【ハワイと暮らし】第3話:心がガサガサしたとき、どうしたら「自分にも人にも」優しくできる?
編集スタッフ 塩川
▲毎日眺めているという、鎌倉の海(赤澤さん撮影)。
私たちが「会いたい!」とラブコールを送った、ハワイをこよなく愛する編集者・フリーライターの赤澤かおりさんに全3話でお話を伺っています。
2話目では赤澤さん流のハワイの楽しみ方をお聞きしました。
取材も後半になり、すっかり時刻は夕暮れに。場所を鎌倉のビストロ『OSHINO (オシノ)』へと移し、赤澤さんがハワイから学んだことを、店長佐藤との対談形式でお届けします。
▲赤澤さんが長年住み、愛する街、鎌倉について綴った著書。
心が「ガサガサ」するとハワイに向かう
店長佐藤:
「かんぱーい!今日はいいお話をたくさん聞けてうれしいです。私が赤澤さんの本に出会ったのは、夏に雑貨店halの後藤由紀子さんのところへ取材で行ったときのこと。
ガイドブックを読んでいて、著者の方に会いたいと思ったのは初めてで、生き方や違う人生の選択肢を突きつけられたように思えたんです。
でもお話を伺っていくうちに、赤澤さんも『暮らしも仕事、仕事も暮らし』に近い働きかたなのかも?と感じていて。
『Hawaii Book』(枻出版社)で『毎日の暮らしが息苦しくなってくると、ハワイに向かう』との書き出しを拝見し、そんなふうに赤澤さんの心がガサガサするのは、どんなときですか?」
赤澤さん:
「うーん……。日本にいると、ときどき自分にも人にも優しくないなぁと感じることがあります。
例えば電車が遅れると、イライラすることもあるでしょ?でもハワイの人たちはおおらかで、道が渋滞していたら焦ったってしょうがない。『なるようになる』ことに身を委ねて、無理に抗おうとしないんです。
私はハワイに着いたらまず海に浸かって、一回ゼロにするというか、ドロっとした気持ちを海に流します。海には浄化の作用があるから。
日本にいるとやっぱりドロドロしてしまうこともあるから、毎日海を見ていないとダメなような気がして。だから鎌倉に住んでいるんですよ(笑)」
▲赤澤さんお気に入りのビストロ『OSHINO』は、おいしい料理と、気さくな店主・星野さんの人柄も素敵なお店でした。
どうしたら、自分にも人にも優しくできる?
店長佐藤:
「なかなかハワイや海に行きたくても、行けない人が多いと思うんです。普段の暮らしの中で何を意識すれば、自分にも人にも優しくできますか?」
赤澤さん:
「例えば誰かに嫌なことをされても、その人のいいところを思い出したり、お世話になったことを忘れないようにしています。
それは、ハワイのアンティ(目上の女性)から教えてもらったこと。
『いつも感謝を忘れないこと。自分が感謝してハッピーな気持ちでいると、その気持ちが広がってシェアできる。それがアロハスピリット』
私自身、夫に対して『もうっ!』ってイライラすることもあるけど、それがあまりにずっこけすぎていて笑っちゃうというか、悪い意味じゃなくて『まあいっか』って思える。それってすごく大事だなと。自分も人も許す感覚です」
店長佐藤:
「でもそれって、難しいですよね」
赤澤さん:
「そうですね。もちろん、まだまだできてないし、うまくいかなくて落ち込むこともありますが……。
子どもだって泣いていても、いつかは泣き止むじゃない。自分の思い通りにはならないけど、まあいっかって『待つ』のも大切だと思うんです。
うちは夫とふたり家族で、子どもが欲しかったけどできなかったの。そのとき初めて、頑張っても努力しても、無理なことがあるっていうのを知りました。人生なるようにしかならないと」
毎日、思い通りにはいかないけれども……
店長佐藤:
「感謝とか、待つとか、言葉にするときれいごとに聞こえますけど、人生思い通りいかないことが8、9割だと思います。
私はもともと暮らしにまつわることや雑貨が好きで今の仕事を始めて、お陰さまで10年経ち社員が30人を超えるようになり、会社組織を経営する立場になりました。
ありがたいことですが、今の状態をまったく想像してなくて。キャパにないことをやっているから、ピリピリしちゃうことがあるんです」
赤澤さん:
「わかります!そんなとき、私はつい夫に当たってしまって」
店長佐藤:
「うちも同じです」
赤澤さん:
「夫は嵐が過ぎ去るのを、頭(こうべ)を垂れてじっと待っていて。その姿を見ていると『あーあ、自分ばかりイライラしちゃったな』と反省するんです」
