【オープンな家】第2話:皆がのびのびと過ごせるように。工夫が詰まった家の仕組み

ライター 嶌陽子

神奈川県の二宮町の日用品店「日用美」店主、浅川あや(あさかわ あや)さんの自宅インテリアを紹介する特集。

家の中心となるキッチンを紹介した第1話に続き、第2話ではリビングや本棚スペースを見せてもらいます。さらに皆が過ごしやすい「オープンな家」にするための仕組みや工夫についても聞きました。

第1話から読む

 

変わりゆく窓の景色が楽しみなリビング

キッチンやダイニングとひと続きになっているリビングスペース。大きな窓が印象的です。

ソファは、2年前に引っ越した際に唯一新調した家具だというソファ。浅川さんはここに座ってパソコンで仕事をしたり、本を読んだりしているといいます。

▲北欧ヴィンテージ家具店『talo』で購入したハンス・J・ウェグナーのデイベッド。

浅川さん:
「何もしないで、ぼうっとしている時もありますよ。大きな窓から差し込む光が揺れている様子もきれいだなあと思いますし、外の景色も季節によってどんどん変わっていくんです。

鳥の声や風の音などもよく聞こえますね」

▲窓に面した古い机は息子の楽くんの勉強机。昨年のステイホーム期間中、自宅学習の時間が増えるうち、自然とここが定位置になった。

▲ソファ横にある白い壁にはプロジェクターで映像を投影できるようにした。夜はここで映画鑑賞を楽しむことも。

 

2階の廊下が趣味スペースとして活躍中

浅川さんの自宅は吹き抜けのある2階建て。2階には浅川さん夫婦と息子の寝室があります。その廊下の幅を広く取って壁一面の本棚を設け、ソファも置いてくつろげるスペースにしました。

本棚には浅川さん夫婦の本、DVD、CDのほか、思い出の品や写真、オブジェや小物などをバランスよく並べています。

浅川さん:
「壁一面の本棚は夫の希望。夜になるといそいそと上にあがってくつろいでいます。ドラムセットやギターも置いているので、夫と息子が一緒に演奏することもあるんですよ」

棚には小さなものも含め、多種多様なものが並んでいるものの、雑然とは見えないのが印象的でした。

浅川さん:
「小さなものを並べる時は自分の中でストーリーを作るクセがあって。先頭の子がリーダーで、その後ろにこの子たちが続いて……みたいな感じで(笑)。

ほかにも、息子が集めてきた石などをガラス瓶にまとめて入れて飾っていますね」

 

自然に囲まれて、外にいるように暮らしたかった

以前は鎌倉の街中で暮らしていた浅川さん。「もっと自然が豊かな場所で、自分たちらしく暮らしたい」と思い、移住を考え始めたといいます。

浅川さん:
「新たな拠点を探していた時、たまたま二宮を通りかかって気持ちのいい場所だと思ったんです。散策していた時に見つけたのがこの土地。広い雑木林の中に廃屋があって。ここだ!って夫婦でピンときたんです」

味わいのある建具やステンドグラスが残っていた洋館はリノベーションしてお店に。それとつながるように住まいを新築しました。

▲自宅とつながるお店「日用美」。元々建っていた古い洋館をリノベーションした。

▲お店の中。窓などの建具などは元々あったものを活用。

浅川さん:
「私はインテリアの勉強や内装設計の仕事をしたこともあるし、夫は一級建築士。昔から、2人で “空想の設計図” を描くのが趣味だったんです。今回建てた家も夫婦2人で設計しました。

夫と私、それぞれ譲れない希望があったんです。私は『外にいるように暮らしたい』ということ、夫は薪ストーブと壁一面の本棚、映画を見るための大きな白い壁面がほしいということでした」

そうしてできあがった新しい住まいは、夫婦の希望をまるごと実現しているように見えます。何より印象的なのは窓の多さと大きさ。浅川さんの言葉通り、庭とひと続きになっていて、外で暮らしているような感覚になるのです。

▲2階廊下から見た風景。「我が家の窓にはカーテンをつけていないんです」と浅川さん。思わず深呼吸したくなるような開放感。

浅川さん:
「自然の中で暮らすようになって、驚いたこともたくさんありました。ムカデなどの虫がたくさん家の中に入ってきますし、洗濯物を干そうと思ったらベランダに猿がいて目があったこともありました。

でも虫には少しずつ慣れてきたし、自然の中で暮らすってそういうことかなあって」

浅川さん:
「住まいに関してこれからしようと思っていることはまだたくさんあります。本棚に可動式のはしごをつけたいと思っているし、庭ももっと整えたい。時間をかけてさらに住み心地をよくしていきたいですね」

 

皆が気兼ねなく過ごせるようにと考えた、家のつくりや仕組み

さまざまな人が訪れるという浅川さんの家。初対面でも緊張せずに話せる浅川さんの人柄はもちろん、おおらかに過ごしてほしいという思いで作られた住まいに多くの人が惹きつけられるのでしょう。

浅川さん:
「ダイニングやキッチン、テラスからお風呂場までつながる部分の床は土間にしました。汚れが落としやすいので、子どもたちが泥だらけで外から入ってきても気にしなくてすむでしょう。

暖炉を置いた床も土間です。これだと灰などの掃除もすごく楽なんです」

浅川さん:
「誰もが立ち寄りやすい、開かれた家にしたいから、何かを強要したくないなと思っています。『ここを汚さないで』『そのスペースに行ってはだめ』などと言っていたら、みんなくつろげないでしょう。

それよりも、皆が気兼ねなく過ごせるような家のつくりや仕組みを考えたいんです」

▲「家族や遊びに来た人がいつでも自由に飲めるように」と、キッチンに毎日置いてあるお茶が入ったポットと湯呑みセット。

掃除のしやすさも含め、誰もがのびやかに過ごせるように考え抜かれて作られたことを知り、この家の気持ち良さの理由が分かったような気がしました。

次回はそんな浅川さんの考えが息づく収納法を見せてもらいます。

 

【写真】鍵岡龍門

 

もくじ

 

浅川あや

内装設計施工会社、インテリアショップなどを経て独立。神奈川県二宮町にて、全国各地からセレクトした日用品の店「日用美」を営む。
Instagram:@nichiyobi_asakawa
「日用美」Webサイト


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