【気持ちが伝わる「紙」の楽しみ】第2話:紙袋だって面白い!田中千絵さんの遊び方、使い方。
編集スタッフ 長谷川
色とりどりで、手触りがちがって、きらきらと輝くものまである紙たち。
それらは「特殊紙(ファインペーパー/ファンシーペーパー)」と呼ばれ、書籍や封筒、パッケージによく使われています。
きれいなだけでなく、特殊紙は使う人の気持ちを乗せられるのも魅力です。その良さを紹介すべく、3話連載で紙の話をしています。
第1話は「知ると楽しい紙の4つのこと」を紹介しました。
▲和田誠さんによる翻訳書『オフ・オフ・マザー・グース』はイラストも含めてお気に入り。
第2話ではお仕事でもよく紙を使われ、子どもの頃から親しみを持って接してきたというデザイナーの田中千絵さんを訪ねました。
ふだんからどのように紙を使っているのか、紙の面白さや心惹かれるポイントはどこにあるのかを伺ってみます。
「ストーリー」を紙に込めて。
▲田中千絵さんの作品のひとつ。色とりどりの小箱は見ているだけでも楽しい気持ちに。
以前、はたらきかたインタビューにも登場してくださった田中千絵さんは、二児の母でありながら、デザイナー、イラストレーター、文筆家と幅広く活躍されています。
そのお仕事には、紙を素材やテーマとした作品が多くあります。
たとえば、『のだめカンタービレ』や『87clockers』で知られるマンガ家の二ノ宮知子さんが、事務所で使用する封筒や名刺の一式を制作。
紙とデザインで「マンガ家さんが使うからこそのストーリー」のイメージしたそう。そこで、マンガ雑誌用紙に雰囲気がとても似ている「ファーストヴィンテージ」を採用しました。
▲マンガでよく使われる技法「集中線」が入っており、宛先が目立つアイデア。集中線はニノ・プロダクション描きおろし。献本が届くたびに田中千絵さんは嬉しくなるそう。
他にも、パッケージや書籍の装丁、紙をテーマにした雑誌やウェブでの連載などを手がけています。
▲日本の伝統色や野菜をテーマにしたポストカードブックや、小説家・田丸雅智氏の著作では装丁や装画、挿絵を手がけた。
田中千絵さん:
「父親がパッケージデザインや装丁の仕事、母親は絵画教室をやっていたのもあって、毎日何かしらの紙を目にする家庭でした。お古の紙見本帳(短冊状に切られた紙がまとめられたもの)を遊び道具にしたり。
伯父の田中一光はデザイナーで、大学生のときには田中一光デザイン室でアルバイトもしていました。そこで見たポスターや本などの紙の仕事たちも印象に残っていますね」
幼稚園生の頃から紙袋や折り紙のコレクションを始め、展示会や映画のチラシをファイリング、お店の素敵な紙ナフキンやホテルのレターヘッド(社用便箋)に感動……と、田中千絵さんは言わば “紙の英才教育” を受けてきました。
「紙袋が大好きすぎるんです!」
▲ファッションブランドや雑貨店のショッパーは「お店の雰囲気やコンセプトも伝わってきて、なかなか捨てられない」
仕事で素材として扱うだけでなく、プライベートで身のまわりにある紙たちに心ときめく瞬間もよくあるそう。
田中千絵さん:
「わたし、紙袋が大好きすぎるんです!
