
転職のラストチャンスなんて言葉もささやかれる、35歳という節目。その年齢を目前にしたスタッフ津田が、人生の先輩に会いに行くシリーズ「35歳の仕事論」をお届けしています。
4話では、引き続きBEAMSの鈴木修司さんに、出会った人々から学んできたこと、仕事につながる人付き合いについてうかがっていきます。
ひとりでいい。「憧れの人」を見つけよう
津田: 鈴木さんは、出会いを大切にしてお仕事に生かしている印象を受けます。特に、ご自宅を建てるきっかけにもなった 「もやい工藝」の久野恵一さんなどは、師匠と呼ぶほどだったとうかがっていますが、やはりお手本にしていたのでしょうか?
鈴木さん: 久野さんは、自分が進んでいく方向の指針になりました。仕事のやり方、人との接し方、旅の仕方……教えてもらったというより、近くで見ていたんですけどね。本当にすごく楽しい人で、いつの間にか人の輪の中心にいるような人でした。
成長したいと思ったら、憧れの人のそばにいることが一番手っ取り早いんじゃないでしょうか。その人から直接聞く言葉や顔の表情、かもし出す雰囲気から得る情報量に勝るものはないですから。
津田: 鈴木さんは、すてきな方々とお知り合いで、仕事も一緒にされているのがすごいなぁと思います。
社外にも気の合う人を見つけて、一緒に仕事までできたら素敵だなと思うし、自分もそういう人になりたいんです。でもどんなに魅力的な方にお会いしても、それをどう次につなげば良いのか分からなくて。私なんかが……と思っちゃうんですよね。
鈴木さん: 自分のポジションなんて気にせずに、声をかければいいんじゃないですか。僕はそう思います。
津田: 鈴木さんの仕事の仕方って、フリーランスの人みたいですよね。
鈴木さん: よく言われます(笑)。だけど、これからは「個の時代」で、会社員かそうでないかなんて関係なくなる、と聞いたことがあります。だから、ここ1年くらいは、僕も「会社員だから」というのを意識するのはやめようと思って、行動しているんです。
売り手よし、買い手よし、世間よし、「三方よし」の店づくり
▲「神戸風月堂」のゴーフルの缶2本がすっぽりと収まるようにデザインされたバック。帆布の生地も「神戸ザック」製で、神戸づくしのコラボレーション商品になった
津田: 今いらっしゃるBEAMS JAPANでも、いろんなメーカーさんとコラボしていますよね。社外との付き合いという意味では、企業と良い関係をつくることに関しても、鈴木さんは長けている気がします。
鈴木さん: お互いが幸せになるためのコラボレーションって、素晴らしいですよ。ただ単に売れそうとか、かっこいいだけのものって、今の世の中の人は欲していない。ばか売れしなくても、一人ひとりに響くものがほしいんです。
店舗に置くものを考えるのでも、判断基準は「感激しちゃったから」みたいなものがいい。そういうものをつくりたいです。
津田: それはきっと、いち消費者としての鈴木さんの正直な気持ちですよね。
鈴木さん: はい。僕、つまらない商品はいらないですもん。もちろん商売ですから売れるものをつくれ、売り上げを上げろって言われますが、それは僕に任せないほうがいい(笑)。
津田: ヒット商品をつくるのが得意だったり、売り上げを上げるマネージメントが上手な人もいますしね。それぞれが得意な仕事をやれば良いのかも。
鈴木さん: そうそう。でも、最低限の結果は出さないと継続性がないので、そこはしっかりやりますよ。
津田: そこでなにか工夫していることはありますか?「いいもの」と「売れるもの」とのバランスをどう考えているか気になります。たぶん、片方だけではダメな気がしていて、「北欧、暮らしの道具店」を運営していく上でも、いつも悩んでいることです。
鈴木さん: なるほど。もちろん「売れるもの」も大事だし、バランスは考えています。分かりやすい例だと、BEAMS JAPANでは、富士山のロゴがついているグッズをたくさんつくっています。
とはいえ、その中で、ただロゴがついているんじゃなくて、Tシャツだったら必ず日本製のボディにするとか、キーホルダーならどのメーカーに頼む、とか自分でも納得するものしかつくりません。
津田: 「いいものと売れるものは違うよね」って、すべてのジャンルで言われ続けている話だと思うんですけど、鈴木さんのお話を聞いてると、その2つは必ずしも別じゃないと感じて、勇気付けられます。
鈴木さん: 長く残るものは絶対いいものだと思います。そして、長く残るものは絶対に売れ続けているんです。
津田: そうなんですよね。「北欧、暮らしの道具店」でバイヤーが買い付けてくるものも、使い勝手が良くてデザインが良くて、でもそれだけじゃなくて、ずっと傍に置いておきたくなるもの、なんですよね。私たちも、そういう確かなものだから仕事にしたいと思えるんです。
鈴木さん: やっぱりそうですよね。御社のサイトを見ていると、僕は関係者じゃないのに嬉しいんですよ。消費者の人がちゃんとした理解や知識を持って買っていることが分かるから、励みになるんです。
最終話では、鈴木さんの現在と夢、そしてお話をうかがって勇気をもらった、津田の感想をお届けします。
(つづく)
【写真】鈴木静華
もくじ
鈴木修司(すずき しゅうじ)
1976年、三重県松阪市生まれ。1998年「BEAMS」に入社。メンズ重衣料からメンズカジュアルを担当後、fennicaの前身であるBEAMS MODERN LIVINGの店舗スタッフに。その後fennica、B:MING LIFE STOREのMDを経て、昨年新たにオープンしたBEAMS JAPANに立ち上げから関わる。2005年、民藝の名店「もやい工藝」のオーナーである久野恵一氏との出会いにより、より深く濃く日本の伝統的な手仕事に傾倒し、民藝品をはじめとして生活雑貨の目利きとして活躍している。
ライター 小野民(おの たみ)
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に離島・地方・食・農業などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫3匹と山梨県在住。
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