【45歳のじゆう帖】母のこと

ビューティライターAYANA

若くして私を産んだ母

母は24歳のときに私を産んだと記憶しています。

38歳で出産した私からすると、それだけで尊敬してしまいますが、若いのでそこまで母娘の世代ギャップがなく、親子の仲はいいほうなのではないかと思います。小学生の頃から矢野顕子さんや井上陽水さんのコンサートに連れて行かれ、りぼんやなかよしなどの漫画も一緒に読んでいました。

母は専業主婦です。本人は仕事をしたかったそうなのですが、私の出産や母親(私の祖母)の入院などが重なり、結局タイミングを逃したまま。勉強好きな人で、主婦業のかたわらでスペイン語や韓国語、ユング心理学、万葉集などいつも何かに取り組んで忙しくしているイメージがあります。

吉本ばななさんや茨木のり子さん、谷川俊太郎さんや、漫画家の大島弓子さん、山岸涼子さんなどの存在は母からの影響で知りました。

音楽や美術、映画などに興味があるという点で母と私は近いものがあるのですが、関心の持ち方や価値を感じる部分に結構なズレがあります。

また彼女はファッションや美容にまったくと言っていいほど興味がないため、一緒に旅行や買い物に行く仲良しの母娘、みたいな関係性ではありません。

それでもたとえば母のパート先で人間関係にトラブルがあったとか、私が学校でこんなことに遭遇したとか、あるいは世の中で起こる様々な事件について、「その人はこういう気持ちだったんじゃないか」みたいに話し合う時間が好きで、大学生のときはその時間が長引いて授業を1コマ飛ばしたりも、よくしていたと思います。

放任主義もいいところだった

母は私に制約を課す人ではありませんでした。勉強をしろとか、何時までに家に帰ってこいなどと言われたことはないし、やりたいことを好きにやったら?という姿勢の人。

これは一見いいことのように聞こえますが、「やりたいことをどう見つけるの?」とか「正解がわからない」と感じている子ども時代には結構つらいものがあります。よくわからないまま日々を生きていた、というのが正直なところです。

また、何かを教えてくれる(手本になる)よりも、一緒に考えよ!とか、へえ〜そういう考え方もあるんだ〜みたいなタイプの人で、あまり怒られた記憶がありません。怒りをぶつけられたことはありますが、諭されたり、注意されたことはほとんどないと思います。友達みたいな感じです。小さな私はそんな母を手本にするより他ありませんでしたが。

母はおそらくですが「自分に何かを言う資格はない」と考えていたのではないかと思います。自分の知っていることには限りがあるし、正解なんてわからないと。

母の当時の年齢を考えると(自分と比較するとあまりにも若いので)それもわかるなと思うのですが、あの時代に20代前半で出産するのは珍しいことではないので、やっぱり性格によるものなのかな。

父はとにかく忙しい人であまり相手をしてもらえなかったし、母もそんなわけで干渉してこないもいいところ。私は自分の価値観や身の振りかたが曖昧なまま育ち、社会人になり実家を出て、色々な価値観に触れ、失敗もたくさんしながら、現場で学んで身につけたよな、と実感しています。

私にないものを持っている人

しかし私は、塾に通いたいと言えば通わせてもらい、家計の心配などすることもなくぼんやりと生きることが許されていました。今思えばかなり恵まれた環境と言えるでしょう。

特に裕福な家庭でもなく(父は普通のサラリーマンでした)、郊外の新興住宅地にある小さなマンションに暮らすなかで、自分のことだけ考えて生きることができたのは、決して当たり前ではないと思いますし、それが可能だったのは母の気質によるところが大きいです。稼いでいたのは父だったとしても。

自由にやったらと私を放置していた母でしたが、たとえばやりたいことがあったときにそれを相談すれば、いつでも協力を惜しまなかったことでしょう。

実際離婚してシングルマザーになった当初は、母にかなり家のことを無理して手伝ってもらいましたし、昔から、何かを頼んだとしても、それを突っぱねることは基本的にない人です。

「自分に何かを言う資格はない」けれども「相談されたら親身になる」。私に限らず、母の友人関係を見ていても、つくづくそういう人だなぁと思います。損得とか、好き嫌いは関係なく。奉仕の心みたいなものとも少し違うんですが、我が強くないというのでしょうか。

私はそんな母に育てられたので、かつては自分で似たような気質を持っていると思っていました。「何を犠牲にしてもやりたいこと」などは特になく、自分に何かを言う資格はなく、誰かのサポートをするのが性に合っている、という。

しかし歳を重ねるほどに、ことごとくそうではない自分を自覚するようになってしまいました。

かつては母に対して「どうしてもっとこういう風に育ててくれなかったんだろう」なんて思うことも多かったものです。もっと教育したりサジェストして欲しいのに、放任すぎたんじゃないか、とか。

ですが今、我も欲も強い自分を自覚するほどに、母のその「こだわりのなさ」「手放せる感覚」を尊敬し、母のやりかたで私を親身にサポートしてくれていた、ということを自覚するのです。

 

【写真】本多康司

 

AYANA

ビューティライター。コラム、エッセイ、取材執筆、ブランドカタログなど、美容を切り口とした執筆業。過去に携わった化粧品メーカーにおける商品企画開発・店舗開発等の経験を活かし、ブランディング、商品開発などにも関わる。instagram:@tw0lipswithfang  http://www.ayana.tokyo/

 

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