旅行をすると紙を探したり、紙袋をきれいにたたんで、お土産のように持って帰ってきます。
紙袋はヨーロッパの雑貨屋さんのも良いし、東南アジアのざっくりした作りも楽しいですよ。家族が間違って捨てたりすると『あの袋、どこー!?』って騒ぎが起きちゃうくらい。
人生のモットーが『後悔しない生き方』だから、捨てた後悔や悲しみに襲われることを思うと取っておきたくなって……(笑)」
▲包装紙を求め築地市場の専門店を訪れたことも!北欧雑貨店「Flying Tiger Copenhagen」の紙グッズは狙い目だそう。
お菓子を出すときも、1枚のワックスペーパーを敷くだけで華やかに。ペーパーナフキンや紙皿も気軽に試したい「暮らしの道具」のひとつです。
田中千絵さん:
「紙はとても安価で、扱いやすく、種類も豊富。同じ紙でも厚さによって印象も変わります。
紙が持つ “素材としての幅” に興味を持ち始めると、ぐっと面白くなりますよ!」
▲「OKサンドカラー」はお気に入りのひとつ。砂を散りばめたような模様に「とまと」「きゅうり」などの色名も愛らしい。
楽しむ道具がシンプルなのも、好き。
▲愛用の道具たち。ハサミの使い分けは「プラス」で細かい作業、「ヘンケルス」は大きいものを断つ時に。
紙は切る、折る、貼るといった工作がしやすく、使う道具も「小学生が使うようなもので、じゅうぶんに楽しめるのが良いところ」と田中千絵さん。
田中千絵さん:
「紙をきれいに折りたいときは、鉄筆でいったん折り目をつけるといいですよ。鉄筆がなければインクが出なくなったボールペンでも代用できます」
紙から「相手の気持ち」が見えてくる。
▲作品に感じる “ちょっとふしぎ” な世界観を表現しつつ、女性も手に取りやすい「すこし甘め」の仕上がりに。
装丁、装画、挿絵を手がけた田丸雅智さんの著書『ショートショート診療所』(キノブックス刊)について伺うと、田中千絵さんが込めた思いが見えてきました。
田中千絵さん:
「本を手にした時にストーリーは始まりますから、表紙では『非日常に入っていくドア』をイメージして、見返しにはローズカラーの遊び心を。
多めに色をつかって、読み手の気持ちが下がらないようにしたかったんです」
“本は読む前から始まっている”
そのメッセージは、本屋さんで棚をながめるときの、そわそわするような感覚を言い表すのにぴったりだと感じます。
ひとつずつの本が放つメッセージは、使われている紙、それを手にしたときの質感からも伝わっていくのでしょう。
▲フランス生まれのスープレシピの本(かわいい!)。形の自由さは紙の特性で、魅力のうち。
田中千絵さん:
「いろんな紙のあり方を見てきて、相手の心が見えた瞬間に『やっぱり紙って良いな』って感じます。
そうそう、この前も、手作りのカレンダーをプレゼントしたらとても喜んでいただけて」
▲柿をモチーフにした手作りカレンダー。秋の景色を感じる贈り物。(写真/田中千絵)
田中千絵さん:
「ちょっとずれたり、はみ出したりするのも含めて、手作りしたものってオンリーワンじゃないですか。絶対にその人だけのものになるし、そこに乗せたい気持ちもその人だけのものだから」
▲田中千絵さんが贈った「楽しい紙吹雪と一緒に」サンクスカードを添えた請求書。事務的なものもひと手間かけて楽しく。(写真/田中千絵)
田中千絵さん:
「メールも楽しいし、良さもあるけれど、私はあらためての『ありがとうございます!』を伝えるレターの時は、ちゃんと紙に書いて、季節感をあしらったりもします。
それに、手紙や切り絵のカードって、もらって嬉しくない人はきっといないはず!って思います。
今、紙で日常を楽しくするアイデアブックの書籍企画も進んでるところです。気軽に楽しく生活に紙を取り入れて、あたたかい豊かなコミュニケーションになれば、それはとっても素敵ですよね!」
▲使いかけや見本の切れ端も素材に。余すところなく楽しめるのも紙の良さ。
模様、質感、色もさまざまな紙の世界。
身のまわりを見渡してみると、スーパーマーケットにはパッケージが、カフェにはショップカードが、街中にはポスターが……と、実はたくさん使われているもの。
その一つひとつに「なぜ、その紙か」という気持ちが大なり小なり込められていると思うと、すこしだけ想像する楽しさも味わえます。
それは誰かに想いを乗せて贈りたいときにも、うまく使える便利なツールであることを教えてくれる証拠のはずです。
(撮影 鈴木静華)
さて、明日公開の第3話では、「紙のプロ」がいるお店を訪ねてみました。
どんなところに気をつければ買いやすく、お気に入りの一枚にたどり着きやすいのか。そんなポイントもお聞きします。
田中千絵
デザイナー。武蔵野美術大学卒業。ツモリチサト青山店のウインドウインスタレーションでデビュー後、グラフィックやイラスト、プロダクト、アートなど幅広い分野で活動を行う。2児の母。ピンクリボンデザイン大賞審査員。『MilK Japon』にて連載していた “日常のものから色を探す「PIUPIUCOLOR」” が完結。現在、こちらも書籍化進行中です!
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