【オープンな家】第4話:使うほどに味わいを増す。日用品店主が愛用する暮らしの道具
ライター 嶌陽子
神奈川県の二宮町で日用品の店「日用美」を営む浅川あや(あさかわ あや)さんの自宅インテリアを紹介する特集。
第1話のキッチン、第2話のリビング、第3話の収納法に続き、最終話の今回は、日用品店の店主としてさまざまなものに触れてきた浅川さんが実際に愛用している暮らしの道具を教えてもらいます。
ほっとひと息、
お茶時間を支える道具
竹製のコーヒードリッパーは岩手県ですず竹細工作りをしている橋本晶子さん作。
「これでコーヒーを淹れると、味がまろやかになるんですよ」と言いながら実際にコーヒーを淹れてくれた浅川さん。その言葉通り、深みがありつつ柔らかい味のコーヒーは格別のおいしさでした。ペーパーフィルターを敷いて使うので、お手入れも大変ではないそうです。
長野県で「半農半陶」の生活をしているという青木郁美さんによるカップアンドソーサーもお気に入り。
浅川さん:
「薄手だけど柔らかくて温かみのある雰囲気が好きです。実は彼女は大学の同級生なのですが、生き方も含めて尊敬しています」
北九州の門司で活躍する陶芸家、濱田正明さんによる粉引の湯呑は、もう20年ほど愛用中。
浅川さん:
「使いやすく、温もりがあって暮らしによくなじみます。気づくと手に取っている器です。使い込むほどに味が出てくるところも好きです」
食卓を彩る
食器や小物
使うほどに出てくる深いツヤや色の変化を味わうのが漆の醍醐味。福井県の「うるし工房錦壽」で家族と制作する山岸厚夫さんのお椀です。
浅川さん:
「左は2年前に同居を始めた両親のために買ったもの、右が長年使い続けているお椀です。比べると経年変化が分かりますよね。作り手の山岸さん自身が『ジーンズのような漆器』とおしゃっているように、本当に丈夫で気軽に扱えます。お手入れらしきものはほとんどしていません」
木工作家、堀宏治さんが作ったパンケース。堀さんの作品は浅川さんのお店でも度々取り扱っています。
浅川さん:
「これは堀さんに頼んで作ってもらったんです。彫刻刀で掘った面など、手仕事の跡にも愛着が湧きます。このパン入れには、パン以外にもお菓子などを入れたりして活躍させています」
▲階段下にあるアイロン台の上が定位置。
家事時間を
楽しくしてくれる道具
浅川さん:
「このほうきはよくしなるところが魅力。掃きやすいし、使っていて気持ちいいんです。また、ほうきの柄は竹のことが多いのですが、これはタモを使っているので重みがあって丈夫。長く使っても割れなさそうなところも気に入っています」
長野県松本市はかつてほうきの生産地として知られていたそう。現在、生産者はわずかになりましたが、そのひとつがこのほうきを作っている「米澤ほうき工房」だそうです。
引っ越して新しく買ったものはほとんどありませんでした
愛用の道具を見せてくださいとお願いすると「どれも大事だから……」と悩んでいた浅川さん。どの道具も、どの器も大切に使い続けているものばかりなのでしょう。
浅川さん:
「ものを選ぶ時の基準は、長く使い続けられかどうかです。
実は2年前にここに引っ越してきた時も、新しく買ったものってほとんどないんです。家自体、前からずっと使い続けているものが入るように設計しました。
使い込んでいくうちに色などが変化してきて味わいが出てくるのが嬉しい。これからも経年変化を楽しみながら長く使っていきたいですね」
誰もが過ごしやすいと感じる、やさしい住まいを作りたい
全4話にわたってお届けした浅川あやさんのお宅。開放的なつくりの家に長く使い続けてきた器や道具がしっくり馴染んでいて、道具を自分の手で育てる楽しみが伝わってきました。
そうした道具がおおらかに収納されていたのも印象的。「誰にでも開かれた家にしたい」「皆が過ごしやすいようにしたい」という浅川さんのやさしさが、この住まいに流れる心地よい空気を生み出しているように思えます。
家を建てたり、自然豊かな環境で暮らしたりすることはすぐには実現できないかもしれないけれど、「家族や友人がのびのびと過ごせる家」を作る工夫は今からでも少しずつ取り入れられそうです。
皆がくつろげて、自然と人が訪れたくなる家とは? 浅川さんの住まいから、そのヒントをたくさんもらった気がしました。
【写真】鍵岡龍門
もくじ
浅川あや
内装設計施工会社、インテリアショップなどを経て独立。神奈川県二宮町にて、全国各地からセレクトした日用品の店「日用美」を営む。
Instagram:@nichiyobi_asakawa
「日用美」Webサイト
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