【インテリア特集】第1話:キッチンが主役。料理家、口尾麻美さんのワンルームマンションインテリア
ライター 嶌陽子
さまざまな国のテイストがミックスされた、大きなワンルーム
本日よりスタートするインテリア連載vol.14。今回は、料理研究家、口尾麻美(くちおあさみ)さんのご自宅にお邪魔しました。
世界各地を旅するのが大好きな口尾さん。旅先で得たインスピレーションを元に提案する、独自の料理が人気です。自宅で料理教室を主宰するほか、雑誌や書籍などでも幅広く活躍しています。
都内のマンションに夫とふたりで暮らす口尾さんのインテリアは、一言でいうと「楽しい!」
フランス、トルコ、リトアニア、ジョージア、モロッコ……。これまでに訪れた数々の土地で手に入れた調理道具や雑貨。それらがにぎやかに並んだ様子は、まるで異国のバザールのような雰囲気です。
と同時に、シックで大人っぽい雰囲気もある、不思議な空間。独特の魅力を持つご自宅を、じっくりと見せていただきました。
第1話は、この家の主役であるキッチンをご紹介します。
※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです。
第1話
「使い勝手より見た目重視」のキッチン
料理したくなる、全てがオープンな棚。
口尾さんは15年前にこのマンションを購入し、フルリノベーションしました。
もともと3LDKの間取りだった部屋を大きなワンルームに。梁だけを残して全ての壁を取り払ったのだそうです。
口尾さん:
「リノーベーションした時のコンセプトは、“パリのアパルトマン”。ただし、この15年間、あちこち旅に出かけては色々モノを買って並べているので、色々な国のテイストがミックスされています」
家の大きな部分を占めるのは、何といってもキッチン。自宅で料理教室を主宰する口尾さんにとって、キッチンは日常の場と同時に、大事な仕事場でもあります。
▲L字型のキッチン。奥にガスコンロがある。
口尾さん:
「キッチンは、自分でデザインして作ってもらったものです。雑誌の気に入った写真を切り抜いて集めておき、そのイメージを合わせました」
ちなみに、最近はインスタグラムでインテリアのイメージを時々チェックしているそう。フランスなど、海外のアカウントもお気に入りです。
キッチンカウンターの下は、器や調理道具がずらりと並んだ棚。
印象的なのが、全ての棚がオープンで、扉が全くついていないことです。
口尾さん:
「キッチンに立って料理をしている時間が圧倒的に多いので、扉の開け閉めは手間になると思い、あえてつけませんでした。料理中の手で扉を触ると汚れますしね。
それと、どこに何があるか分からず、結局ずっと使わないものが入っているような、“開かずの扉”を作りたくなかったんです」
カウンター上の壁につけた長い棚には、器などの他に、揃いのフランス製ガラス瓶に入ったスパイス類が並んでいました。
▲右端にあるナイフは、トルコで買ったパイ切り専用のナイフ。
ナイフ類を収納するマグネットホルダーは、ご主人がロンドンで見つけて買ってきてくれたものだそうです。
▲木のツールが入っているの陶器はフランス製。フランス製の金属のピッチャーはF.O.B COOPで購入。
▲最近買った、IKEAのキャスター付きワゴン。料理教室の時などに使っている。
口尾さん:
「とにかくモノが多いんですが、テイストや素材ごとにざっくりと分けて収納したり、使用頻度の高いものはすぐ手に取れるところに置いたりするように意識しています」
吊るして、ひっかけて、空間を上手に活用。
▲どっしりとした吊り下げ式の什器はJOURNAL STANDARD FURNITUREで購入。
キッチンの至るところで見かけたのが「吊るす」収納。
コンクリート製の天井や壁にフックやバーを取り付け、世界各地のかごや什器を上手に活用しながら、鍋、ざる、ティーポット、ハサミなど、あらゆるものを吊るしています。
どれもがすぐ手に取りやすそう。しかも吊るしている位置や高さがバラバラなので、見た目にも楽しいリズム感が生まれています。
▲フックに吊るしたカゴの中には、ラップやアルミホイルなどをまとめて入れて。
▲天井から吊るした、トルコ製の天秤。
▲リトアニア製のかごに木のスプーンなどを入れて。チェーンはインテリアショップや東急ハンズなどで購入。
▲コンロのタイルは口尾さん自身が貼った。そこにバーを取り付け、フライパンを吊るしている。
さっと手に取れる便利さと、さながら「世界の道具ギャラリー」のような楽しさが同居する口尾さんのキッチン。「料理が好き!」という気持ちが伝わってきます。
楽しさあふれる、「ディスプレイ風」収納法
カウンターのそばの棚の上にあったのは、マグカップをひっかけているスタンド。コンランショップのセールで購入したそうです。
モノをひっかけるだけでなく、紙ナプキンを重ねて置いてみたり、てっぺんにかごを乗せたり。ちょっとしたアイデアに目を奪われます。
▲ステンレス製ラックはツェツェ・アソシエのもの。右のモロッコ製のカゴにはハーブティーをまとめて入れているそう。
カトラリー入れとして活用していたのは、なんと「食パンの型」。口尾さんが以前にレストランで見かけたスタイルで、真似してみたのだそうです。
くすっと笑えるものが混ざっていたり、シックな雰囲気をまとっていたり。さりげなくも、きらりとセンスが光るのが、口尾さんの収納法です。
口尾さん:
「私は昔、アパレル会社で働いていて、ディスプレイは仕事の一部だったんです。だから今でもモノを置く時は、まず“ここに置いたら面白いかな”という観点から考えてしまいます。
使い勝手より、ディスプレイとして素敵かどうかを重視しているかも(笑)」
一日の大半をキッチンで過ごす口尾さん。だからこそ、便利であると同時に、気分が上がる空間にしたい。
少しずつ作り上げてきたこの収納スタイルは、口尾さんにとって、日々の料理のモチベーションを上げるための大切な要素でもあるのです。
次回は、まだまだあるキッチンの続きを紹介しつつ、口尾さんが世界中で集めてきた器や道具をじっくり見せてもらいます。どうぞお楽しみに。
(つづく)
【写真】馬場わかな
もくじ
口尾 麻美
料理家・フォトエッセイスト。世界を旅して、それぞれの国の家庭料理を学んだり、ストリートフードを食べたり。そこからインスピレーションを受けた料理を本、雑誌、料理教室などで提案。著書に『トルコのパンと粉ものとスープ』(誠文堂新光社)など。http://je-suis-amazigh.blogspot.jp/
ライター 嶌陽子(しま ようこ)
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
▽口尾麻美さんの本はこちらから!
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