【わたしの転機】大迫美樹さん「仕事をすること、人と過ごす時間。その喜びを知ったスウェーデン生活」
編集スタッフ 二本柳
(聞き手:スタッフ二本柳、写真:大迫美樹)
スウェーデン在住の大迫美樹さんに、人生のターニングポイントをお聞きしました。
人によって様々なカタチでやってくる人生のターニングポイント(転機)をお届けするシリーズ、「わたしのターニングポイント」。
vol.02ではスウェーデンのストックホルムに暮らしながら、ウェブサイトの運営をはじめ、雑誌(『FIGARO japon』、『ELLE DECOR japanなど)や広告のコーディネート全般など、幅広く活躍する大迫美樹(おおさこ みき)さんにご登場いただきます!
大迫さんが運営するウェブサイト『KOKEMOMO Sweden』で発信しているスウェディッシュライフの情報は、実際にそこで生活を送る人だからこそ伝えることのできる、リアルで温かみのある内容が盛りだくさん。
スウェーデンの素顔を垣間みることができ、わたし二本柳も読者のうちの一人です。
そして大迫さん、実は『北欧、暮らしの道具店』とも古いつながりがあるお方。
わたしたちがヴィンテージ雑貨をお取り扱いしていた頃、現地バイヤーとして買い付けをしてくださっていたのが大迫さんでした。
(実店舗は2014年に閉店いたしました)
そんな仕事のパートナーでもあった大迫さんは、一方で、日本での会社勤務を経てからスウェーデンに移住するという興味深い経歴の持ち主でもあります。
古い付き合いの店長佐藤も「いつかその人生について話を聞いてみたい」と思っていたようで、今回久しぶりに “取材” という形でお仕事を共にすることとなりました。
大迫さんのターニングポイントにまつわるストーリー。どうぞお楽しみくださいね。
わたしのターニングポイント。
母に背中を押され、決心したスウェーデンへの移住。
(写真:スタッフ撮影)
大迫さん(以下敬称略):
「わたしのターニングポイントは、現在のパートナーであるスウェーデン人の彼と出会い、2007年にスウェーデンへ移住したことです。
移住当時、私はすでに32歳と若くなかったこともあり、移住を決心するまでには様々な葛藤がありました。
スウェーデンに興味もなく、彼と生活をしたいという目的だけで移住をすることに、引っ越しをする直前までためらいがあったことを覚えています。
そんななか、移住の決心を後押ししてくれたのは、当時一緒に住んでいた母でした。
実家住まいのため料理や洗濯もろくにできず他人と生活をしたことのない私が、海外で外国人の彼と一緒に生活ができるのか、仕事を見つけられるのか、友人はできるのか…。そしてなにより、親をおいて海外へ移住するということに特に決心がつかずにいました。
当時母に言われたことは『あなたの幸せがお母さんの一番の幸せよ。せっかく素敵な人と出会ったんだからスウェーデンへ行ってみたら?お母さんのことは心配いらないし、何かあったらいつでも帰っておいで』と。
日本を旅立った日、スウェーデンへ向かう飛行機の中でも、ただただ悲しくて泣いていました。これから始まる新しい生活への期待より、友人たちや親と離れる悲しさのほうが大きかったことは今でも忘れません。
そして友人に家族、仕事も手放して、ゼロから…というよりマイナスからスタートした彼とのスウェーデン生活が始まりました」
仕事をしなければ、友人すらできない。移住したての絶望期。
(大迫さん1番のお気に入りというスウェーデン風景。)
大迫:
「移住するまで実家暮らしで母に頼りっきりだった私は、パートナーである彼に洗濯の仕方から野菜の切り方まですべてを教えてもらいました。
料理好きな彼は特にお菓子作りが得意で、移住直後にリンゴンベリーパイを焼いてくれたのですが、家事も一通りでき、パイまで焼いてしまう彼に感動したことを覚えています。
そんなパートナーとの新しい生活は楽しかったものの、ここで大きな悩みにぶつかります。
東京では仕事へ行き、友人たちと食事をする毎日だったのに、ここでは仕事もなく友人もいない。そして言葉のせいで自分の気持ちをうまく伝えられない日々にとても落ち込みました。
男女平等のスウェーデンでは女性もみんな仕事をしています。仕事をしていないと友人もできなければ社会に入り込めない、という雰囲気がとにかく辛かったですね。
仕事を見つけたいけれど、スウェーデンではなかなかそれを見つけることができない。移住したての頃は、そんな絶望期でもありました。
