【ベスト本&映画】後編:やっぱり映画が好きなんです。スタッフおすすめの映画9本をあつめました

編集スタッフ 野村

気づけば2024年の上半期が終わり、下半期に突入しました。半期の節目に、気になっていた本や、見ようと思っていた映画に手を伸ばしてみるのはいかがでしょうか。

この特集では、スタッフが2024年上半期に心に残った本と映画をご紹介します。

後編は、映画。コメディやラブストーリー、観ると心にあたたかいものが残るヒューマンドラマまで、スタッフおすすめの9作品をご紹介します。

前編の「おすすめ本」はこちら

 


まっすぐに、笑って観たい映画


©2024『カラオケ行こ!』製作委員会

「カラオケ行こ!」(2024年)

story:
組長主催のカラオケ大会に出場するヤクザの成田狂児。最下位にならないために中学校の合唱部の部長を務める岡聡実に教えを乞うことにする。

「和山やまさんの原作漫画がすごく好きで、映画化されたこちらも最高でした。原作を未読の妻と一緒に観て、僕がオチの前から笑ってしまうものだから、静かに観て、と怒られながら観ました」(スタッフ高尾)

「姉が激しくハマって、おすすめされて観に行きました。和山やまさんの漫画は大好きで全て読んでいるのですが、映画は映画の良さがきちんとあったのも良くて、原作を知っているからと思いこまず、観てよかった〜と思いました。監督と脚本家の方も好きな作品がたくさんある方なので、またお気に入りの作品が増えました」(スタッフ市原)

『カラオケ行こ!』
Blu-ray&DVD 2024年8月7日発売
価格:Blu-ray豪華版(特典DVD付)8,580円(税込) DVD通常版 4,400円(税込)

発売・販売元:KADOKAWA
©2024『カラオケ行こ!』製作委員会

 

『さかなのこ』(2022年)

story:
魚が大好きすぎる小学生のミー坊。他の子とちょっと違うと心配する父親とは対照的に、魚が好きなことを応援し続けてくれる母親に見守られ育つ。やがて高校生になり、魚好きにはますます磨きがかかる。

「出てくる登場人物がみんな優しく、可愛くて。自分の好きなものを好きと真っ直ぐ言えるのって、なんて難しくて、なんて素敵なことなんだろうと、とにかく元気をもらえる映画です。のんさん演じる主人公のミー坊はもちろんなのですが、同級生のヤンキー集団が愛おしくて大好きです。思わずクスッと笑ってしまうはず。大人も子どももみんなで楽しく安心してみられる、日曜日や夏休みにも似合う映画だなと思います」(スタッフ藤波)

『さかなのこ』
Blu-ray&DVD発売中、デジタル配信中
©2022「さかなのこ」製作委員会

 


自分にとって、大切なことを振り返りたい時に


「PERFECT DAYS」(2023年)

story:
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。ある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。

「主人公の平山が、毎朝、出勤前に空を見上げるのですが、そのときの表情がとても印象的でした。毎朝決まった時間に起きて、トイレ掃除の仕事をこなし、ルーティーンを終えて床に着くという、一見すると、淡々と同じことを繰り返している日々というふうにも見えるのですが、平山はまるで毎朝人生がリセットされるかのように、新鮮な気持ちで朝の空を見上げたり、植物を観察したり、繰り返す日常と真摯に向き合っていて。通勤の時間も、寝る前のひとときも、大切な人生の一部。自分がどれだけ『今』を大切にできているか?ということを深く考えた作品でした」(スタッフ郡)

「ひとりで映画館へ行って観た映画です。映画の帰り道、いつも通る街中を歩くとき、まるで映画の続きのような気持ちになりました。聞こえてくる音が全然違って驚きました。バス、雨上がりでタイヤが滑る音、子供の話声、おじさんたちの昔話……と、何層にもなって聞こえて、映画館で耳が研ぎ澄まされたような気がしました。世界は音で溢れている、そしてそれは心地よい音、と思わずスマホのメモに残しました」(スタッフ齋藤)

