【木曜日になったら、純喫茶】元祖「のりトースト」と兄弟マスター。喫茶好きのきっかけは、この一軒との出会い
難波里奈
これまで1700軒以上の喫茶店をめぐってきた難波里奈が、月1でおすすめの喫茶店をご紹介する連載 「木曜日になったら、純喫茶」 。
昨年の春に連載のお誘いを頂いてから、早いもので1年が経過しました。
月に一度、いただいたテーマにふさわしい純喫茶をあれこれと思い浮かべ、皆さんにお店をご紹介してきました。そのたびマスターからじっくり話を聞くのも嬉しい時間でしたが、これをもちまして最終回となりました。
そんな最後のお店は「私が純喫茶を好きになるきっかけ」をテーマに、お届けしたいと思います。
喫茶好きになるきっかけは
この一軒との出会い
十数年も前から現在に至るまで、仕事終わり、休日と、毎日のように純喫茶へ通い詰めています。
そんな私がこれほど純喫茶に夢中である理由のすべてが詰まった原点であり、大切な店。それが神田の「珈琲専門店エース」でした。
エースといえば、毎月のように雑誌やテレビで紹介されている人気メニュー「のりトースト」で知られる名店。皆さんも、その名を耳にしたことが少なからずあるのではないかと思います。
のりトーストとは、薄切りの食パンにバターと醤油、焼き海苔を挟んで焼いた、意外な組み合わせの絶品トースト。
▲まったく同じように作っても同じ味にならない!という声が多数よせられる。
▲作り方はいたってシンプル。トーストした食パンに塗られたバターも良いアクセントに。
のりトーストはもちろん、とびきり美味しい。しかしエースの素晴らしさはそれに留まらず、一度訪れた人たちが何度も訪れたくなってしまう不思議な魅力にあふれています。
そのひとつが、カウンター越しからいつもにこやかに出迎えてくれる英勝さん(兄)と、飄々とした雰囲気ながらてきぱき給仕する行う徹夫さん(弟)。
この二人の人柄が、お店一番の魅力です。
▲左が英勝さん、右が徹夫さん。
純喫茶の世界に足を踏み入れたばかりの頃は、扉を開けるのに緊張してしまうこともしばしばだった私。
ところがエースでは、そのやわらかな空気に緊張もほぐれ、すぐにお二人の虜になってしまったのでした。
常連さんも一見さんも関係なしに、あたたかく迎え入れてくれるこの安心感。もし、純喫茶の訪問初期に居心地の悪さを感じるような出来事があったなら、その後色々な店に足を運ぶことを躊躇していたかもしれません。
昔ながらの雰囲気を保ちつつ、エースがいつも清潔なのは、綺麗好きな弟・徹夫さんがいるから。
一目で親しみやすさを醸し出す、手書きの看板や珈琲豆の説明が書かれたメニュー表は、兄・英勝さんのお手製です。
時折鳴る黒電話の呼び出し音、音楽のない店内で特別なBGMとなる周囲の会話、1人でも退屈しないよう置かれている雑誌の数々、何よりも毎日通えるお手頃な価格と豊富な珈琲の種類……。
エースの好きなところを挙げ始めたら、キリがありません。数えきれないほどいらっしゃるお店のファンそれぞれのお気に入りポイントがあるのだと思っています。
▲各テーブルに置かれた「のりトースト」の旗は、部品を買い集めてマスターがひとつひとつ手作りしている
老舗だからと気張らず、マスターのお二人は何十年も変わらない笑顔。
「いつでも安心して来て下さいね。のりトーストや珈琲を『美味しい』って言ってもらえると嬉しいねえ」
すべてが猛スピードで駆け抜ける今日、「ずっと変わらないこと」はとても難しくて貴重なこと。だからこそ、懐かしさを感じてほっとする空間や時間を求めて、人々は純喫茶に足を運ぶのかもしれません。
私にとってのエースのように、皆さんにもそれぞれの大切な純喫茶があると思います。自分の暮らす街、働く街、時々遊びに行く街……。そこに目指したい場所があるという幸せをこれからも守っていけたならとても嬉しいことです。
1年間お読み頂き、本当にありがとうございました。どこかの街の純喫茶でふらりとお会い出来ますように。
珈琲専門店エース
住所:東京都千代田区内神田3丁目10-6
TEL:03-3256-3941
営業時間:7:00〜18:00(土曜:〜14:00)
定休日:日曜、祝日
3月に行きたい純喫茶、こちらもおすすめ。
鬼怒川温泉 マロニエ
光が差し込む美しい空間は、夢のよう
マロニエ
住所:栃木県日光市鬼怒川温泉大原1407-2
蔵前 らい
豊富なメニューと2階席がお気に入り
らい
住所:東京都台東区三筋2丁目24-10
【写真】岩田貴樹(最後2枚をのぞく)
難波里奈
東京喫茶店研究所二代目所長。東京生まれ。会社勤めを続けながら仕事帰りや休日を利用して足を運んできた喫茶店の数は、なんと1700軒以上。ブログ
「純喫茶 コレクション」 をはじめ、著書 『純喫茶へ、1000軒』 (アスペクト)、『純喫茶、あの味』 (イースト・プレス) を通じて喫茶店の魅力を伝えている。他にテレビや雑誌などで幅広く活躍中。http://retrocoffee.blog15.fc2.com/
▽難波さんの著書はこちら
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