【スタッフの本棚】第5話:人生初の大きな買いもの。そこは自分の “今” が反映される場所に(スタッフ津田編)

編集スタッフ 松田

インテリアの一部としても、そしてその中身も気になる「本棚」という存在。誰かの家を訪ねたとき、じっくりのぞいてしまう一角でもあるのではないでしょうか。

本棚の持ち主のことをより深く知れるような気がしたり、共通して好きな本を見つけた時には嬉しくなったり。

小説、エッセイ、雑誌に漫画、アートブックやビジネス書、そして絵本。ジャンルも形もさまざまな本の居場所からは、並べ方ひとつとっても、その人らしさが垣間見えるような気がします。

この連載では、不定期でスタッフ宅にお邪魔し、本棚まわりのインテリアや収納で工夫していること、読書習慣や大切にしている本など、「本棚」にまつわるアレコレについて、根掘り葉掘りきいていきます。

第5回は、スタッフ津田の本棚です。

 


#05
スタッフ津田の本棚


当店の読み物の編集や制作を担当している津田は、今年でちょうど入社10年になるスタッフです。

入社当時から、わたしの先輩でもある津田。彼女が関心を抱くものは、暮らしまわりに留まらず、インドアなものからアウトドアまで実に多岐にわたります。

ジャンル問わずいろんな物事についてアンテナを張っていて(ビールはどの銘柄が一番好きかという話から、最新のSF映画の話、深海生物のロマンの話、近頃は釣りにハマっているそう)、津田とのおしゃべりにはいつも未知の世界との出会いがあり、面白くて楽しいのです。

▲訪れるたびに少しずつ増えている気がする、ユニークなミニフィギュアたち

そんな津田はどんなふうに本を楽しんでいるのでしょうか。自宅にお邪魔して覗かせてもらいました。

 

人生初の大きな買い物は、この本棚でした

まずリビングの中心にあったのは、5年ほど前に清水の舞台から飛び降りるつもりで買ったという、北欧ヴィンテージの本棚。

津田:
「この本棚は吉祥寺にある、大好きな北欧ヴィンテージの家具を扱うお店で購入しました。特に本棚を探していたわけではなかったのですが、たまたまネットショップで見かけて、その佇まいに一目惚れしたんです。

家具では人生で初めてというぐらい、大きな買い物だったので少し分不相応かなと悩んだのですが、店長の佐藤に写真を見せて、 “ヴィンテージはほんとうに出会いだから、これは決めてもいいのでは!” とお墨付きをもらって。

海外旅行するのと同じぐらいだし、毎日家の中でこれからずっと目にするものなんだから……という理屈で、えいや!と清水買いしました」

▲シンプルなつくりで、木の色味と脚がついているところが特にお気に入りだそう

津田:
「当時はサイズや収納量まで、まったく深く考えていなかったんです。とにかく好きで家に置きたいの一心で(笑)。

この本棚を買う前は、モノも本もあまり増やさないようにしていたなって思います。でも読み終わった本でも積ん読の本でも部屋に置いておくと、知らず知らずのうちに影響されることがあるんです。それってかけがえがないこと。そういう意味では、本との付き合い方がいっそう濃くなったように思います。

実際に5年使ってみて、この棚だけで本を収め切れず、別の小さなシェルフや寝室にも本を収納しているので、もっと拡張性の高いものにしてもよかったかもとも思うこともありますが、買った時の思い出も含めて愛おしい存在になっています」

▲棚上や本の埃をはらうのにぴったりな羊毛ダスターは愛用して10年。本棚の横にかけてスタンバイさせている

▲上段には文庫本、中段にはハードカバーの小説や随筆を並べ、未読や読みかけの本は手前側に。下段は図録や好きなフォトグラファーの写真集等が並ぶ

 

箱型シェルフやガチャ棚を活用して、家のあちこちに

▲学生時代に読んで取っておきたい本や、暮らしやインテリアまわりの本はこちらのコーナーに

ヴィンテージの本棚から溢れた本たちは、同じリビングの箱型シェルフや寝室のガチャ棚に収納するなど、家の中のちょっとしたスペースもうまく活用していました。


津田:
「寝室には備え付けのガチャ棚があって、本の収納にぴったりなんです。

雑誌のバックナンバーや漫画、仕事に直結する資料類などを収納しています」

津田:
「漫画はすぐに冊数が増えてしまうので、本当は紙の単行本で欲しいところをグッと我慢して、kindleやアプリなど電子書籍を活用するようにしています。近所に好きな古本屋さんがあって、読み終えたものは、定期的に持っていって整理するようにしています。

