【わたしの偏愛ストーリー】第1話:全力でIKEAを愛でてきた。25年間の「偏愛人生」に楽しく生きるヒントを探して
編集スタッフ 小林
誰にも言わないけれど、実は好きだったもの。想像するだけの、やってみたいこと。
たくさんあるのに「もういい大人だから」「ださいかも」とブレーキが働いて、心の奥底に、少しずつ埋もれていってしまうことがあります。
けれど今年30歳という節目を迎えて、ふと強烈に、思ったのです。
「もっと、思いきり、人生を楽しみたい!」
……でも一体、どうしたらいいんだろう? そこで思い浮かんだのが、何かを全力で愛でている「偏愛」があるひとでした。
とことん自分の好きを追求しているその姿は、思いきり日常を楽しみ切れているようで、密かに憧れがあったんです。
▲何かを好きになるのに理屈はないですね、と言い切るその姿には、気持ちがいいほどの清々しさを感じます〜
そこで今回「偏愛のひと」であり、立体造形家の森井ユカさんに会いに行きました。
昔から「圧倒的・偏愛人生」を過ごしてきたという森井さん。今もひたすらに情熱をそそいでいるのは、北欧・スウェーデン生まれの世界的家具メーカー「IKEA」だそう。
IKEAといえば、日本の郊外にも大きな店舗があり、数々の家具や雑貨が手頃な価格で手に入る、わたしたちにも馴染みのあるブランドです。
クラシコムスタッフにも愛用者はたくさんいますが、森井さんは驚くほど徹底的に、IKEAライフを楽しんでいる様子。一体どんな偏愛ストーリーがあるのでしょうか?
25年間、とどまることを知らないIKEA愛
森井さん:
「初めてIKEAの店舗に足を踏み入れたのは95年のこと。
実は当時、香港でアイドルの追っかけをしていまして。腰を据えて応援しようと、現地に部屋を借りて住むために家具を揃える必要があり、香港のIKEAに行きました。
IKEAの存在は知っていたのですが、当時まだ日本にはなく、実際に見るのはそれが初めて。そうしてお店に足を踏み入れた結果、見事に恋に落ちました(笑)」
▲スウェーデン限定カラーのショップバッグや、IKEA museum限定のバッグたち。今まで約10カ国の店舗などを巡ってきたそう。
森井さん:
「そこからは海外に行くたびに、その土地の店舗に必ず足を運び、気に入ったグッズを買って日本に持ち帰る、といった生活に。
気づけばその土地の限定商品や記念品を集めたり、現地の古本屋さんを巡って過去のカタログなどを集めたりすることが習慣になっていました。
そうして好きが高じた結果、ついに世界各地の店舗を取材し、IKEA愛をこれでもかと詰めこんだ『IKEA FAN BOOK』(河出書房新社)を出版することに。
今も引き続き、常に動向をチェックしつつ、新商品発表会に足を運んだり、IKEAでワークショップを行うなどの活動もしています」
なんとこの本がきっかけで、ついにIKEAが発行する季刊誌の中で公式に「IKEAファン」として、紹介された森井さん。
そんな森井さんの偏愛エピソードをお届けします。
「風呂場をIKEAのゴミ箱に合わせてデザイン」
▲左下の青いゴミ箱が「FIBBE(フタ付き容器)」。(現在は廃盤)
森井さん:
「もう廃盤になってしまったのですが、このゴミ箱が、好きで好きで! どうしても置きたくて、新居のバスルームをこのゴミ箱に似合うようにしたい、と思いつきました。最初のイメージを私が描き、それを元に設計士さんに設計していただいたんです。
このゴミ箱は上からみると正方形なので、壁や床は正方形のタイルを組み合わせて。色合いのバランスなども考えています。
また、ゴミ箱の印象的な深いブルーと同じ色のバスタブをどうしても入れたくて、日本中を探し狂いました……。
結局予算の関係で一番似ている色のものに落ち着きましたが、本当はもっと同じ色に近づけたかったという想いがありますね」
「各国のミートボールを食べ比べ大調査」
▲世界各国の店舗のミートボールを、味・盛り付け・コストパフォーマンスで星付けし、本に掲載している。
森井さん:
「公式の情報では一応レシピは同じということになっているのですが、国によって仕入れなどが異なるので、個人的には味が微妙に違うと思っていて。
そこで、世界のIKEA店舗のレストランのミートボールを食べ比べて、表をつくりました。
付け合わせのポテトが、茹でてある、揚げてある、潰してある、などの違いがあるのもお楽しみのひとつですね。
今までで個人的に一番美味しい!と思ったのは、スウェーデンにあるIKEAホテルのミートボール。本格的なお味が楽しめます。
ユニークさでいうと香港店のミートボールが一番かな。普通はレストランでお皿に乗ったものが出てくるのですが、ここは都市型店舗で面積も小さいので、ミートボールがカップに入ったコンパクトスタイルになっているんですよ」
「建設現場を遠くからそっと見守ってしまう」
森井さん:
「日本に初めてできたIKEAの店舗は、2006年にオープンした南船橋店。
大好きなIKEAが日本にできることがあまりにも嬉しくて、当時はもちろんのこと、実は今でも、まだ夢のような気持ちでいます……。
なのでそれ以来、国内に新店舗がオープンするとなったら、いつも初日に必ず訪れるようにしています。
店舗がオープンする前の建設現場に行って『ここにできるのか〜』と思いを馳せながら、その様子をそっと見守りに行くことも。
南船橋店の場合はオープン前に3回、現場に足を運びましたね。懐かしい、いい思い出です〜」
ずっと興味が尽きない、その理由は「人間味」にある?
