【わたしのコンディションづくり】後編:断捨離ではなく「取捨選択」。最小限のこだわりと歩む、コンパクトな暮らし
編集スタッフ 糸井
三浦半島の海沿いの一軒家で、ひとりコンパクトに暮らしている増田美奈子さん。自由に気楽に、毎日を遊ぶように暮らす増田さんの、日々のコンディションを整える方法について、お伺いしています。
後編の今日は、気分を整える愛用品や、暮らしのなかの小さなこだわりについて、お話しいただきます。
気に入ったものだけを、30年愛したい
増田さん:
「テレビ、携帯、車は持っていないんです。ニュースはラジオで聞いて、テレビ番組はこのMacで見ています。服や宝石も全然興味がないし、大した物欲はないの」
そう話す増田さん宅の間取りは本当にコンパクトで、30歩もあれば家のすべてを一周できるほど。リビングに置かれているMacから音楽が流れ、その曲は家のどこにいても聴こえてきました。
▲チラシや新聞のなかに綺麗な写真を見つけたら、切り取り、壁にコラージュ。お気に入りは、右下の『デヴィッド・ボウイ』だそう。
一方で、壁には標本箱が揃い、海辺で拾った小石が置かれ、メガネや帽子が並べられていて。コンパクトな間取りに対して意外とものが多い気が……?
増田さん:
「靴とメガネと帽子は大好きだから、別腹ね。すぐ買っちゃうから使ってないものも沢山あります。
いらないものは迷わず捨てますけど、気に入っているものなら、たとえ使えなくなっても捨てないんです。その代わり、別のものに作り変えちゃうのよ」
増田さん:
「例えばこの背もたれの正体は、トートバッグ。バッグとして使えなくなっても、生地は傷んでないから作り変えたの。綿の代わりに、古くなったシャツをうまく畳んで入れてね。 そうそう、これなんかも面白いでしょう?」
そうして配ってくれたのは、柄もサイズも異なる、様々なコースター。
増田さん:
「元々これも別のもの。こっちはすっごく気に入っていたブラウスの生地。そっちのブレザーも好きだったなぁ。はい、どうぞ使って! 」
それらひとつひとつには、何十年も使ってきた思い出が残っていました。それを手にとってみると、なんだかとても落ち着くのです。
だけど、お気に入りのものをハサミで切ってしまうって、捨てるのと同じくらい躊躇しないのですか?
増田さん:
「そう? 楽しいじゃない。今度はどんな風に使おうかと考えるのが好きなの。そうやって、いつまでも手元に置いておきたいのよね」
今日着ているニットも、30年選手。お気に入りに認定したものは、何十年も使うのがマイルールのようです。
▲台所には、冷蔵庫がふたつ。片方はなんと食器棚兼調味料のストックルーム。「気に入っていたから捨てずに使い回してて。これ見たらみんな『グラスをいつも冷やしてるんですか! 』って驚いてくれるのがおもしろくって」と増田さん。
断捨離ではなく「取捨選択」をする
断捨離を追求しているというよりも、取捨選択をしているだけ。「お気に入り」なら、いくらでも買って・愛してよしとする。
そんな部屋でひときわ目立っているのが、「緑色」のアイテムです。セーター、眼鏡など身に着けるものはもちろん、寝室ではシーツが、台所ではグラスやまな板が、その全てがグリーン!
増田さんの取捨選択は、「色」がものさしとなっているようです。
増田さん:
「小さい頃から緑が大好き。例えば、あの緑の靴。私、緑の靴を見つけたら必ず買うことにしてるから、あれを見つけた瞬間も、迷わず購入しました」
増田さん:
「好きな色が決まっているから、もの選びも随分楽よ。そうやって集めていると、自然と好きなものに囲まれていくから、これも、機嫌よくいられるコツかもしれないわね」
マイカラーの認識は広がり、周りからのプレゼントも「緑モノ」が定番。いつの間にか、緑だらけになっていきました。
「こだわり」は、少しでも十分
増田さん:
「私の『こだわり』と言えることはそのくらいね。必要以上の期待は自分にしない。それが『ストレス』になると思ってるから。
仕事も同じ。デザイナーだった頃は『もしかしたらこの作品は、世間的にすごい大作かも』と気張っていたけれど、年とともに、周りの力量も、同じくらいすごいことがわかってくるじゃない?良い意味で、身の丈を知ってくるというか。
それでも張り切って、挑んでいたこともあったの。期待が叶うかどうか疑心暗鬼になったり、叶わなくて落ち込んだり、忙しなかったわね」
そして今度は、デザインという仕事で得た遊び心を、暮らしに向けていったといいます。
増田さん:
「日常のなかにも楽しいことが沢山あることに気づいたの。手作業で、一から標本を作ったり、ニットを編んだり、布や貝殻でアクセサリーを作ったり。
『これはうまくできたな』と自己満足に浸っているうちに気分も乗るし、誰かが家に遊びに来たときに、それを褒めてくれるだけで嬉しくて。
そうやって日々を営んでいったら、必要以上の期待も、ストレスもなくなっちゃってたみたいね」
▲このアクセサリーは、アニマル模様のマリメッコのハギレで作ったもの。こちらを胸元につけるコーデが、学生たちに人気。
毎日を構えず、健やかに生きる増田美奈子さんのコンディションの整え方を、2日に渡りうかがってきました。
「特別なことはなにもしていないのよ」
そう語りつつも、暮らしの隙間に素敵な遊び心を見つけたり、自分への期待に張り詰めることなく過ごせているのは、増田さんがなによりも、等身大の自分でいることを大切にしているからなのかもしれません。
自分にとって心地いい、そんなひとコマを育てていく。それは例えば、朝のコーヒーや、夜に浸かる湯船。めまぐるしい時期にも、「私」に戻るためのメンテナンス法を、暮らしに忍ばせられますように。
(おわり)
【写真】木村文平
もくじ
増田美奈子さん
三人兄弟の末っ子として生まれ、20〜30代では、岡本太郎の原画を用いたモザイク壁画や、広告のデザイナーとして活躍。たまたま営業先だったダイビングショップにのめり込み、いまでは都内の高校で海洋生物の市民講師をつとめる。国際水中映像フェスティバル実行委員会日本事務局の広報担当。特定非営利活動法人 ディスカバーブルーの理事。ダイビングのインストラクターとして、この40年間で潜ったその数1000本以上。
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