【あこがれの人】第1話:シルバーヘアが素敵な50代。チャーミングに歳を重ねているあの人は、どんな人生を送ってきたの?
編集スタッフ 寿山
仕事でいろいろな方とご一緒するなかで「あんな風に歳を重ねられたらいいなあ」と、思わずあこがれてしまう、素敵な大人に出会うことがあります。
今日お話を伺うモデルの青木沙織里(あおき さをり)さんも、まさにそんなあこがれの存在。
きっかけは当店のオリジナルアイテムとして、はじめてブラックフォーマルを発売したときのこと。幅広い年代の方に着ていただけたらと、大人世代のモデルさんを起用したご縁で、お仕事をご一緒するように。
笑顔がとってもチャーミングで、いつも飾らず自然体。艶やかなシルバーヘアが魅力的で、プライベートでも好きな服を自由に着こなす姿が、なんだかすごく楽しそうなのです。
50歳を目前に白髪染めをやめてシルバーヘアにしてからは、ますますおしゃれが楽しくなったと話す青木さんに、おしゃれの話や仕事のこと、変化する体との向き合い方など、ざっくばらんにお話を伺います。
1話目では、まずはモデルになったきっかけや人生の転機となった出来事についてお聞きしました。
ただただファッションが好きで。自立のために選んだモデルの道
青木さんがモデルになったのは19歳の頃。山口県で生まれ育ち、高校卒業後にとある雑誌のオーディションに応募したことがきっかけでした。
青木さん:
「とにかくファッションが好きで、何でもいいから服に関わる仕事がしたいと思っていました。業界のことも何も知らないまま、あるファッション誌のオーディションに応募したんです。年齢がネックで落選してしまいましたが、事務所の方が声をかけてくれて、上京しませんか?と誘っていただきました。
でも家族に協力は得られなかったので、事務所に引越し費用などを前借りして、モデルとして働きはじめることにしました。
10代で何もわかっていなかったけれど、自立して働きたいという意欲だけは人一倍あったんです」
夢にむかってスタートを切った青木さん。ところが、当時のモデルは170cm以上などの高身長が当たり前という時代。166cmの青木さんは、なかなかファッションページの仕事がもらえなかったそう。
青木さん:
「全身で写る仕事が本当に少なくて、半身とか座ったポーズばかり。できることは何でもやろうと、着物のモデルやカップル役に花嫁役など、自分の身長を生かせる役を幅広くやらせていただきました。
スタジオで海に潜って泳いでるようなシーンをとる撮影など、ちょっと風変わりな現場もいろいろと経験しましたが、どんな仕事でも引き受けたものは前向きに取り組みたくて、その場を楽しみながらやってきました」
おしゃれは無理なく。パリジェンヌに教わったコーデの楽しみ方
▲蚤の市で買い集めたアンティーク雑貨は、今も大切に愛用している。
モデルとしてキャリアを積むなかで、25歳のときに転機が訪れます。
青木さん:
「結婚を機に、少し休暇をとってパリに行くことになりました。当時の夫がカメラマンで、街中でスナップ写真など撮っていたら、日本人のコーディネーターと知り合いました。そのご縁で、いつの間にか現地で仕事もするようになって、私も日本人モデルとしてたまに働きながら2年ほどパリで暮らしました。
パリのマダムがとにかくおしゃれで、着こなしが素敵だったんです。Tシャツとジーンズにさりげなくスカーフを合わせていたり、無理しておしゃれを頑張っている感じは一切なくて、今の言葉でいうとこなれた感じにまとめていました。
パリジェンヌがマルシェバッグ を持って颯爽と街を歩く姿に憧れて、蚤の市でわたしもマルシェバッグを買いました。それ以来カゴが大好きで、ふだんのコーディネートでもよく合わせています」
“いまの自分” に抗わない
20代後半で帰国した青木さん。なんと渡仏前と比べて8kgも太ってしまっていたのだとか。
青木さん:
「パリで暮らしていたアパートが、町で1番バゲットが美味しい店のすぐ近くで。反対側には町で2番の店があって(笑)。外側はパリッとして中はもっちりしとしたバゲットがあんまり美味しいものだから、もう毎朝のように買って食べていたんです。
帰国後はずっとマネージャーに減量するように言われていたのですが、結局半分ほどしか落ちなくて。でも私、根がポジティブなので『お母さん役をやったらいいかも』とか前向きに捉えていました」
30歳を目前にして、ちょうどモデルとしても節目の時期。30歳前後では『お母さん役はもう少し先かな』という空気があるなか、青木さんはお母さん役でも求められたら「やります」と二つ返事。人からそう見えるなら、全然OK。当時から、歳を重ねることも自然と受け入れ、無理に抗わずやってきたといいます。
「無理をしない」「受け入れる」のルーツ
歳を重ねると、さまざまな変化に向き合う場面があります。受け入れつつも葛藤することはないのでしょうか?
青木さん:
「もちろん、やれることはやりますよ。セルフケアやスキンケアなど、無理なくできる範囲で努力はしますが、抗う気持ちはないというか。
わたし訳あって3歳から親と離れて暮らしていて、祖母に育てられたんです。明治生まれの祖母は、とにかく厳しい人でした。小さい頃から私も働き手の1人として、掃除に洗濯、あらゆる家事を教えこまれて、家の仕事があるからと部活も辞めさせられたり。
人生どうにもならないこと、仕方のないことって沢山ありますよね。それが身に染みて分かっているからこそ、まずは受け入れるんです。全部受け入れないことには、うまくはいかないですから」
幼少期、青木さんの助けとなったのがユーモアでした。
青木さん:
「厳しく育てられたからこそ、想像力が養われたといいますか。山盛りの洗濯物をたたみながら、1人でクリーニング屋さんごっこをしたり。夢をみることや空想も好きで、家を出たらあれがしたい、これがしたいとか、ポジティブに考えるようになったり。無理はしないとか、受け入れようという考えも含めて、大変だったからこそ得たものも大きい気がします」
チャーミングな笑顔の向こうに、しなやかな強さも携えている。新たな一面を知ることで、ますます青木さんのことが好きになってしまいました。
つづく2話目では、40代の転機となったシルバーヘアにするきっかけや、変化する体との向き合い方など詳しく伺います。
【写真】鍵岡龍門(2枚目以外)、清水奈緒(2枚目)
もくじ
青木沙織里
19歳よりモデルを始め「nonno」などの雑誌、CM等を中心に活動。カフェ巡りとあんこが大好き。趣味はキックボクシング、ピラティス、陶芸、バッグ制作、おばキャン(モデル仲間とのキャンプ)など。Instagramは「@blue_record365」にて、日々のコーディネートをアップ
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