【おばあちゃんと私】後編:「歳を重ねることは、引き出しが増えること。できることもたくさんあるの」

編集スタッフ 松浦

「誰かの好きではなく、自分のものさしで好きと思える暮らしができたらそれでいい」

ただそんなことを思う私のものさしも、きっと誰かのものさしからできていると思うのです。どんな偉人だって、きっとみんな誰かの影響を受けて、少しずつ自分のものさしをアップデートさせていったはず。

特集「おばあちゃんと私」では、そんなものさしをテーマに、自由が丘でジュエリーショップを営む櫻さんと、お孫さんでモデルの花梨さんにお話を伺いました。

後編では、今の花梨さんをつくった、櫻さんのものさし「自分に目を向けて、挑戦していくこと」について話を聞きます。

 

知れるチャンスがあるなら、貪欲に

「これは花梨の誕生日、これはクリスマスね」櫻さんがそう言って見せてくれた写真には、家族揃ってごちそうを囲む様子がいくつも写っていました。

花梨さん:
「ケーキを切っているのが若かりし頃のグランマ。よくこうやってよくグランマの家にご飯を食べにいきました。家族みんな料理が好きで、誕生日やクリスマスには揃って食事会をするんです。私はグランマのつくる桃のタルトが大好きで、今でもお互いよく作るんですよ」

そう言って花梨さんが見せてくれたのは、櫻さんからもらったという手書きのレシピ。キッシュ・ロレーヌ、フロマージュ、ガトー・オ・フレーズ…… 今でこそ聞いたことがあるものの、当時の日本では珍しかったであろう外国の料理のレシピが細やかに綴られていました。

櫻さん:
「このレシピも実は、憧れていた私の伯母からもらったものなんです。外国に住んでいたこともある彼女は、お洒落はもちろん食にも詳しくて。

珍しいレシピを知れる機会は、普段はほとんどなかったから、会うたびに『私にも教えて!』って掴まえて色々聞き出していました。口頭で聞くそれを、細かく書き取ってね。

そのレシピがこんなかたちで、孫に受け継がれていくなんて本当に嬉しいことです」

櫻さんは懐かしそうに笑います。

 

歳は離れていても、フラットでいられる理由

穏やかな見た目とは裏腹に、チャンスを逃さないバイタリティを持つ櫻さんの影響もあり、一人暮らしをする花梨さんは、興味の赴くままにお菓子づくりや料理に勤しんでいるよう。

そして一人暮らし始めてまもなく、櫻さんをアパートに招いてお泊まり会をしたことがあったとか。

櫻さん:
「夕食に、ロールキャベツを作ってくれました。丁寧にくるくるっと巻いてあって、見た目も綺麗。あれは本当に美味しかった。

花梨のベッドで映画も観たんだけど、あれは面白くなかったわ。途中で止めて、寝ちゃったわね」

そのやりとりは、おばあちゃんと孫というより、友達同士のようなフラットさ。年齢差はものともしません。

花梨さん:
「グランマは、こうやってストレートに言うことが多いんです。いいものはいい、嫌なものは嫌。でも私はそんなところが好き。

グランマ自身や私に対して、無理を感じないから、それが居心地良いのかなと思います。それは人生経験が豊富なグランマだからできることかもしれないけれど、私も人に対してそういうマインドでいたいと思わせてもらっています」

 

歳をとっても、できることは山ほどあるの


「歳をとるのも悪くないわね」机の上に広げた昔の写真を眺めながら、櫻さんがいいました。

櫻さん:
「こうやって孫と、改めて昔の話をしていると、どの経験もひとつひとつ大切なものに思えてくる。その時は苦しかったり、悩んだりするものだけど、とにかく自分を信じてやってきたつもり。

そんな積み重ねの中で、感覚や経験、いろんな引き出しが増えていくんだと思います。だから、歳を重ねることは豊かなことよね」

▲左上:櫻さんと、花梨さんの母。右下:50代ではじめたテニス。一番左から櫻さん、夫、花梨さんの母

櫻さん:
「といいつつ、歳をとると悲しくなることもありますよ。記憶力が悪くなったり、運動神経も鈍くなったり。昔はテニスやサイクリングも大好きで、週末はよく旅行もしれいたけど、今はもうあの時みたいには動けない。

でも一方で、こんな風にも思うんです。『できることもまだまだあるのよ!』って。

テニスは無理かもしれないけれど、卓球はこの歳になっても十分楽しめる。長期の旅は難しいかもしれないけれど、散歩ならできる。最近は、近くのコミュニティセンターで太極拳を始めました。次はヨガもやりたいって思ってます。

そうやって、『今の私』に目を向けたら、できないことはどれも、できることに変わっていくのかもしれませんね。そんな自分にも出会えるから、新しいことに挑戦することは怖くはないの」

花梨さん:
「私、グランマが何もしていないとこみたことないんです。この間も、お店に来てみたら空き時間でフランス語の勉強をしていました。それもアプリで!」

櫻さん:
「いつかね、花梨とフランス旅行ができたらなって」

歳を重ねていくと、できないことや、なくなったものばかり気になってしまうもの。でも、それって本当にできないことなんだろうか……? 櫻さんの飽くことのない好奇心と、それを探し続ける姿は、きっとなんでもない日常を何倍も、何十倍も豊かにしているのだと思います。

櫻さんが、花梨さんに受け継いでいたものは、そんな日々の眼差し。生き方そのものでした。

 

まだ引き出しは少ないけれど……

最後に花梨さんはこう話していました。

花梨さん:
「グランマみたいに歳をとれたらいいなって思います。これはおしゃれに対しても、人生に対しても同じで。

芯があって、いい意味で曲げないこと。それって、自分を信じられていないと難しいと思うから。今は引き出しが少ないけれど、グランマのようにこれからの人生で自分に目を向けて挑戦していったら、その数はいくらでも増えていくのかな……と。

ちなみに今挑戦したいことは、文章を書くこと。小さい頃から読むことも書くことも好きで、密かにいいなと思っていたのですが、幸運なことに最近モデルの仕事のなかでそんなチャンスが巡ってきて…… やったことないし、プロでもないから不安ですけど、挑戦してみたい。きっとグランマだったらそうすると思うし!」

【写真】間澤智大

もくじ

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櫻さん、花梨さん

祖母・櫻さん: 1938年生まれ、自由が丘でジュエリーショップ『ヴィア・ミュージアム』を営む。孫・花梨さん: 1997年東京生まれ。現役美大生として演劇を学ぶかたわら、モデルとして雑誌、広告、CM、など多方面で活躍中。


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