【40歳の、前とあと】早坂香須子さん 第1話:看護師からメイクアップアーティストへ

ライター 一田憲子

hayasaka026写真 砂原文

自分が何者なのか、どんな仕事がしたいのか、何が心地いいのか……。正解がわからずに、とにかく目の前のことにがむしゃらにぶつかる20〜30代。

体当たりの経験値が増え、そしてようやく自分が見えてくるのが、40歳という年齢なのかもしれません。

そこで、この企画では、今キラキラ輝いて活躍している女性に、その境目となる「40歳」という年齢をどう迎えたか、40歳以前と、40歳以降に、なにがどう変わったのか、お話を伺ってみることにしました。

第一回は、モデルで、「ハグオーワー」のデザイナーでもある雅姫さんにお話を伺いました。第二回は、メイクアップアーティストの早坂香須子(はやさか かずこ)さん。全3話でお届けします。

 

女性はみんなきれいになれる!

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道端ジェシカさん、辺見えみりさん、SHIHOさん。多くのモデルや女優さんから指名が絶えない……。それが、メイクアップアーティストの早坂香須子さんです。

インスタグラムのフォロワーは刻々と増え続け、早坂さんが紹介したコスメに店頭で問い合わせが殺到するのだとか。

でも、それだけではありません。早坂さんのメッセージはいつもこんな感じ。

「女性はみんな『かわいい』を持っている。だから自信を持って!」

そして、メイクだけでなく自分の内側からきれいになる方法=インナービューティーを教えてくださいます。私たちはそんな早坂さんの言葉に「私だってきれいになれるかも」と背中を押してもらった気になるのです。

 

看護師からメイクアップアーティストへ。

hayasaka073△看護学校を卒業し、東京の大学病院に勤め始めた頃の早坂さん

早坂さんの前職はなんと看護師!そこから、どうやってメイクアップアーティストになられたのか。さらに、体の内側からきれいになる「インナービューティー」を大事にされるようになったきっかけや、今、早坂さんが思う「きれい」についてまで、じっくりお話を伺います。

「若い頃は、ぼんやりしてて、何になりたいかもわからなかったんです」という言葉を聞いてびっくり。家族を安心させるために、看護学校を経て看護師になったそう。

早坂さん:
「過酷なシフトの中で、ふと気づくと忙しくてイライラし、患者さんのことより仕事の能率を考えている自分がいました。好きなことをしていないと、人には優しくできないんじゃないか?やっとそう気付いたんですよね。

でも、好きなことってなんだろう?とわからなくなりました。そんなとき、思い出したのが、母のメイクボックスで遊ぶのが大好きだったっていうことだったんです」

こうして、19歳のときから上京して勤めていた大学病院を23歳の春に辞め、メイクアップアーティスト渡辺サブロオ氏が主催する学校へ通い始めました。卒業後、師匠となるyUKIさんと出会いアシスタントに。1年後に晴れて独立しましたが、実はここから今の早坂さんの ”迷いの時代” が続きます。

 

他人任せの人生をやめて、自分の人生に責任を持つと決めました

hayasaka078△リップやチークなどのコスメは、自分で組み合わせを考えて自作のパレットを作っている。

早坂さん:
「26歳で独立をして、31歳ぐらいまで、本当に仕事がなくて、つらかったですね。看護師に戻ろうと思ったこともなんどもありました。

でも、父親に『おまえの決意はそれぐらいのものだったのか』と叱咤激励されたり、yUKIさんには『これから先、後輩が活躍している雑誌を見ても悔しくないなら辞めればいいんじゃない』と言われて、『悔しいです』と大泣きしたり。

そうやって、みんなに突き放されたときに、自分がやりたいことをやるには、自分に責任を持たなくちゃいけないんだ、とわかったんです。

私は、頑張って、もしダメだったとき、それを認めるのが怖かった。プライドが高すぎて、『頑張ってダメならいいじゃない』とは思えなかったんです。『今はストリートファッションが主流だから、私のようなメイクは時代じゃないんだ』とか、すべてを周りのせいにする。そんな ”勘違い野郎“ だったんですよね(笑)」

そう気付いてから、カメラマンやスタイリストの友人たちと一緒に作品づくりを始めました。モデルを決め、スタイリストが洋服を選び、早坂さんがメイクを担当。カメラマンに写真を撮ってもらい、ポートフォリオを作ったそうです。

早坂さん:
「他人任せをやめて、自分の人生に責任を持ち始めたとき、願っていたことがどんどんかない始めました。ある日、一緒に作品づくりをしていた仲間のひとり、スタイリストの友人が、長谷川京子さんのハワイロケに私を呼んでくれたんです。年末押し迫った頃で、すごく急な話だったんですが、当時とにかく私は暇だったので、即『行く行く!』って言いましたね(笑)」

