【気持ちが伝わる「紙」の楽しみ】第3話:プロがいるお店で「まだ見ぬ紙と、紙の可能性」に出会ってみる。
編集スタッフ 長谷川
撮影 鈴木静華
色とりどりで、手触りがちがって、きらきらと輝くものまである紙たち。
それらは「特殊紙(ファインペーパー/ファンシーペーパー)」と呼ばれ、書籍や封筒、パッケージによく使われています。
きれいなだけでなく、特殊紙は使う人の気持ちを乗せられるのも魅力です。その良さを紹介すべく、3話連載で紙の話をしています。
第1話は「知ると楽しい紙の4つのこと」を、第2話では「デザイナー・田中千絵さんに聞く紙の楽しみ」をお届けしました。
今回は、紙を買ったり触ったりしたい時に頼れる「紙のプロ」がいるお店を訪ねました。どんなところに気をつけるのか、オススメや流行りの紙は何かも聞いてみました。
2700種類から選ぶ、「これだ!」の気持ちよさ。
古本街で有名な神保町。大通りからすこし外れ、静けさを感じるようになった頃に「見本帖本店(みほんちょうほんてん)」現れます。
印刷用紙や特殊紙の販売や輸出入、商品開発を手がける株式会社竹尾(たけお)が運営しているショールームです。
開放的な全面の窓ガラスから見える、真っ白な空間。色とりどり、手触りもさまざまな紙が約300銘柄2700種類も用意されています。
(たくさんに聞こえますが、竹尾はおよそ9000種類(!)を扱っているのだとか)
美術系大学に通う学生をはじめ、ペーパークラフトや手製本を嗜む人、結婚式の席次表をつくりたい夫婦まで、自分にぴったり合う紙を求めてお客さまは足を運びます。
テーブルに並ぶのは紙のカット見本。触りながら、直感的に探せます。
▲真っ白な壁、実は全部が引き出し!A4サイズにカットされた紙がしまってあり、1枚から購入できます(購入するときは注文用紙を書いて、スタッフさんに手渡せばOK)。
銘柄ごとに短冊状の紙がまとめられた「ミニサンプル」も用意されています。パラパラとめくっているだけでもアイデアが湧いてきそうです。
2階では「紙とデザイン」をテーマにした展示会も定期的に開催。見本帖本店はまさに「まだ見ぬ紙と、紙の可能性に出会える場所」といえそうです。
探すコツは、目的からイメージすること。
今回、お話を伺ったのは、竹尾で広報や展示企画などに携わる山根千春さん。以前はデザイナーや出版社に紙を提案する仕事もしていた、まさしく “紙のプロフェッショナル” です。
山根千春さん:
「紙は目的からイメージすると探しやすいです。たとえば、結婚式の席次表をつくるとします。
上品な雰囲気がよければ、あたたかみのある白さと質感の『ロベール』や『マーメイド』。さらに存在感を足したければ『ペルーラ』などのパール調の紙もいいですね。
より華やかにしたいなら、ガラスフレークがきらめく『ミランダ』や、星の輝きをイメージした『スタードリーム』といった紙もよく選ばれています」
▲「白い紙」だけでもこれだけの種類がある。しっくりくるものを探すのも楽しい。
山根千春さん:
「印刷についてのご質問もよくいただきます。ご家庭のプリンターや、学校や印刷サービスの機材を使われるのであれば、参考になるように出力見本をご用意しています。
紙で困ったことがあれば、スタッフへお気軽にご相談ください」
▲紙によってプリンターの向き不向きがある。もっとも確実なのは、買って試してみること。
結婚式の席次表だけでなく、手作りの封筒やカードでも、大切なのは頭の中で「どんなものが欲しいか」をまずイメージすること。
そう思うと、お家に飾る雑貨やインテリアと同じように、紙も選べそうな気がします(もちろん雑貨みたいな「一目惚れ!」も良いですね)。
つくられる時から、ストーリーは始まっている。
特殊紙は進化を続けており、新製品も年々リリースされています。
山根千春さん:
「最近の流行は、紙袋や包装材に使われるようなクラフト紙ですね。表裏で色がちがったり、片面だけツヤがあったりするものも人気です。
