【会話の楽しみかた】前編:いい時間を過ごせたなら。ラジオパーソナリティー・クリス智子さんが大切にしていること
編集スタッフ 野村
久しぶりに会う友人との時間や、仕事先でたまに会う人たちとの時間。
一言二言話をして、うまく会話が続かなくて沈黙が流れてしまうような時、相手を気まずくさせていないかなと不安になることがあります。
そんな私ですが、ラジオ番組を聞くのが好きで、中でもクリス智子さんがパーソナリティーを務める「GOOD NEIGHBORS」のトークを楽しみにしています。日頃リスナーとして気楽に聞いていたけれど、あんなふうに話せたら楽しいだろうなぁと思うのです。
というのも、番組でのクリスさんのトーク、特にゲストの方との会話は、へんな淀みがなくて、いつも楽しそうな雰囲気に包まれています。
クリスさんの相槌の打ち方や会話の広げ方が心地よく、聞いているとこちらも面白くて、きっとその時間は「いい時間」だったのだろうなと感じられます。
人と会って「いい時間だったね」と言える自分に近づけたなら。今回はそんな悩みを相談するようなつもりで、クリスさんのご自宅を訪ね、インタビューをしてきました。
悩んでいても、いいじゃないですか
うまく会話を続けられないことで相手に気まずい思いをさせていないだろうか。そんな話からインタビューを始めると、クリスさんは私の話にうんうんと頷きながら、一言かけてくれました。
クリスさん:
「それは、ちゃんとしようと思えているってことじゃないですか。そのままでいいんじゃないでしょうか。
相手と向き合いたいと思っている気持ちは、きっと相手に伝わっていると思いますよ」
自分の悩みがふっと軽くなるような言葉でした。悩みだと思っていたことには、いいと思える一面もあったのかと、私は少しの安心感に包まれた気持ちがしたのです。
そんな一言をすぐにかけてくれたクリスさんが、いつもの会話やトークの中ではどんなことを大切にしているのかが気になってきました。
まずは相手のことをよく見るのが大切
クリスさん:
「んー、どんなことを大切にしているかなぁ。番組では、まず目の前のゲストの方が気持ちよく話していただくことが大事だ、と思っています。
最初にちょっと会ってご挨拶をして、1分ほど話すだけで、この方はたくさんお話をする方なんだ、はたまた少しゆっくり考えてから話す方なんだ、といったことがなんとなく感じられるんです。ペースのヒントをつかむと言いますか。
さらに細かいところでは、私自身のペースで話すというより、来てくださったゲストの方のペースに、私が入らせてもらうという感じですかね。チューニングを軽くします」
クリスさん:
「お互いの波長を合わせるために、まず相手のことをよく見ることを大切にしています。
その方が面白いブローチをつけていたらその話をするかもしれないし、外をずっと見ていらしたらそのことについて聞いてみる。些細なことを、どれだけ自分がキャッチできるか、は会話の基本かもしれません。
動きも表情も全部、その人が出している言葉だと思うんです。だから声として出る言葉以外のものも拾うことがラジオパーソナリティーである私の仕事でもあるというか。
私がゲストに一番近いところにいるリスナーの代表だからこそ、その場でたくさん漏れ聞こえているものを、できるだけたくさん拾おう、と考えているのかな。改めて考えると、そう思います」
私はどう思うかな、と考えておく
クリスさん:
「相手のことをよく見るのと同じで、自分のことをよく見る、ということも大切にしていることです。
たとえば、相手の話をただ聞いているだけじゃなくて、自分が同じことを聞かれた場合はどう答えるかな、ということも考えておく。一方的な質問ではなく、話題の共有を心がけています。
自分なりのイメージがあると、相手の言葉に対して、『あ、そういうことなんだ』とか、その考え方は面白いなと思ったことに、自分なりの言葉で反応できます」
クリスさん:
「もし本を出版された方がお相手だったときには、その本を読んで自分なりの感想を持つと、自分らしい質問が生まれます。
私らしい質問から始まって、また相手が私に対しての答えを返してくれる。当たり前のことですが、それはとても大切にしていることです。
相手から予想外の答えが返ってきても、それもひとつの面白さ。ならば、と繋げていけばいいんだと思うんです。そこが、自分とはまた違う世界が見えるきっかけですもんね。
決まったことから少し外れたことって、案外みんな楽しいんですよ。ちょっと外れた質問をしたときに、その人の本質が見えるってこともありますし」
なんで緊張するのか、自分に聞いてみる
クリスさんが担当する番組では、初めましての方や誰もが知っていて会うだけでちょっと緊張してしまいそうな著名な方など、さまざまなゲストがやってきます。
そうした中でも、クリスさんはあくまで自然体。緊張しないために意識していることはあるのでしょうか。
クリスさん:
「もちろん、程よく緊張はしているんですけれど、緊張を意識しすぎない方が、相手といい話ができるなぁと思うことがたくさんあったんです。
そもそも、その場において、最優先すべきは、自分の緊張ではないなと」
クリスさん:
「私の場合は、緊張しないためにどうするかよりも、なんで自分が緊張するのか、自分が何に緊張しているのか、緊張の理由を考えるようにしています。
もし久しぶりに会う人との会話で何から話していいか分からないから緊張しちゃうなと思ったら、事前に何かひとつこれだけはという話を少し考えておくとか。
相手への質問だけではなくて、自分が気楽になるための話題もちょっと考えておく。それだけで自分の中の緊張に少し対処できるかもしれませんね」
会話は、どんな風に広がっていくか予想がつかないものだから、準備って何をどんな風にすればいいか分からない、と思っていました。
でもクリスさんとお話をしてみて、相手への質問だけじゃなく、私だとどう答えるかもあわせて考えておく、緊張するときは、なぜそうなのかと考えてみる、そんな準備ができるだけで、何をすればいいのか分からないと思っていた時より、少し前進できそうだと感じられました。
後編でも、クリスさんがラジオのお仕事を長く続けてきたことで感じたことなど、引き続きお話を伺っていきます。
(つづく)
【写真】神ノ川智早
もくじ
クリス智子
大学卒業時に、東京のFMラジオ局 J-WAVE でナビゲーターデビュー。現在は、J-WAVE「GOOD NEIGHBORS」(月曜-木曜 13:00-16:00)のパーソナリティのほか、MC、ナレーション、トークイベント出演、また、エッセイ執筆、朗読、音楽、作詞なども行う。ハワイ、京都、フィラデルフィア、宮崎、横浜、東京と移り住みながら、現在は、海と山のある鎌倉にて生活。
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