【愛すべきマンネリ】第2話:「くり返し」を愛せたら、人生はもっとたのしい?(山本ふみこさん)
ライター 藤沢あかり
随筆家の山本ふみこさんに、「愛すべきマンネリ」について、お話をうかがっています。
1話目では、毎日続けるマンネリこそ、コツコツと貯めれば財産になっていくというお話をお聞きしました。続く2話目では、山本さんがどうしてマンネリを「マンネリ」と捉えなくなったのか。新米主婦の頃にさかのぼってみたいと思います。
くり返しを愛することと、マンネリはいつも隣り合わせ
くり返す毎日の料理や片づけを、今でこそ「楽しい」と話す山本さんですが、家事を日常にして35年。主婦としてスタートしたばかりのころはどうだったのでしょうか。
山本さん:
「昨日片づけた部屋を、今日もまた片づける。着たものを洗ってまた着て、ごはんをつくって片づけて、またつくって……。毎日同じことのくり返しに、これが無限に続くのかなとため息をついたこともありました。
でも、これを楽しめなかったら、わたしはこのまま疲れたかあちゃんになっちゃう、とも思ったのね。主婦の生活も、人と人との暮らしも、くり返しを愛せないと楽しめない。それだけは確かなんじゃないかって」
山本さん:
「あるときそんな話を人にしたら、音楽家も同じだって言われたんです。
音楽家って、練習に練習を重ねて、同じことをやり続けていくからこそ、いい演奏家になれる。だから主婦の仕事も同じだねって。そうしたらなんだか自分の毎日が急に高尚な感じになっちゃった。おぉ〜、音楽家と一緒か!って(笑)
くり返しを愛することと、マンネリって、裏を返せば同じことだと思うんです。同じことが続く暮らしのひとつひとつを、きちんと愛していけたら、それが自信につながっていくんじゃないかな」
山本さん:
「そのためには、生活の中で “おもしろがる” というのも大切かもしれません。道にぽろんとプチトマトひとつ落っこちていても、『君はプチトマトとしてはずいぶん破格の人生だねぇ……』って、なんだかおもしろくなっちゃうとか(笑)」
そう話しながら、話題は庭の梅の木にやってくる、2羽のメジロのことに。
「木の枝にみかんを刺しておいたら、夫婦のメジロが食べに来てくれるようになってね。でもある日ヒヨドリの夫婦が先に食べちゃって……!」と山本さん。
ふらりとやってくる2羽の鳥を、なんのためらいもなく「夫婦」と称し、鳥たちと同じ視点で楽しそうに語る山本さんの様子に、暮らしを ”おもしろがる” 姿勢がありありと感じられたひとこまでした。
3人の子どもたちとくり返してきた、漬物づくり
「これね、マンネリの入り口かも」と言って、山本さんが小さな壺のようなものを抱えてきました。かたわらには、小さなナイフも。
山本さん:
「浅漬けを作る容器です。
うちには女の子が3人いて、それぞれが3歳になったころから、これで漬物を作ってもらっていたんです。自分できゅうりなんかの野菜を切ってもらって、たまに昆布を入れたり、酸っぱい味つけにしてみたり。“自分の道具” となると嬉しいものだから、ナイフも、サンタクロースにプレゼントしてもらったものでね。
漬物ってシンプルだけど、食卓には必ずある、うちのごはんには欠かせない大切な部分。それを任せてもらえるって、子どもにとってはすごい達成感だったみたい」
「マンネリ」を「達成感」につなげれば、続けていける
山本さん:
「くり返しを楽しむって、こういうことだと思うんです。シンプルなことを楽しんで、大切にしていく。そしてそこに、達成感があるから続けていける。漬物もシンプルだからこそ愛してくり返していけるし、食卓の一端を担うという達成感もあるのよね。
すでに子どもたちは3人とも成人しましたが、みんなそれぞれ、料理をつくったり、そういう毎日のくり返すことを楽しめる人に育っているみたい。今となってはこれが、マンネリを愛する入り口になったのかな」
達成感。どうやらこれは、くり返しを愛し、マンネリを楽しむうえでのキーワードになりそうです。毎日の家事にも達成感があれば、何か変わってくる気がします。
最終話となる次回は、マンネリの先にある「達成感」について。そして、誰もが悩む料理のマンネリを自信に変える秘訣についてをうかがいます。
(つづく)
【写真】志鎌康平
もくじ
山本ふみこ
随筆家。料理や子育て、片づけなど、暮らしにまつわるあらゆることを多方面から「おもしろがり」、独自の視点で日常を照らし出す。武蔵野市教育委員やエッセイ講座の講師としての活動も。著書に『忘れてはいけないことを、書きつけました。』(PHP研究所)、『家のしごと』(ミシマ社)など他多数。
ライター 藤沢あかり
編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。
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