そのほかでは『タブロ』という新聞紙をイメージしてつくった紙があります。実際に新聞紙を抄いている機械で作っているんですよ」
ソーダやライム、キナコといった色名も可愛らしい『ポルカ』は、装丁家としても有名なデザイナー・名久井直子さんが開発に携わったもの。
商品のイメージは「海外でひろった、ちょっと変だけれど、素敵な紙」だそう。ガサッとした風合いに、抄き込まれたチリのカラフルさでおかしみを表現しています。
そんなイメージを聞いてから『ポルカ』を手にとってみると、どこかの国の街並みが浮かんでくるようです。
こんなふうに、ひとつの紙からストーリーが始まる予感がしてくるのも楽しいところ。
第2話で田中千絵さんが話していた「本は手にした時からストーリーが始まる」に通ずる話だと感じます。
つい頼りたくなる、お気に入りの紙。
お話を聞きながら、ふと気になって、山根さんに「好きな紙ってありますか?」と聞いてみました(紙のプロからオススメされたら、一度は使ってみたくなるものです)。
山根千春さん:
「難しい質問ですが……、わたしは比較的ベーシックな紙が好みで、たとえば『アラベール』が気に入っています。質感や色の雰囲気も良くて、出力や印刷もよく乗りますし、紙自体がしっかり主張してくれる。優秀な紙です。
安定感があって、つい頼りたくなるイメージ(笑)。 “紙らしい紙” という存在感がありますね」
山根千春さん:
「アラベールをいつもオフィスに常備しているんです。お客さまにサンプルを送るときなどに、プリンターで出力したり、手書きで一筆添えるためです。
ほどよい上質感が出て、メッセージがより伝わるかなと思っています」
山根千春さん:
「今のイチオシは『サガンGA』です。50色のカラーバリエーションをもつ紙で、中には印刷では再現しきれない色を追求したものもあります。
たとえば、赤やロイヤルブルー、色名に “極” の字がつく3種は、色が濃いのに彩度をとても高く感じられる、今までにない色合いの紙なんです」
サガンGAの濃色を見た時の印象は「ものすごくシャープでかっこいい!」でした。これで名刺を作ったら覚えてもらいやすいかも……と、またしても想像がふくらんだのでした。
紙は、気持ちを込められる道具です。
今日までの3話連載をお届けしました。紙のもつ面白さが、少しでも伝わったなら嬉しいです。
紙って、わたしたちのまわりにいつもあるからこそ、取るに足らないものと思えるかもしれません。
けれど、よくよく見てみると、紙のひとつずつには顔があり、空気があり、個性があるものだと感じられるはずです。
やんちゃなやつ、ふわっとしてたり、大人っぽいの……いろいろ、います。
だからこそ、器やファッションと同じように、「使うわたしの気持ち」を表現するのにもぴったりだと僕は思います。
伝えたい想い、叶えたいイメージを、たいせつに。紙は、わたしたちの「したい」に寄り添う道具なんですね。
▲使ったのは「NTラシャ オレンジ 4/6Y 100kg」です。(撮影 クラシコム)
余談ですが、僕もさっそく封筒をつくってみました。ある人に、ちょっとしたギフトを贈る機会があったので、大好きなオレンジカラーの封筒に文庫本を入れてみました。
オレンジは元気の出る色。本や手紙と一緒に、ささやかながら応援の気持ちが伝わったらなと願っています。
竹尾 見本帖本店
住所:東京都千代田区神田錦町3-18-3
Tel:03-3292-3669(1Fショップ:03-3292-3631)
営業時間:10時〜19時
定休日:土曜日・日曜日、祝日
神保町駅(東京メトロ半蔵門線、都営三田線・都営新宿線)A9出口徒歩8分
竹橋駅(東京メトロ東西線)3b KKR出口徒歩5分
新御茶ノ水駅(東京メトロ千代田線)、小川町駅(都営新宿線)B7出口徒歩8分
御茶ノ水駅(JR中央線・総武線)御茶ノ水橋口徒歩15分
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