
店長佐藤が出会って、ささやかに希望を感じたブランドやデザイナーと、ものづくりをする「hope」と名付けたプロジェクト。
第三弾でご一緒するのは、アーティストのcoricci(コリッチ)さんです。
おだやかな白いフレームの中で、ありのままの姿を見せてくれる一本の木。「希望の木」と名付けて、アートを初めて買う人でも、おおらかに付き合える額付きのポスターをつくりました。
この記事では、二人の出会い、木というモチーフのこと、アートで届けたかった思いなど、佐藤とcoricciさんの約1年に及ぶものづくりの裏側を振り返ります。

coricci コリッチ
アーティスト。イタリアでの旅を起点に活動を開始。古典的デッサンの確かさ、デジタルからミックスメディアまで、伝統と革新の表現を行き来する。ペットパートナー作品の累計は一万点を超える。「北欧、暮らしの道具店」では、クラシ手帳 2026年版の表紙デザインを担当した。インスタグラムは @coricci_explore
出会いは、互いの物語が始まるようだった

はじまりは遡ること約2年前。
佐藤が家を建てることになって、アートへの興味を抱き始めた時期に、一点ものの原画を探すなかで偶然見つけたのが、coricciさんの「珊瑚礁」という作品でした。
佐藤:
「どんな作家さんか、年齢も、性別も知らなかったのですが、『絶対にこれがいい!』と迷わず購入しました。
蚤の市で買いたい雑貨を見つけたときのように、ピンとくるものがあったんです。
当時は、まだ賃貸のマンションに住んでいて、玄関のドアを開けて見える景色に、少しずつお気に入りのものを集めていたときでした。『珊瑚礁』も、まずはそこに置きたいと廊下に立てかけて飾りました」

その様子がこちら。Instagramにアップしたところ、たまたまcoricciさん本人が見つけてくださったそう。
coricciさん:
「シンプルな椅子と、白樺のオブジェと、『珊瑚礁』の原画と。どこかからの借り物ではない、見たことがない風景だ!と感動したんです。
作品が生活に溶け込んでいることが嬉しくて。床に直置きされていたから、まだ仮なのかなと、ここから物語が始まりそうな予感も感じました。
こんなふうに取り入れてもらえたらと、ぼんやり思い描いていた理想に出会えて、僕自身の物語も始まるような喜びもあって。普段ならしませんが、思いきってDMで感謝の気持ちをお伝えさせていただきました」
庭に植えたオリーブの木と、coricciさんの作品と

その後、当店からお客さまへ毎年プレゼントしているクラシ手帳 2026年版※の表紙を描いていただけることに。
偶然にも、打ち合わせに持ってきた原画の中に、佐藤が気になっていた木をモチーフにした作品がありました。
佐藤:
「少し歪(いびつ)な樹形が、家のシンボルツリーに選んだオリーブにそっくりで、運命的なものを感じていたんです。ずいぶん前の作品で、とっくに売れてしまっているだろうと諦めていたから、余計に驚きました」
▲佐藤の自宅の玄関に飾られている「想像の木」。
佐藤:
「その作品はcoricciさんが幼い頃の記憶を辿って、葉っぱを一枚一枚丁寧に描いた "想像上の木"。まだタイトルも付けておらず、デモテープのような作品だと聞きました。
ここに至るまでの長い時間軸を知って、さらに胸を打たれて。自分にとっても原風景みたいな懐かしさがあったので、クタクタになって帰ってきたとき、『ただいま』と最初に目に入る玄関に飾りたいと、購入させてもらいました」
※2025年8月からプレゼントを始めて、現在すでに配布終了しております。
歪(いびつ)さは、個性があるということだから

こうして始まった「希望の木」の制作プロジェクト。玄関に迎えたcoricciさんの作品と生活するうち、佐藤にはあるイメージが生まれていました。
佐藤:
「歪だけれど青々としている。完璧でなくても、自然に伸びていけば、その歪さも形になる。そこに個性が宿るんだと、小さな希望を感じられるものにしたいと思いました。
アートは、365日ずっとそこにあるものだからこそ、アパレルとも、雑貨とも、またちがう存在感を持っています。自分もこうなりたいと重ねられるような作品がいいのではないだろうかと。
なので、樹形はちょっと歪なほうがいい、でも尖った印象ではなく。葉っぱは多めで、明るい気持ちになれるもの、少しだけ上を向いている感じでお願いします、とお伝えしました」
最初、制作のイメージがつかめずにいたのですが……

