【家具のオーダーメイドをしてみたら】後編:迷ったときはどう決める?オーダーのポイントを、プロにききました

編集スタッフ 糸井

ダイニングテーブルを探して半年。これだ!というものが見つからず諦めかけていた頃、家具のオーダーメイドという方法に興味がわきました。

そもそも賃貸暮らしの自分には身の丈が合わないものと決め込み、検討したこともないこと。オーダーメイドをしたあとで、好みが変わったら?引っ越し先で合わなかったら?とハードルはかなり高めです。

でも、もっと肩の力を抜いて、たのしく検討できる世界なのかもしれません。

この特集では、佐々木家具造形研究所の家具デザイナー・佐々木啓輔(ささきけいすけ)さんにお話を伺っています。

前編ではオーダーメイドの家具を手掛ける佐々木さんの仕事内容について。後編は、実際にオーダーをする際のポイントについて伺いました。前編はこちらから

 

佐々木家具造形研究所にオーダーするならば?

神奈川県の寺家町という、のどかな場所にある佐々木さんの工房。ここですべての家具を作っているそう。工房には製作途中の家具もあり、さっぱりとした木材の香りが鼻を抜けていきます。

早速、ダイニングテーブルをオーダーメイドするときに、浮かんでくる様々な質問をきいてみました。

 

Q:デザインや寸法が未定でも相談できる?
A:イメージするところから一緒に始めましょう


スタッフ糸井
「欲しい家具は決まっていても、具体的な家具のイメージが固まっていない。こんな場合、どのように相談できるのかが分からなくて。

少し奮発してでも、長く使い続けられるダイニングテーブルが欲しいと思っているのですが、現状の好みで決めたとき、将来の生活スタイルに合わなくなったらと思うと何も決まっていかないんです」

佐々木さん
 「一生ものになるかもしれないと思うと、買うのに勇気がいりますよね。すべてご自身で決められるお客様もいれば、漠然としている方ももちろんいますよ。

ちなみに、長くダイニングテーブルを探されているということですが、既製品のなかで迷われた点はどういったところだったのでしょう?」

スタッフ糸井
「好みもあやふやな状態で、決めていく軸をどこにしたらいいのかが分からなかったんです。

かたちにはこだわりがなく、長方形でもラウンド型でも部屋の面積を取りすぎないものだと嬉しいです。友人を家に呼ぶ機会もあまりないので、サイズは多分、そこまでいらないのかもと思っていて……」

佐々木さん
「かたちは、少数でも大人数でも融通が利きやすい、長方形タイプをオーダーする方が多いですよ。サイズはある程度長めにすると、家族構成が変わったときにも対応しやすいかと。

おすすめなのは、奥行きをちょっと狭くすること。大きなテーブルですと一般的には80〜90cmが多いですが、よく提案させていただいているのは80cm以下のものです。

日本のLDKは、テレビ台やソファを置くと、ダイニングの部分は狭くなりがち。そんなとき、長さはあれど奥行きが狭ければ、比較的広々と過ごせます」

▲長さ140cm、幅63cmのダイニングテーブル。

スタッフ糸井
「(奥行きの狭いテーブルを眺めてみて)たしかに圧迫感が少ない気がします。奥行きが狭い=パソコン作業用だと思っていたのですが、そんなこともないのですね。

座ってみると、意外と対面の人と近すぎることもなくて。なんだか絶妙に遠くてかしこまる感じもなくなったりと、気持ちからもリラックスしやすそうです」

佐々木さん
「2〜3人であればこのくらいで十分ですよ。5〜6人になっても、長さがあれば座れるので、来客時や、家族構成が変わっても大丈夫だと思います」

 

Q:好みはどう伝えたらいい?
A:部屋の写真や、お気に入りの家具の話でも◎


スタッフ糸井
「佐々木さんの家具にも、装飾に凝ったものやシンプルなものまであります。自分の部屋にはどんなタイプが合うだろうと悩むとき、どう決めていくのがいいのでしょうか」

佐々木さん
 「もしご用意できるのであれば、リアルなお部屋のお写真を見せてもらうとスムーズかもしれません。慣れている方は、『今の場所はこんな雰囲気なので、こういう家具が欲しいんです』と相談前にご用意くださって、そこから細かな仕様を決めていくんです。

美容師さんにヘアカットをしてもらうときって、SNSで見つけた参考写真や、過去にその担当の方が手掛けたヘアスタイルの写真を見せて相談したりするじゃないですか。そんなイメージですね」

スタッフ糸井
「インテリア全体の写真をお見せするのって、ちょっと自信がないんです……」

佐々木さん
「難しければ、いつか欲しい家具の写真、もしくはポスターや器でも。この作家さんが好きなんです、という趣味からでも、その器に合う家具の色は……と探りながら、暮らしに合った家具を作ることができるんです。