▲船橋店の2周年記念グッズの風呂敷。北欧生まれのIKEAらしい、鮮やかで美しい色づかい。
買い物だけでなく、建設現場まで足を運ぶ森井さん。そこまでIKEAに惹きつけられるのは、一体何故なのでしょう。
森井さん:
「まずは前提として、こんなに素晴らしいデザインのものが、この価格で手に入るのか!というIKEA界の常識があります。
北欧では冬が長く、室内で過ごす時間が長いからこそ、暮らしの中で使うものには美しく飽きのこないものが求められます。その難易度の高いデザインを追求する国で作られたものは、やはり素晴らしいのですが、当然安くはありません。
けれどIKEAのすごいところは、それがいろいろな人の手に渡るように、コストを抑える工夫がデザインの隅々にまでなされていることです。
高いから良い、という概念を覆すようなデザイン。これは同じデザイナーとして考えさせられるものがあります」
▲回すと機能が変わる時計「KLOCKIS(クロッキス)」。温度計、アラーム、タイマーにもなる。これは福岡新宮店オープン記念限定カラー。
森井さん:
「その上で最も好きな点は、なんとも表現しづらいのですが、『人格』があるように感じるところでしょうか。
私にとってのIKEAとは『面白い、目が離せない、予想を裏切ってくる、スキがある』そういうものなんです。
例えば、つい目を奪われるカラフルな商品。次行ったときにはもう、同じ商品があるとは限らないドキドキ感。美しいだけでなく、くすっと笑ってしまうようなユニークなデザイン。売り場でのお泊まり会をひらいたり、ホテルや博物館をつくったりする意外性。
え、そんなことしちゃうの?なんて思うことは、しょっちゅうです」
▲「BEVISA」(現在は廃盤)。IKEAを代表する家具などを絵柄にしたカードゲーム。神経衰弱のように同じ2枚を当てるそう。
森井さん:
「チャーミングだとも、ユーモアがあるとも言えるけれど、その予測のできなさに人間味を感じます。
25年という年月を経て、今も好きでいつづけられているのは、まだまだ興味が尽きないから。
ずっと楽しませてくれて、驚かせてくれて、本当に魅力的なんです」
▲自宅の壁の一部を自分で塗って黒板に。昔のIKEAのカタログにあったアイデアを真似て。IKEAのチョークを使って、遊びに来た友人たちと自由に書いて楽しむそう。
お話をよく聞いていると「え?」「んんん!?」と驚いてしまうエピソードが、ここには書ききれない程たくさんありました。けれど森井さんにとっては、どれも至って自然なことのよう。
そんな圧倒的IKEAラバーの森井さんが、心から偏愛するIKEAアイテムって一体どんなものだろう?
そこで第2話では森井さんにとっての殿堂入り・おすすめアイテムをご紹介します。
(つづく)
※表記は全て取材時(2019年11月)時点のものです。
【写真】木村文平
もくじ
森井ユカ
立体造形家であり、雑貨コレクター。有限会社ユカデザイン代表。桑沢デザイン研究所で非常勤講師も務める。主な仕事は、小さいものを愛でることと作ること。粘土を使ったキャラクターデザイン、漫画のキャラの立体化、ねんど遊びセット「ねんDo!」の企画・デザインなどをしている。また世界各国を旅するうちに、日用雑貨や食品のパッケージデザインなどに魅了され、数々の「偏愛的」な書籍も執筆。主な人格形成は手塚治虫の漫画と東京12チャンネルの番組によるもの。
▽森井ユカさんの書籍は、こちらからご覧いただけます。
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