【スタッフコラム】わたしの「好き」と、お水の香り。
商品プランナー 斉木
クラシコムに入って4ヶ月ちょっと。一番うれしかったのは、いろんな場面で「斉木さんはどれが好き?」「斉木さんはどう思う?」と聴かれたこと。
それまでずっと裏方に徹していたから、意見を求められるたびに、泣きそうになるくらい感動したのを憶えています。
でも最近、この質問にちょっとだけ苦しくなっている自分に気づいたのです。
わたしの「好き」は、どこに行った?
好きなものがないわけじゃない。こうしたい、と思うことがないわけじゃない。
でもそれを「好き!」と声に出した途端、いろいろな責任や評価が気になりだして、シュルシュルと気もちがしぼんでいってしまう。そして、そんな自分に、誰よりも自分がガッカリしています。
好きなものを声高に宣言するでもなく、見て見ぬふりをするでもなく、からだの真ん中で芯のようにあたためておける “強さ” がほしいーーー。ここ数ヶ月、そんなことを考えていました。
そんなとき、文筆家・長谷部千彩さんの『私が好きなあなたの匂い』の刊行を記念したトークイベントに行きました。本に納められているのは、香水愛好家の長谷部さんが、実在するさまざまな香水から想起した36の物語。
いい日も、悪い日も、香水を相棒にしているという長谷部さんのお話を聞いていたら、なんだか無性に香水を新調したくなっている自分がいました。もし、「これだ!」と思えるものと出逢えたら、いまのモヤモヤした日々から抜け出せるかも、と祈りにも似た気もちを込めて。
もう一度、「好き」を探しに行こう。
イベントの翌日には、しとしと雨の降るなか、何もかもがきらめく百貨店で香水と対峙していました。「どんな香りが好きなんですか?」という質問にうまく答えられず、香りを吹きつけたムエットだけが溜まっていきます。
なかなかピンとくるものに出会えずあきらめかけたころ、『普遍なる水』という意味をもつ、フランスの香水を手渡されました。
ふわっと香りが広がった瞬間、コレだ、と思いました。透明感があって静謐で、香水らしい華やかさには欠けるけれど、空気のようにその場に馴染む。小心者のわたしの傍らに、そっといてくれるような安心感を感じました。
「わたしはこれが好き!」と自信を持っていえるような “自分のなかの芯” は、まだ見つけられていません。毎日気もちはゆらゆら揺れて、責任も評価もなきもののようには扱えない。それでもこの「お水みたいな香り」とともに歩むようになって、そんな自分をすこしだけ肯定できるようになりました。
あの雨の日、無数の香りのなかから、自分のための一本を選び取れた。そんなちいさなちいさな自信が、お守りになっているのかもしれません。
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▼コラム内に登場した本は、こちらでご覧いただけます。
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