『PERFECT DAYS』
UHD/Blu-ray/DVD 2024年7月26日発売
発売元:ビターズ・エンド
販売元・豪華版BOX発売協力:TCエンタテインメント
発売協力:スカーレット

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

 

「Here」(2023年)

story:
ブリュッセルに住む建設労働者のシュテファンは、アパートを引き払い故郷のルーマニアに帰国するか悩んでいる。ある日、森を散歩中に以前レストランで出会った女性のシュシュと再会。そこで初めて彼女が苔類の研究者であること知る。足元に広がる多様で親密な世界で2人の心はゆっくりとつながってゆく。

「よく訪れる映画館で予告編を目にしたのがきっかけで、絶対観に行こうと決めた映画でした。しっとりと重厚な音楽と、鮮やかにこけむした森の映像がとにかく美しくて。土と木の枝を踏み締める音や木々から漏れる光、ぐつぐつに煮立つスープ、名前も知らない誰かと心を通わせることの尊さ。全編を通してとっても静かな映画ですが、まばたきしたら消えてしまいそうな、儚くて愛おしい瞬間がじっくり描かれていた気がします。忙しい毎日や情報社会に疲れてしまったとき、自分にとって大事なことってなんだっけ?と迷ったときに見返したいなあと思っています」(スタッフ藤波)

『Here』
©️ Quetzalcoatl

 


じんわり切ない気持ちを大切にしたくなる映画


「パスト ライブス/再会」(2024年)

story:
ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。ふたりはお互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいたふたりは、オンラインで再会を果たし、お互いを想いながらもすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。24年ぶりにやっとめぐり逢えたふたりの再会の7日間。ふたりが選ぶ、運命とは──。

「アカデミー賞にノミネートされていて気になっていた映画でした。SNSで見かけたレビューも後押しとなって、映画館で鑑賞しました。ラストシーンが印象に残っているのですが、パンフレットのインタビューに『耐えられないほど長くて、同時にものすごく短く感じるように描きたかった』という監督の思いが書かれてあって、まさに!と感じました。じわじわと愛や縁を感じられる作品です」(スタッフ井戸)

『パスト ライブス/再会』
全国公開中(現在上映中の劇場の情報はこちら
2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
配給:ハピネットファントム・スタジオ

 


濃密な作品に浸りたい時には


「落下の解剖学」(2024年)

story:
人里離れた雪山の山荘で、男が転落死した。はじめは事故と思われたが、次第にベストセラー作家である妻サンドラに殺人容疑が向けられる。現場に居合わせたのは、視覚障がいのある11歳の息子だけ。証人や検事により、夫婦の秘密や嘘が暴露され、登場人物の数だけ<真実>が現れるが──。

「ほぼ法廷と事件現場=雪原の家という舞台が二つのみなのに、超大作を観た時のような放心状態でエンドロールを眺めました。法廷で明らかになっていく家族の暗部には、ときどき『そこまで言わなくても……』と目を逸らしたくなったし、夫婦の喧嘩シーンも圧巻で、とにかくすごい映画と出合ってしまったという感覚です」(スタッフ津田)

「非常に上質なミステリーでした。ハラハラというより、真実とは?正義とは?と考えさせられる映画です。スヌープという犬がとんでもない名演技を見せてくれるのですが、どうやらカンヌ国際映画際のパルム・ドッグ賞を受賞したそうです」(スタッフ藤波)

『落下の解剖学』
Blu-ray&DVD
2024年9月4日発売
発売・販売元:ギャガ
©2023 L.F.P. – Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhône‐Alpes Cinéma

 


