【スタッフコラム】母と娘、16年ぶりのヨーロッパ二人旅の思い出
編集スタッフ 津田
母と初めて二人きりで旅行したのは、私が高校を卒業する年だった。
世界史の授業で知ったスペインにいつか行きたい、と話したら、ある日母が「卒業旅行しよう」とツアー旅行を予約してきた。
いま思えば、親との卒業旅行なんてあまり聞いたことがない。好奇心旺盛な母に乗せられたんだと思わず笑ってしまう。
果たしてスペインは、太陽がきらきらしていて、風がカラッと気持ちよく、水よりワインが安い、人も自然も、料理も大らかな国だった。街のあちこちにカフェやバルがあり、大人たちが昼間から夜更けまで、お酒を飲みながら愉快そうにおしゃべりする様子に惹きつけられた。
ヨーロッパが好きになった私は学生時代にバックパッカーで回った。そのなかでもパリは特別に印象に残った。
街を歩く人たちが、とにかくおしゃれ。カットソー、デニム、コンバースと私と同じような格好なのに、色使いや着こなしが素敵で、不思議に思ったものだった。
あとはカフェに一人座ってワインを飲むマダムが格好いい。まだ二十歳そこそこだった私は、そのマダムの隣でコーヒーとクロワッサンを頼むだけでも緊張した。
貧乏旅行ゆえに入れなかったレストランも多く、大人になったらもう一度行きたいと思っていた。そう話すと、母が「いいね、一緒に行こうよ」とまたも乗り気になり、16年ぶりに二人旅をすることに。
せっかくならと、パリとウィーンに滞在できる航空券を予約したのが、今年の春頃だった。
久しぶりのヨーロッパへの長期休暇に意気込んでいたが、時間の流れは早く、気づけば出発間近。下調べせず、かろうじて新しいパスポートだけ手に、ほぼ着の身着のまま空港へ……。
しかも予約していたレンタルwifiを受け取るのを忘れた。出発ゲートで気づいた瞬間、青ざめた。無事チェックインしたからと、ビールなぞ飲んでくつろいでいた自分がうらめしい。
旅慣れた自分が母を案内するんだ、と息巻いていたのは幻かと思うほど、意気消沈する私を「なんとかなるから大丈夫」と励まし続けてくれる母に、情けないやら、申し訳ないやら。
▲行きたかったジヴェルニーへはバスで。モネの家と睡蓮の池がある。現地のカルヴァドスとシードルで乾杯して、このまま泊まっちゃいたいねと母と笑った。
▲大きなウィンナーシュニッツェル(ウィーン風カツレツ)。一生懸命平らげたが、その日はもう何も食べられなかった。
▲これだけは見たい!と思っていたクリムトの絵。じっくりゆっくり時間をかけて見れた。
沈んだ気持ちのまま、まずはウィーンに到着。ホテルで一息ついたあと、母の誘いで近所を散歩した。
カフェに入り、名物のザッハトルテとコーヒーで落ち着くと、この旅でやりたいことを考える余裕がようやく出てきた。
すると、だんだん気持ちが上向きになる。話しながらノートに書き留める。旅の輪郭が見えてくる。
ああ、そうか。私の旅はいつもこうだった。どんなに事前に調べても、その通りにはいかない。むしろ「そういうこと」から、自由になりたくて旅に出ているのかもしれない。
きっかり毎朝7時に目を覚まし、同じ電車に乗って仕事へ行く。日常は大切だが、そこに留まり続けていると、どうしたって得られない自由さ。それを身体性をもって取り戻したいんだ。
きっと誰しも旅を始めるルーティンがある。たとえば散歩とカフェのような。出発前や初日の決まりごと。日常から非日常へ、旅モードに気持ちが切り替わる。
久しぶりの母と二人旅なのだから、美味しいものをたくさん食べて、美しいアートや音楽にふれよう。それが最初に思いついた、私のやりたいこと。
実際のところ、現地のホテルやカフェには無料WiFiがあるし、店や道を尋ねれば親切に教えてもらえるし、どうにかなることばかりだった。あんなにうろたえなくて良かったのだ。
16年ぶりの母娘のヨーロッパ旅のはじまりは落ち込んだが、あの「自由だし、大丈夫」という感覚をつかまえたくて、来年もどこかへ旅に出ようかと、懲りもせずに計画している。
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