【365日、模様替え】第1話:好きなものを好きなだけ。ひとり暮らしの王国づくり

編集スタッフ 糸井

ひとり暮らしといえば「限られたスペースで、物量もおのずとミニマムに」というイメージが強いんです。けれどこの家を見ていると、そうでもないのかも?と思えます。

東京都、落ち着きのある商店街を抜けたところのマンションにひとり暮らしの、フォトグラファー・上原未嗣(うえはらみつぐ)さんのお宅です。

彼のSNSではしばしば新入り雑貨や、その模様替えの様子があげられているのですが、およそ34平米には椅子、椅子椅子、戸棚、また戸棚。一体こんなにどうやって? と思えるくらい、チャーミングな民芸品もオンパレード。

けれど、それで散漫という訳でもなく、すべてのものがあるべき場所に「姿勢よく」置かれているのが凄いところ。

聞けば「どんなものでも、一番心地よい場所を見つけてあげたいんです」、と息するように模様替え。365日、自分がもっとも住み良い場所をコツコツつくるって、大変だろうけどなんだかいいなぁと、じっくりとお話を聞いてみることにしました。

 

キッチンから寝室まで仕切りなし、のワンルーム

▲壁のすきまに飾るのは、お気に入りのパンフレット。大きな窓からはやわらかな光が十分に入り、深い焦げ茶色の家具を基調としたインテリアが静かに佇む。

「この家、変わったつくりなんです」。そう話す上原さん宅の間取りは、キッチン−リビング−寝室に仕切りがないのが特徴。

隅に立てば、インテリアを丸ごと見わたせる開放感。と同時に目に入ってくるのは、各部屋へのアプローチを阻むがごとく、部屋のまんなかに置いたちいさなキャビネットに、ランプ、グリーン。ちょっと不思議なレイアウトです。

上原さん:
「行き来するメインルートは、この椅子と棚のすきまですね。むかしは、動線の周りにあえてものを置くことはなかったんですけど、あからさまに動線が見えるのもなんだか部屋が寂しくて。せっかく毎日通るところだから、ワクワクできるといいかなと」

もともとここは親しい友人が住んでいた家で、彼の引越しの折、ぜひにと引き継ぐかたちで入居したんだとか。とても気に入っている間取りなんですね、と思いきや住むと悩みも出てくるもので、そこはいくつか工夫をして、レイアウトで補っていると上原さんは言います。

 

壁が少ないぶん、低い家具でたのしみます

▲フィリピンのルソン島からやってきた、木製のちいさな椅子。ちょこんと愛らしくも、持ってみると予想以上にずっしりくる重さ。

上原さん:
「この家、部屋の片側は『ほぼ押し入れ』、もう片側は『ほぼ窓』で、その上仕切りなしのワンルームなので、一般的な住宅に比べて『壁』が規格外に少ないんです。

何に困るかというと、壁づたいに置きたいような大きな家具が置けなくて……。戸棚も椅子も、きほん背丈の低いものを選ぶようになりました。

逆を言えば、せっかく抜けのある広々とした空間だからこそ、低い家具の方が部屋の端から端まで見通せるのが気持ちよくて。朝、ベッドから起きてぼーっと、キッチンまでのインテリアを眺めて1日がはじまります」

 

「旅館」からヒントを得た、窓際のレイアウト

▲カーテンは、生地屋さんで買った布でこしらえて。この窓の外には物干し竿があるので、洗濯の際に行き来できるくらいの最低限のスペースは確保。

窓前方の縦長スペースも、どんな風に生かそうか迷っていたといいます。

「大きな机を置いて、作業場にしていたこともありました。でも窓際ならではのよさって、たとえば旅館だと椅子とテーブルがあって、ほっとお茶するような『いこいの場』にもなるところだなと。

自宅でも、心やすまる場所に見立てられたら……。うちの場合は、テーブルでお茶を一服、というよりも、自分の好きなものを並べて『見て落ち着くスペース』を作ってみようと思ったんです」

▲以前のレイアウト。大きめのテーブルが2台、と今とは全く違うレイアウトなのもおもしろい。

▲ダイニングテーブル横の窓際も、グリーンや写真、かごを置いて活用中。

 

毎日模様替えをしたいから「物は増やし中」

「買ったものは、ぜんぶ見えるところに出しておきたくて」。その言葉通り、歩く先々にアイテムたち。

特にここ最近はものを一段と増やし中で、目的は、模様替えをもっとしやすくするため?だとか。

原さん:
「毎日、なにかしらのものを動かしたくなるのですが、その時、ものが少ないと模様替えがちょっと億劫になるというか。

たとえば少なめの物量で過ごしていて、『これ、あっちに置いてみたいな』と思い立ち、移動させたとする。きっと片方はひとつものが増えて完璧! になるのですが、片方は寂しくなることが多くって」

朝起きて、ダイニングテーブルで一息。そこから戸棚の上の雑貨たちを眺めていると「こっちに置いたらどうだろう」と手が伸びる。棚のように、ある程度サイズのあるものでも取材中、「ちょっと前はここに置いていたんだけどね」と言いながら、そのままヒョイっと持ち上げて、以前の位置に置いてみてくれる。模様替えに対する、なんてフットワークの軽さだろう。

「根が飽きっぽいんです。今のところすごく気に入っているレイアウトだとしても、明日になればすぐ動かしたくなったりするんですよね。笑」そんな上原さんのインテリア、まだまだ聞きたいことばかりです。

 

(つづく)

【写真】上原未嗣本人

もくじ

上原未嗣

フォトグラファー。1989年、山口県生まれ。25歳頃に思い立ち上京。その後渡仏をきっかけに写真を学ぶ。現在は、フリーランスとして活動中。当店の特集でも度々登場している写真たちはどれも美しく印象に残る。Instagramは@mitsuguuuから。


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