よく訪れるお店や、あのお店の雰囲気が好き、というのも参考になりますよ」

▲家具の打ち合わせ中には、本のなかの家具の雰囲気から要望が見つかることも多いそう。

 

Q:予算については?
A:範囲内で、できることを最大限に相談します


スタッフ糸井
「予算はどのように相談したらいいですか?」

佐々木さん
「木材の市場価値に照らし合わせながらこの家具はこの価格、という目安は決まっているのですが、やはりオーダーメイドとなると、値段がするものも。だからこそ、そこまで敷居を高く感じていただかなくていいようにとも思っていて。

たとえば、少し市場価値の低い木材を内部に使ったり、作業時間かかる装飾を省いてシンプルなデザインにしたり。各方面で、少しずつ予算を低く抑えられるところをお伝えして選んでいきます

▲家具の脚に彫り込みが施されているもの。手作業で加工するため、時間がかかる部分に。

スタッフ糸井
「値段が届かない=諦めるしかないと思っていましたが、そこから相談できることもあるんですね」

佐々木さん
「ここ数年、木材自体の値段もどんどん上がってきてはいるのですが、制作側としてうまく調整できたらと思っています。

何かを削ったからといって、オプションを外すというマイナスな印象ではないですよ。どちらが優れているというわけではなく、他の家具との相性だと思っているので、予算をみつつ、探っていきましょう」

 

Q:木の色味にも色々ありそうですが……
A:他の家具との合わせやすさ重視なら、おすすめがあります


スタッフ糸井
「部屋の主役になりうるテーブルは、その色味も迷います。賃貸ならではの悩みとして、今いる場所だけでなく、引っ越したときの壁や床色も気になって。周りの家具も買い替える可能性も高いです。

これまで既製品やヴィンテージを探す中でも、黄みがかった木や、赤茶色なものまで様々でしたが……

佐々木さん
「大きな家具は、その部屋のメインテーマにもなるので、色の話は大切ですね。

暗い色にすると目を引きやすく、重厚感も増すので、柔軟にバランスを取りたいのであれば、淡い色のテーブルにしておくといいかもしれません。

テーブルの下にラグや絨毯を敷くにも、軽めの色にしておいたほうが合わせやすいところも。ベースが軽い色なら、椅子や小物などで濃い色味のものも気軽に楽しめますし。

パートナーや夫婦の趣味が少し異なるときも、中和させる色味としておすすめしているんです」

▲淡い色のイメージはこのように。

スタッフ糸井
「佐々木さんの家具は、オーク(楢)という木材を使っているものが多いですが、淡いというか薄い色なのが印象的でした。オークのイメージというと、もっと黄みがかったものが多い印象で。経年変化も関係しているかもしれませんが、なにか違うんでしょうか? 」

佐々木さん
「基本的に、家具には仕上げ剤というコーティング作業をしていて、その種類にはウレタン塗装やオイルフィニッシュなどいくつかあり、僕がよく選ぶのがソープフィニッシュというものなんです。

名前の通り、石鹸の水溶液を塗り込むもので、もとの木の色をとどめやすいんですね。香りもよく、触り心地はほわほわとした、猫の背中のようなんですよ」

▲オーク材をソープフィニッシュで仕上げたもの。7年の経年変化を受けてほんのり黄みがかっているものの、自然な色に。

 

自分の部屋を少しずつ、お気に入りにするために

前後編で、オーダーメイドの家具についてききました。

やっぱり、自分の部屋がいまより少しでも好きな場所になるのは楽しい。安らげるホームインテリアを、一生かけて調えるための、オーダーメイドという方法をじっくりと検討できました。

正直、ダイニングテーブルはまだ決めきれない気も。でも「作りたいダイニングテーブルのイメージが明確になった」というよりも、「家具の捉え方がやわらかくなった」ことが自分には貴重でした。なんだか、肩の荷が色々と下りたんです。

実は、佐々木さんの工房で惹かれた家具が他にあり、そちらをお願いできないかなと相談しています。ちょっとした壁付けの棚や、姿見、部屋の仕切りに使えるパーテーション。あったらいいなと思っていたけど、そもそも選択肢が少なくて諦めていた小さめの家具も、オーダーメイドでなら迎えられることにワクワクしています。

いつかのためのダイニングテーブルは、もう少し気長に待ちながら。心の準備をしていきたいなと構想しています。

(おわり)

【写真】メグミ


もくじ

 

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佐々木啓輔

家具デザイナー。佐々木家具造形研究所を立ち上げ、神奈川県の寺家町に工房を構える。定期的に展示会を開く。家具の製作から、店舗への家具の一時貸出、ヴィンテージのメンテナンスなど様々手掛けている。Instagramは@research_institute_sasakiから。

 


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