【訪ねたい部屋】第1話:築40年の賃貸マンション。簡単DIYで、あこがれのインテリアを実現。
ライター 長谷川未緒
その人らしさが伝わってくるインテリアで整えられた部屋は、居心地が良さそうで魅力的です。
特集「訪ねたい部屋」は、気になる方のお宅を訪問して、インテリアとその人らしさの関係を紐解くシリーズです。
今回お話を伺ったのは、菓子作家の吉田菜々子(よしだななこ)さん。吉田さんは、「thumb and cakes(サム アンド ケイクス)」 名義で、シュガーケーキやアイシングクッキーをつくり、広告や雑誌、イベントなどで活動されています。
撮影にも使われるほど絵になるインテリア
わたし・長谷川が吉田さん宅の素敵なインテリアを知ったのは、ある雑誌の撮影がきっかけでした。
サシェ(匂い袋)の使い方を生活の中で紹介する記事のための撮影場所として、生活感がありながらも、どこを切り取っても様になる家を探していたところ、スタイリストさんが紹介してくれたのです。
何気なく置かれたビンテージのテーブルや椅子、蚤の市で見つけたちいさな雑貨たち、日当たりのいい窓際に気持ち良さそうに並んだグリーン。
素敵だけれど頑張りすぎていないリラックスできる空間に、「こういう部屋で暮らしたい!」と大興奮しながらあちこちにサシェを置き、撮影させてもらったのでした。
今回、インテリア特集をするにあたり、肩の力の抜けた居心地の良い部屋づくりのヒントを教えてもらいたい!と、取材に伺いました。
結婚を機に暮らしはじめた、緑に囲まれた都内のマンション
吉田さんは、都内にある築40年の集合住宅に、夫とふたり暮らしをしています。結婚を機に、3LDKのこの家に、5年前に越してきました。
吉田さん:
「緑の木々が窓から見えて気持ちがよかったのと、以前は仕事場を別に借りていましたが、一緒にしたいと思っていたので、広さのある家を探していたんです。
賃貸なので引っ越す際には元に戻す必要がありますが、自由に改築していいところも魅力的でした」
▲ダイニングにつくったキッチン。詳しくは第2話で。
10代の頃から好きなものが変わらないという吉田さん。インテリアも昔から好きだったヨーロッパ、特に高校の修学旅行で訪れたイギリスの影響を強く受けていると言います。
イギリスでいちばん美しい村で魅了された素朴なインテリア
吉田さん:
「はじめての海外旅行だったこともあり、イギリスは何もかもが新鮮で魅力的に映りました。ビンテージの洋服屋さんを巡ったりしたのも楽しかったですね。
すごく好きになって、専門学校を卒業後、1年間、留学したんです。修学旅行先はロンドンでしたが、留学先はコッツウォルズにしました」
コッツウォルズは、ロンドンからバスで2時間ほどのところにある地域です。イギリスでいちばん美しいと称される村がある、昔ながらの緑豊かな景観は、まるで絵本の世界に迷い込んだようだと観光地としても有名です。
吉田さん:
「外観や庭のガーデニングもさることながら、わたしの宿泊先も、友人のホームステイ先も、どこのお宅もかわいくて。
使い込まれた家具や食器、壁紙の花柄や、無造作に置かれた庭仕事の道具など、カントリーすぎないナチュラルな素朴さにとても惹かれました」
吉田さん:
「ひとり暮らしをはじめたときからずっと、モダンというよりは、温かみのある気取らないテイストが好みのインテリアなのは、イギリスの田舎の家がイメージソースになっています」
イギリスでは代々受け継がれたものを丁寧につくろいながら使い続ける人も多いと言います。吉田さん宅の家具も、中心となるのは、そんなビンテージの家具です。
イギリスの家具は日本の住宅にフィットする?
▲ アーコールのビンテージの椅子。インターネットで格安で見つけたそう。
吉田さん:
「海外の住宅は広いイメージがありますが、イギリスの家は日本とそれほど変わりません。家具も小ぶりなものが多いので、日本の家のサイズにも合うものが見つけやすいと思います」
いまでも年に1度はイギリスに行くものの、さすがに大きな家具は買ってこられず、日本で買っているそう。友人も働く、麻布の『ブラウニーアンドティールーム』に探しに行くことが多いのだとか。
そして、お気に入りの家具は、DIYしながら使い続けるのが、吉田さん流のインテリア術です。
引っ越しで家具が家に合わなくなっても、DIYでなじませる
▲ イギリスのビンテージの整理棚は、部屋になじむよう、天板にベージュのペンキを塗った。
吉田さん:
「イギリスの家では、ペンキの塗りムラや厚ぼったさが残った家具がよく使われていました。現地の人はおしゃれにしようとしたわけではなく、ただ剥げたところにペンキを塗っただけだと思うんです。でも、無理しないDIYは、木のぬくもりを感じて素敵だな、と」
つくられた国も時代も、メーカーも違う家具が置かれているのに、どことなく統一感があるのは、このDIYのおかげなのだとも。
▲ 大きさも手頃で気に入っているイギリスのビンテージの食器棚。
吉田さん:
「引越しを重ねて思うことは、家と家具には相性があるということです。
前の家は、真っ白な箱みたいな家でした。でもこの家は、天井が板張りになっているなど、モダンな雰囲気があるため、前の家で使っていたままでは、かわいすぎて似合わないんです。
たとえば食器棚は、ペールグリーンがこの家には甘すぎたので、ペンキをヤスリで剥がしてなじむようにしました」
▲「もっとペンキを剥がしたいけれど、途中で力尽きました」と吉田さん。
リビングのインテリアに納得するまで、2年ほどの月日を要したと言います。
吉田さん:
「リビングで仕事もするので、動線に合わせて家具を使いやすく何度も模様替えしただけでなく、色のトーンを揃えて、ようやく落ち着きました。黒・ベージュ・茶で統一しています」
▲この家に越してきてから唯一購入した、整理棚として使っているスチール製のビンテージ家具。黒でインテリアを引き締めている。千駄ヶ谷の『タイトルズ』で求めたもの。
身の丈に合った価格の家具をじょうずに取り入れて
統一感のあるインテリアはすべてビンテージの家具で揃えているのかと思いきや、リビングでいちばん大きなスペースをしめるテーブルは、じつはイケアだと言います。
吉田さん:
「以前の仕事場を共用していたスタイリストの友人から譲り受け、10年以上、愛用しています。縦80cm、横2m50cmほどのサイズが仕事に便利なんです。
こうして譲り受けたり、ビンテージでも身の丈に合った値段で気安く使えるものの中から、好みのものを愛用しています」
続く第2話では、ダイニングスペースに設置した仕事用のキッチンを中心にお話を伺います。こちらもイケアで揃えたそうですよ!
(つづく)
もくじ
吉田菜々子さん
ライター 長谷川未緒
東京外国語大学卒。出版社勤務を経て、フリーランスに。おもに、暮らしまわりの雑誌、書籍のほか、児童書の編集・執筆を手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
【写真】滝沢育絵
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