青春時代を、そっと受け止めてくれる映画


「14歳の栞」(2021年)

story:
とある中学校の2年6組にカメラを据え、その3学期を完全密着する。クラスの生徒35人にカメラが向けられ、それぞれの物語が丁寧に語られる。そこには、主人公や壮大なストーリーは無く、平凡な日常を過ごすごく普通の少年少女たちの姿が映される。

「ある中学校の1クラスの生徒たち全員に密着したドキュメンタリー映画。バレンタインのリアルなやりとりは、自分も14歳に戻ったように胸が騒ぎました(笑)同級生に恋をしたり、部活に打ち込んだり、その一方でクラスでの立ち位置を常に気にしていたり。あ〜自分もこの時期にこんなこと考えてたなぁ……とか、大人になっても意外と根っこの部分は変わらないんだなぁ……と気付かされました。大人とも子どもともとれる曖昧な時期を、クラスの一員になったような感覚で追体験できます。恥ずかしくて蓋をしがちだった自分の記憶も、この作品を見たあとならちょっとだけ受け入れられるような気がします。もしまた再上映される機会があればぜひ観てほしいです」(スタッフ郡)

『14歳の栞』
監督:竹林亮

配給 PARCO / 企画製作 CHOCOLATE Inc.

 


身近な世界が、もっと愛おしくなる映画


「夜明けのすべて」(2024年)

story:
PMS(月経前症候群)でイライラが抑えられなくなってしまう藤沢さんと、パニック障害を抱える山添くん。2人は、理解のある職場の人たちにも支えられながら、次第に同志のような気持ちで互いを思い合うようになっていく。

「『人にとって、他人とは、救いとは何か?』ということを、温かく身近で、かつ繊細でミニマルなトーンで描いている、作りの丁寧さに惹かれました。主人公2人をはじめ登場人物たちは、本当の意味では自分にしかわからない困難さや痛みを抱えていて、お互いの痛みが似ているようでまったく違うものであることを知った上で、それでも互いにわかろうとするところから物語が始まっていき、最後にはゆりかごのような優しさに満たされていくストーリー。フィルムのような映像のトーンがどこか懐かしくもあり、秋から冬にかけて澄んでいく光の捉え方も美しいです。環境音や音楽も大げさでなくて、心が洗われるように感じられてよかったです。勢いで、2回映画館で見たのですが、どっちも全く同じ場面でグッときてしまいました」(スタッフ石川)

『夜明けのすべて』
Blu-ray&DVD 2024年7月24日(水)発売
発売・販売元:バンダイナムコフィルムワークス
©瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会

 

「すばらしき世界」(2020年)

story:
13年の刑期を終え、旭川刑務所から出所した元殺人犯の男性。今度こそカタギとしてまっとうに生きるとの決意を胸に上京した彼は、身元引受人となった弁護士とその妻に温かく迎えられる。

「あたたかくも切ない映画です。鑑賞後に、いま、日々や社会に難しさを感じていても、姿勢や向き合い方を変えてみると、少しでも前向きに捉えられる面があるかもしれないと思えました。主人公が社会に復帰して再就職が決まった日、所属も背景も違う主人公の周りの人が集い、自宅でささやかにお祝い会をするシーンが印象に残っています。どんなに小さな前進でも、みんなが寄り添って、信じて、喜びを分かち合う。そんなつながりを持てる社会こそが『すばらしき世界』なのかもねと心に沁みました」(スタッフ青木)

『すばらしき世界』
Blu-ray&DVD発売中、デジタル配信中
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

***

最新作から、サブスクで観られる過去作まで。じっくり映画を観る時間ができたぞ、という日には気になった作品をぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?

下半期にはどんな本や映画との出合いが待っているのでしょうか。2024年の後半戦も、心の栄養となるエンタメに元気をチャージしてもらいながら、健やかに過ごせますように。

 

※記事内で紹介の作品の配信情報は、すべて2024年7月現在のものです。今後変更の可能性がございますことをご了承ください。

 

【写真】上原朋也(1枚目)

 


もくじ

 


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