リクエストを喜んで受けたものの「最初は作品の完成形がほとんど見えていませんでした」とcoricciさん。佐藤と二人でおしゃべりをしたのが転換点になったと言います。
coricciさん:
「希望とは、どういうものだと思うか?というお話をしましたよね。
僕にとっては、朝、ちゃんと美味しくコーヒーが飲めたとか、天気はいまいちでも読みたい本があるとか、手元にあるランプの灯りに気づくようなものだと。
そしたら、佐藤さんが『いろいろ大変なこともあるけど、良いことしか待っていないと思うようにしてる』と明るい声でおっしゃって。その言葉に、すごく元気をもらった気がしました」

coricciさん:
「あとは佐藤さんの高知への旅のこと、牧野富太郎さんの植物園を訪れたことなど聞かせていただき、……そうか、この会話のやわらかい空気感を、絵に持ち込んだらいいのかもしれないな、と。
制作の相談をしたわけではなかったのですが、作品のあり方をぼんやりイメージできた気がしました」
▲「希望の木」は、葉っぱを一枚ずつ積み上げて少しずつ全体へ向かっていくモチーフ。どんな姿になるかは、作者であるcoricciさんにも最後までわからないそう。
coricciさん:
「制作に入って最初の頃は、もう少し、渋い色で葉っぱを描いていたんです。
それに対して、佐藤さんが『この木の季節はいつなんでしょうね』と問いかけてくださって。初めて、自分が、季節というものをまったく考えずに描こうとしていたと気づきました。
春でも冬でもなく、ただそこに立っている木。長い時間を過ごしてきて、樹齢が高いようにも、まだ若いようにも見えるように。
制作期間は、公園などでお気に入りの木を見る時間も長かったですね。最後は即興のように、一気に描き上げて完成に至りました」
▲キックオフの様子。coricciさんの過去の作品や制作の様子を見せていただきながら、佐藤と担当スタッフも含め、たくさんのやりとりを重ねました。
ずっとそこにあったように、家の景色に馴染んでほしい

この取材の日、佐藤も初めて、発売するポスターと同じものを家に迎えてみました。
coricciさんの原画をできるだけそのまま再現することにこだわり、美術館で貴重な作品を保存するのにも用いられる、ジークレー印刷を採用しています。
額装には、絵の解釈の余地を狭めず、どんなインテリアにも馴染む白を選び、ひとさじの特別感を演出するマットを入れました。
佐藤さん:
「リビングの窓辺に立てかけてみたり、階段下にある花を飾るスペースに置いてみたり、お気に入りの雑貨と棚に飾ってみたり、家のいろんなところに置いてみました。
この家の景色に馴染んでくれるといいなと思っていたんです。ずっとそこにあったみたいに。
制作中にサンプルを家へ持ち帰り確認していたのですが、こうして完成品が我が家にやって来てくれたことに喜びを感じます」


佐藤:
「私も、アートはまだまだ初心者。最初から壁に掛けるのはハードルが高いと思っていたので、ひとまず立てかけてみて考え中といったところです。
こういうふうに、あっちこっちに持っていくのが好きなんですよね。カゴや雑貨でもよくしていて、だんだんとその子のいるべき場所が見えてくる。家に好きな景色が増えていく感じがして、すごく楽しいです」
この一枚の絵で、お客さまともつながれたら

約1年かけたものづくりの時間。北欧、暮らしの道具店でアートをお届けするという、これまでのコラボレーションともまたひと味ちがうプロジェクトとなりました。
ようやくお客さまへお披露目できる日を迎えて、どんな思いがあるでしょうか。
coricciさん:
「作品がどういう景色に置かれるかが一番気になっています。
日常に入り込める、余白を残せるアートを作りたいと思っていたので、こうして実際に佐藤さんのインテリアの中に置かれた姿を見ることができて光栄でした。
これからはお客さまの家で、どんなふうに飾っていただけるのか、とても楽しみです」

佐藤:
「ここから、この絵が、お客さまのものになっていくのだと思います。
私もこれからずっと『希望の木』と過ごしていきます。……月と似ている気がしますね。月がきれいな夜は、どこかでお客さまも眺めているかなと思う。絵を見るときも、同じようにお客さまへ思いを馳せるだろうなと。
まったく別の場所にいるお客さまとの間に、共通の美しいものがある。hopeというプロジェクトで、そう思えるものづくりができたことが嬉しいです」

おおらかで緻密。じっくり絵を眺めるほどに、おおきな木を見かけたときの、ふと立ち止まりたくなる、あの気持ちを思い出します。
「アート作品だけど肩肘を張らず、雑貨のように取り入れてほしいです」と佐藤。商品の詳細は、以下リンクからご確認ください。スタッフたちが自宅で飾ってみた様子もご紹介しています。
好きな景色を家にひとつ増やすような気持ちで。暮らしや、雑貨が好きな方々に、ぜひ迎え入れていただけたら嬉しいです。
商品ページはこちら【写真】上原朋也
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