じつはこの移住したての絶望期に、『北欧、暮らしの道具店』をスタートしたばかりの店長佐藤さんと代表青木さんに出会いました。
この出会いをきっかけに、私は現地バイヤーとして一緒にお仕事をさせていただくことに。
当時はスウェーデン語の学校を往復するだけだったのでヴィンテージの買い付けは楽しみで、『やることがある』という喜びでもありました。おかげでだんだんとヴィンテージへの興味がわき、知識も増え、その知識は今でも役に立っています。
この経験がきっかけで、『もしかして日本と何か仕事ができるのかな?』とうっすら思いはじめたことも確かです」
「仕事は二の次」だったわたしに起こった変化。
大迫:
「スウェーデンでバイヤーを始めて1年ほどたったころ、東京の親友の紹介で日本の雑誌の仕事をしたことをきっかけに、徐々に日本からコーディネートの仕事が入ってくるようになりました。
だったらこのまま日本の仕事を本業にしてしまえ!と勢いに乗り、フリーで本格的に日本との仕事を始めたことが、気がついたら今の本業となっています。
スタートしてから3年が経つ今は、ありがたいことに雑誌や広告、テレビの他、様々な企業の方とお仕事をさせていただいていますが、仕事が軌道に乗るまではとにかく必死でした。仕事が楽しかったということもあり、徹夜をしたり休みなしのスケジュールでもこなしていたくらいです。
東京時代のわたしは『仕事は二の次』というスタンスだったので、これは大きな変化ですね」
仕事と暮らしのバランスが、当面の悩みになりそう。
(写真:スタッフ撮影)
大迫:
「ターニングポイントとなるスウェーデンへの移住から約8年が経ち、移住当初とはまた違う、新たな悩みも生まれてきています。
ようやく仕事が順調になり、どのような仕事が自分に向いているのか、自分がやりたいことはなにかが少しずつ見えはじめ、この数年は休みなく働いてきました。でも、ふと気がつくとパートナーとはすれ違いの日々。友人とも長い間会えなかったりと、自分の心が疲れていく感じを受けていました。
そのため最近は少し仕事をペースダウンして、以前のように無理なスケジュールは組まないようにしています。
おかげで大好きなナチュラルワインを飲んだり旅行に出たり、友人を招待して家でご飯を食べたりと、最近は人と過ごす時間を楽しむことができています。こうやって『誰かと一緒に過ごす』ことが私にはものすごく大切なんだということを改めて感じているんです。
一方で、仕事を通してたくさんの素敵な人たちにも出会うことができているので、仕事はこれからも続けていきたいと思っています。
どうやって仕事と暮らしのバランスを上手に保つか?これが当面の悩みとなりそうです」
大迫さんの日々を支えてくれているアイテム。
大迫:
「ひとつは、部屋の観葉植物です。東京に住んでいる頃は家にいることがほとんどなかったため、植物には全く興味がありませんでした。でも今では植物がない生活は考えられません。
眺めているだけでも癒されますが、お世話をすることもストレス解消や心の潤いにつながっている気がします。
それからもうひとつは、お気に入りのカップや湯のみで日本茶や紅茶を飲むということ。
コーヒーが苦手なためお茶派なのですが、朝起きて仕事をしながら、そして食後にと常にお茶はかかせません。
お気に入りのカップは、スウェーデンヴィンテージのカップ&ソーサー。
ヴィンテージは『北欧、暮らしの道具店』でバイヤーを経験させていただいたことで好きになり、少しずつコツコツと集めていきました」
今、ターニングポイントを振り返ってみて、当時の自分に言いたい事
大迫:
「移住するな!と言いたいところですが(笑)、結局今でもストックホルムへ移り住んだ決断が良かったのか悪かったのかはわかりません。
あの世からのお迎えがくる頃にどちらだったかわかるのかもしれませんね。
辛いことや大変なことがたくさんあって、禿げるかと思うくらいに悩んだりしたことも。でもいつの時も、パートナーの思いやりある優しさに救われてきたので、彼と出会って一緒に暮らしたことにはまったく後悔はないです。
そして日本を離れることで親のありがたみがわかり、素敵な友人たちに囲まれていたことに改めて気づかせてもらったり、仕事をする楽しさを教えてもらったのでやっぱり後悔はありません。
あの頃の自分には、『きっと移住して正解。これから辛いけど乗り越えて!』と言いたいです(笑)」
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