【柳沢小実の家づくり】第3話:暮らしは、きれいごとじゃない。
柳沢 小実
こんにちは。柳沢小実です。
42歳になるまでずっと「賃貸派」だった私が、昨年ついに家を建てることになりました。
こちらの連載では、「暮らしやすさ」を第一に考えた、私なりの家づくりについて全10話で綴っていきたいと思います。
第3話
暮らしは、きれいごとじゃない。
間取りがある程度固まり、内装を考える段階になりました。
私はイギリス・フランスのアンティーク、北欧雑貨などに囲まれた環境で育ち、大人になってからは欧米や北欧、アジアなどあちこちを旅しました。そのため、好きなテイストが多岐に渡っています。
真っ白?
ナチュラル?
カフェ風?
どれも好きだけど、どれも違うような。
うーん……
家づくりは、どのようなテイストが好みか、インテリアコーディネーターさんにある程度伝えなければなりません。自分がどのようなものが好きか言語化するために、インテリア特集や専門誌、書籍、インスタグラムまで、情報を集めまくりました。
でも、一気に大量の情報にふれたからか、見れば見るほどこんがらがって、ぐったり疲れてしまったのです。
そして最後には、「がんばってお洒落を目指さなくてもいいかな」「個性ってそこまで出さなきゃいけないのかな?」という心境に至りました。
そもそも、家づくりにかかる金額を思うと、夢見てばかりはいられません。正直なところ、建てるだけで精一杯です。
だから「迷ったら、基本に戻って手堅く」と、ルールを決めました。家は家具や物、人が入ってはじめて完成するから、箱そのものは作りこまずに、さっぱりと。おのずとシンプル路線になって、それでよかったように思います。
表に出るのが仕事のクリエイター夫婦ならともかく、わが家はごくごく一般的なサラリーマン家庭。私の仕事は等身大の生活から生まれています。だから、金銭感覚も価値観も、あくまでも普通でいたい。
「その人らしさ」は無理に入れなくても、住んでいれば滲み出ます。自然体の素敵さが、きっとあるはず。そう信じて、装飾をできるだけ抑え、その分、設備などに予算をかけました。
というのも、お洒落ビンテージマンション時代に、見た目重視による動線の悪さや、暖房効率が良くないなど、いくつか弱点を経験していたからです。
当時は、その不便も楽しめましたが、もうできません。
暮らしはきれいごとじゃない。今はそう感じています。
夢いっぱいの頃をすぎた、40代の家づくり。この先の変化を見越して「家事のしやすさ」を第一に考えました。
気持ちよく家事ができれば、自然と笑顔でいられるでしょう。あとは、家族との関係が良く、幸せだなとふとした時に思えれば十分です。
家づくりは、暮らし方や生き方を見直す機会なのですね。
(つづく)
【撮影】上原未嗣
もくじ
柳沢小実
衣・食・住・旅にまつわる著書多数。収納好きが高じて、整理収納アドバイザー1級を取得。ラクチンですっきりな収納法を日々研究している。著書に『これからは、がんばりすぎない 40歳からの暮らし替え』 『土曜の朝だけ! “きちんと” が続く週末家事』(大和書房)など。9月に「収納と家づくり」をテーマにした新著が発売予定。 http://www.furarifurari.com
▽柳沢小実さんの著書はこちら
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