【暮らしのみずうみ – 松本便り】最終話:いろんな気持ちと一緒に、ただ毎日を進めばいい。
ライター 桒原さやか
このひとには敵わないなあ、と思う人がいます。
そのひとりが、以前働いていた職場の上司。常にアイデアも豊富で、なにか一つ質問をすると、思ってもみないようなところから返事がきて、毎回なるほど!と膝を打つのです。
なによりも、そのひとは「つねに考えているひと」だったことを思い出します。それは、本当にありとあらゆることを。
実際はもちろんずっと考えているわけではないのですが、「考えるでもなく、考えている」というのでしょうか。「つねにアンテナを張っている状態」といった方が近いかもしれません。
きっと心の中に気になる事象がいくつもストックされていて、それに紐づく何かを見つけたら、ビビッと頭の中で繋がる様になっているんじゃないかと思います。
どれだけ気にかけて過ごしているか。
気持ちがそこに向いているのか。
この小さな積み重ねがいつしか深みになり、仕事はもちろん、毎日の暮らしぶりや考え方、さらにはその人自身を形作っていくものなんだと思い出させてくれるのです。
連載「暮らしのみずうみ」も、今回で最終回になりました。
このエッセイでは、日常の中で感じた違和感をそのままにせず、そのときの気持ちに耳を傾けて、自分なりの解決方法を探してみる、そんな様子を書かせてもらいました。
とはいっても、言葉にしてみると、気になることはどれもこれも恥ずかしいくらい小さなことばかり。
もともとせっかちな性格の私は、早く解決策を見出そうと、まずは自分の悩みに真正面から向き合ってみます。でも、実際のところ、しばらくうーんと考えてみても、いくら頭をひねってみても、すぐに答えが出ないことがほとんど。
むしろ、あっ!と閃くのは、何も考えていないときだったりします。たとえば、庭の草むしりをしているときだったり、友人と話しているときや本を読んでいるときだったり。
つまりこれって、あの人のように「アンテナを張っている状態」だったといえるのかもしれません。
悩みや違和感に真正面から向き合おうとすると、行き詰まって苦しくなることもあるけれど、今は「アンテナを張っている状態」「意識をしている状態」と捉えると、なんだか軽やかに感じる。
でもけっして、忘れてしまっているわけでもないし、自分の気持ちをなかったことにしているわけでもない。
その気持ちといっしょに、みずうみのように、ゆらゆら流れている感じというのでしょうか。
小さな淀みを見つけたら、まずはじっくりと観察してみる。それでも原因がわからなかったら、一度観察をやめる。そしてまた、流れにそっと乗ってみる。
すると、ふとした瞬間に、思いもよらないところから解決策を見つけられるような気がするのです。
うれしい気持ちも、悲しい気持ちも、イライラした気持ちも。そのとき、そのときに感じた、いろんな気持ちと一緒に、ただ毎日を進んでいけばいい。
これがこの連載を通して学んだことのひとつです。
「暮らしのみずうみ」がお店で公開されると、読者の方に届いているかな……とドキドキしながら、画面の向こうにあるひとつひとつの暮らしに想いを巡らせていました。
なによりも、みなさんから届くお便りが書く励みになっていました。改めて、この場を借りて感謝の気持ちを伝えさせてください。
一年間本当にありがとうございました!
またどこかでお会いできますように。
桒原さやか
ライター・エッセイスト。岐阜県出身。『北欧、暮らしの道具店』で、お客さま係として6年間働いていたスタッフ。退職後、ノルウェーにある北極圏の街、トロムソに住んでいた。現在は長野県松本市でスウェーデン人の夫と2歳と4歳の子どもの4人暮らし。
著書は2023年4月に発売の「北欧の日常、自分の暮らし- 居心地のいい場所は自分でつくる -」(ワニブックス)。その他、「北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし」(ワニブックス)、「家族が笑顔になる北欧流の暮らし方」(オレンジページ)がある。
instagram:@kuwabarasayaka
撮影:清水美由紀
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