【夏の終わりの過ごし方】第1話:少しだけ物寂しい夏の終わりには、本を読む
編集スタッフ 奥村
今年もやってくる、夏の終わり。
この特集では、少しだけ寂しくてノスタルジックな、夏のある1日の風景を、全3話で切り取ります。
主人公は30歳の女性、会社勤めのひとり暮らし。趣味は料理と読書で、キャンプや山登りにも興味はあるけど、どちらかというとインドア派。
1話目では、そんな彼女が夏の終わりに手に取りたくなる本をご紹介します。
AM10:30
畳にごろんと寝ころんで
目が合った本を気ままにめくる
特別な予定のない、日曜日。
外はまだこれから暑くなりそうだし、出かける用事を考えるのもおっくうだ。
扇風機に当たりながらごろんと横になり、ふと目が合った本を開く。
『See You Tomorrow』
(NOBUE MIYAZAKI / ELVIS PRESS)
“ぼくは今日 何をする?” そんな問いかけから始まるこの本は、予定のない主人公が、今日をどんな風に過ごすか考えていくストーリー。
パッチワークのようなイラストが愛らしくて、のんびり眺めるのにちょうどいい。
私も、こんな風に今日を気ままに楽しめたらいいのにな。
時間を持て余すのが、いつの間にか苦手になっている自分に気づきながら、ページをめくる。
『愉快のしるし』
(永井宏 / 信陽堂)
雑誌『BRUTUS』などの編集にも関わっていた永井宏さんが、海辺の町で暮らす日々を綴ったエッセイ。
浜辺にTシャツ。太陽と犬。ビーチサンダル。
夏のかけらがたくさん散りばめられていて、この1冊が潮の匂いを運んでくれる。
今年は海に行けなかったな。
そういえば、冷蔵庫にスイカがあったっけ。
『Pendant 1957 – 2018』
(東野翠れん /VACANT)
『Pendant』は、スイカを食べながら眺めるのにぴったりの写真集だと思う。
カラフルなワンピースを着た少女に、高速道路沿いのダイナー。夕焼け。
どこか遠い国の夏の風景は、瑞々しくて、少し切なくて。暑さで火照った身体を、スイカみたいに冷ましてくれる。
『かわいい夫』
(山崎ナオコーラ / 夏葉社)
山崎ナオコーラさんが、書店員の夫との暮らしを綴ったエッセイ。
読んでいたら思い出したのは、この間恋人とした、小さなやりとりのこと。
食べ終わったスイカの種を少しだけとっておいて、ベランダの隅に植えていた彼。
芽なんて生えてこないよと言ったら、「いつかスイカの実がなるかもしれないよ」と笑ってた。
いま何してるかな。
今日はひとりがいいけれど、思い出すとちょっと会いたくもなる。
『甘い、甘い、甘くて甘い』
(服部みれい / エムエム・ブックス)
こんな風にひとりで家にいるとき、時々ふっと寂しさに襲われることがある。
人恋しさとは少しちがって、もっと奥深く、生きてることが寂しい感じ。
そんな時は、詩を開く。服部みれいさんの言葉は、この気持ちに寄り添ってくれる気がするから。
寂しい気持ちはたぶん、自由だという気持ちともどこか似ていて。
だからきっと大丈夫。この本を読むと、そんな風に思える。
===
夏の終わりに、読みたい5冊
選んでくださったのは
書店「栞日」店主・菊地 徹さん
菊地 徹(きくち とおる)
長野県松本市にある書店兼喫茶「栞日(sioribi)」店主。書店と喫茶を営む傍ら、本を楽しむイベントなども定期的に主催する。HPはhttps://sioribi.jp/
菊地さんの選書コメント:
「夏の終わりの休日。せっかくゆっくり部屋で過ごせるのなら、
どのページを開いて眺めてもよくて、
【撮影】濱津和貴
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