でもやっぱり、モノとしての紙の本も、新刊書店や古本屋へ行くのも好きなんですよねぇ。このマンションへ引っ越す際にもだいぶ減らしたつもりですが、だんだんと増えてきています」

 

自分の “今” が反映されるコーナー

津田:
「本棚のまわりには、自分の中で流行っているオブジェを飾っています。あとはグリーンや花、時計など。インテリアとしても楽しいようにしたいなと思って」

▲数冊は面出しをして、表紙の写真やイラストを楽しんでいるそう

津田:
「本棚はリビングで一番目に留まる場所で、今の自分の興味や流行りが反映されているコーナー。

本の並びも、気分に合わせて意識的に入れ替えています。まるで本屋さんになったみたいで楽しいし、集まった本の背表紙を眺めているだけでも視点が広がる気がして。夫の本もたくさん入ってるんですが、収納はおまかせという感じなので、勝手に並び替えて『この並びいいでしょ』とドヤ顔をしています(笑)」

 

家にいながら、新しい世界を知る

津田の本棚の中身は、食にまつわるエッセイやルポ、旅にまつわる自伝、歴史小説やノンフィンションもの、社会学に関するものからサブカルチャーまで、実に幅広い印象です。

津田:

「興味があるものは、まずはそのジャンルの本を手にすることが多いかもしれません。誰かにおすすめしてもらった本もよく読みます。家にいながら、新しい世界のことを知ることができるって贅沢で幸せなことだなと思います。

ちなみに最近読んで面白かったのは、サニー・ルーニーの『カバセーションズ・ウィズ・フレンズ』。外国文学コーナーで見つけ、訳者の山崎まどかさんが好きなので手に取りました。最初の数行を読んで「バー」「詩」「写真」と好きな名詞が出てきたのと、訳者あとがきに大好きな映画作家のグレタ・カーヴィグの名前が挙げられていたので、良さそうだなと直感で買うことに。

恋愛にまつわる小説はあまり読んだことがなかったのですが、これは言葉選びや表現がすごく新鮮で、どの登場人物の感情も繊細でリアル。不思議とどの人物にも共感できる部分があり、一気に読み終えました」

▲アイルランドの作家、サリー・ルーニーのデビュー長篇。舞台はダブリン、さまざまなタイミングでその力関係が変わっていく男女4人の物語。『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』 サリー・ルーニー (著)、山崎まどか (訳)/早川書房

津田:
「あとはSF小説の三体。これはもともと夫が読んでいたものですが、すっかり私もハマってしまって。異星人との遭遇を描くというテーマ自体は目新しい感じはないのに、展開が面白くて……。続きが気になり、ぐいぐい読み進めてしまいます。

何巻も出ていて分厚いので読むのは体力が要りますが、オススメです!」

▲劉慈欣による長編SF小説。『三体』劉 慈欣(著)/早川書房

最後に、津田にとっての大切な本を聞いてみました。

 


小学生のときに
初めて自分で買った本


・『キッチンへおいでよ』 小林深雪/講談社
・『ランチはいかが』 小林深雪/講談社

津田:
「これは、たしか小学生ぐらいのときに初めて自分で買った2冊です。

小説の中に登場するお菓子や料理のレシピとエッセイが載っているのですが、カラフルな写真も可愛くてページを眺めてうっとりしたり、実際に作ったり、自作の『レシピノート』へ書き写したり。

今も食にまつわる本は大好き。その世界を開いてくれたのがこの2冊です」

 


詩の面白さを教えてもらった本


・『世界はうつくしいと』長田弘/みすず書房
・『食卓一期一会』長田弘/角川春樹事務所

津田:
「これまで、詩ってどんなふうに読むのがいいか、正直わからなかった分野でした。長田さんの詩を読んで初めてその魅力に引き込まれました。

飾らず、かっこつけず。緩やかだけど、味わい深い。長田さんが日常の中で感じた、本当のことだけが書いてある。頭がいっぱいになったときや迷った時に読みたい、そんな詩集です」

******

年齢を重ねたり、いろんな人と出会ったりするなかで、興味の先はどんどん変わっていくもの。一方で、幼い頃から変わらずどこか同じ軸で繋がっている好きなモノや世界もあって。津田と本の関わり方をみて、まさに本の背の並びにはそのことが表れているから、面白いのだなぁと改めて感じました。

さて、次はどのスタッフの本棚をのぞきましょうか。次回の更新も、どうぞお楽しみに。

 

【写真】メグミ


 

もくじ

 


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