現場はワイキキのスタジアム。何もないコンクリート造の控え室は寒くて、長谷川さんは体がガチガチに。とてもテレビの前に立てる状態ではなかったそう。

早坂さん:
「私が、黒いビニールの大きな袋を見つけてきたんです。お湯を沸かして、その袋に入れて足湯にしました。そうしたら、長谷川さんの顔の血色がふわっと戻って……。生放送のカメラの前ににこやかな笑顔で立つことができてほっとしました。そんなことがあって、帰国後も何度か長谷川さんからお仕事の声をかけてもらうようになりました。

ここから仕事がなんとなくうまく回り始めたんです。ちょうど30歳になった頃かな」

メイクのテクニックも大事だけれど、その外側にある「何か」がもっと大事。その「何か」こそ、早坂さんが女性を本当にきれいに見せるためのパワーだったよう。

 

相手に心開いてもらうためには、自分が開いていないと

hayasaka062△いつも仕事の際にメイクルームに持ち込むアロマオイルとディフューザー。ほっと心を開く空間を香りで演出する。

実は今も、早坂さんはメイクルームに入ると、まずはディフューザーでアロマオイルを炊きます。初めて会うモデルや女優さんでも、すでに知っている人でも、その場をほっと和ませるのが、仕事の第一歩。丁寧にマッサージをして、そこからメイクが始まるのです。

早坂さん:
「メイクルームって狭いし、肌と肌ってとても繊細なものなので、心がダイレクトに伝わってしまうんですよね。

『初めまして』と会ったとき、心をオープンにするってとっても難しいこと。私が ”開いて” いないと、相手も ”開いて“ くれない……。だから香りというツールを持ち込むことにしたんです。そして、顔だけではなくて、ボディオイルで体もマッサージしてあげることで、血色がよくなって、気持ちもほぐれていきます。

最近ね、現場で『笑っている間に撮影終わっちゃったね〜』ということが多いんですよ。『あれ、今日なにやったって?』って。『メイクされました』『しました』っていう意識が残らない……。それがいいなあと私は思っているんです。

笑顔でメイクルームを出ていって、自信を持ってキラキラとカメラの前で輝いて、それが誌面を通して広がっていく。そんな空気感って、必ず伝わると思います」

「メイクアップアーティストとしてバリバリ仕事をして有名になりたい」

それが、20代の頃の早坂さんの夢でした。でも、皮肉なことに「メイクアップアーティスト」としての自分の姿なんて、なくなっちゃってもいい! ただ、モデルや女優さんが、気持ち良くカメラの前に立ってくれればそれでいい……。

そうやって、自分の姿を消してみると、初めて自分が持っている可能性や、揺るぎない生き方の「芯」がはっきりと見えてきたのだと言います。

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人は、何者かになろうとするとき、その指針を「人からの評価」に置きがちです。私もずっと長い間そうでした。

でも、あの人やこの人が言うことに、一喜一憂していると、落ち込んだり喜んだり、ジェットコースターのように心が揺れ動き、いったい何が正解なのか、わからなくなってしまいます。

それよりも、「こんな素敵な人と出会ったから、その素晴らしさを伝えたい」とか「あの人の言葉で、こんなに晴れ晴れした心になれた。そんな言葉をみんなにも知ってほしい」など、感動したり、発見したり、その事実に純粋にフォーカスし、「私が感動した」「私が発見した」というセンテンスから「私が」という主語を取り去ってみたら……。

いろんな人にその感動が伝わって、その喜びが2倍3倍に膨らんでいくのかもしれません。

早坂さんは、仕事がなかった頃の話から、勘違いしていたこと、それに気づいたプロセスまで、隠すことなくその足跡を話してくださいました。

あの早坂さんにもそんな時期があったなんて……。私たちは、そんな姿を知ることで、私にもキラキラ輝くための道があるのかもしれない……と勇気をもらいます。

次回は、そんな早坂さんの40歳の転機についてお話を伺います。

(つづく)

 

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メイクアップアーティスト 早坂香須子

看護師として大学病院に勤務した後、メイクアップアーティストアシスタントを経て99年に独立。国内外のモデルや女優から支持されている。元看護師という医学的知識と観点から、インナービューティー、オーガニックプロダクトコンサルタント、香りなど、多岐にわたりビューティーの提案をしている。近著に『100% Beauty Life 早坂香須子の美容AtoZ』がある。

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ライター 一田憲子

編集者、ライター フリーライターとして女性誌や単行本の執筆などで活躍。「暮らしのおへそ」「大人になったら着たい服」(共に主婦と生活社)では企画から編集、執筆までを手がける。全国を飛び回り、著名人から一般人まで、多くの取材を行っている。ブログ「おへそのすきま」http://kurashi-to-oshare.jp/oheso/

 

▼早坂さんの著書はこちら。 

 

もくじ

 


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