店長佐藤:
「うわー。すっごくわかります。言い合いにならないから、自己嫌悪になりますよね」
赤澤さん:
「ひと通り吐き出して気持ちが落ち着いたら『ごめんね。お酒でも飲もうか』と誘うと、夫は『忙しそうだったから、仕方ないよ』と許してくれて。
そういうとき、子どもは欲しかったけど、二人でも良かったと思えるんです。自由にハワイに行けるのも、神様がそうしていいよって言ってくれたのかも。
だから今では、友達の子も自分の子のように感じられて。自分の子どもが生まれたときのためにと、買っておいた服もたくさんあるけど、もう持っていてもしょうがないから、友達にプレゼントしているんです。それで子どもの写真を撮って送ってくれたら、もうハッピー。
『なるようになる』と思えるようになったのも、ぜーんぶ、ハワイが教えてくれたこと。私はハワイに出会ってなかったら、違う人生だったと思うんです」
人生は綱渡り。でも「なるようになる」でいいんじゃない
店長佐藤:
「みなさん家庭だったり、仕事だったり、趣味だったり。私には『これがあるから』と拠り所があると思っていて。今現在、48歳の赤澤さんの核は何になりますか?」
赤澤さん:
「思うようにやることかな。
自由で何にも捉われず、眠かったら寝るし、悲しかったら泣く。我慢しないって言ったら変だけど、きっと人生ってそんなに長くない。
食べたいものを食べるために働いて、ハワイも本にして全部伝えたら、また充電しに行く。そうやって自分に、ご褒美を作っているんです。
自分が必要だと感じて、自然とやっていることって意外と理にかなっていると思います」
店長佐藤:
「心のガサガサやモヤモヤから逃れるために、ハワイに移住しようとか、これから先をどう考えていますか?」
赤澤さん:
「何も考えてないですね〜。『なるようになる』としか思っていなくて。
仕事も住む場所も、自分の心の声に従って……、人生だいたいが綱渡りですが、それでいい気がしています。決まっているのってイヤじゃないですか?」
店長佐藤:
「質問しておいてアレですけど、私もイヤです。50代になったら、こうでありたいとかなくて、これから先がまったく想像つきません。
けれど最近感じることは、海とか山とか自然をすごく欲していて、自然の近くで暮らしたいんです。私、疲れているのかな……?」
赤澤さん:
「自分がそう感じるなら、動いてみるのも一つですよ。私は海がないとダメで、朝も夕方もいつも海を見て助けられています。
人が病気になるのは、そういうサインを見過ごしているときだと思っていて。鎌倉いいですよ〜。引っ越してきたら?」
店長佐藤:
「すごく惹かれますけど、会社どうしましょう……」
赤澤さん:
「みんなで引っ越しちゃえばいいんじゃない!? 鎌倉ってちょっとハワイに似た雰囲気で、お店の人も、飲み歩いている人も、みんな自由でフレンドリー。
生きていればイヤなことだっていっぱいあるけど、人生は短いから。くだらないことを言って、日々ゲラゲラと笑っていられるのが一番ですよ」
自分に優しくできれば、人にも優しくできる
取材を終えてから、私は空を見上げる機会が増えました。
身近に海がない代わりに、ガサガサした気持ちを空に流す。そうやって自然の力を借りながら「まあいっか」と今日も少しだけ、できなかった自分を許す。
人生は短いから受け入れることも大切で、自分に優しくできれば、人にも優しくできる。そんなことをハワイを通じて赤澤さんから教わりました。
近いうちにハワイに行って、たくさんのことを見て感じて充電したいですが、今のところは空を見上げることが、私のハワイ的なもの。
悩んだり、苦しんだり、ときにはご褒美を用意しながらも、自分らしい「暮らしも仕事、仕事も暮らし」を形にしたいと思います。
(おわり)
【写真】広瀬貴子
【取材協力】
OSHINO(オシノ)
〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-8-6 小黒ビルB1
※赤澤さんの著書『鎌倉 のんで、たべる。』にも、たっぷりと掲載されています。
もくじ
編集者・ライター 赤澤かおり
出版社にて雑誌編集を経てフリーに。料理と旅、暮らしまわりのことを中心に執筆・編集を行う。ハワイをこよなく愛し、ハワイにまつわる本を多数執筆。最新作は共著『LOCAL HAWAII』(京阪神エルマガジン社)・『Hawaii Vacation Book for Oahu Lovers』(講談社)、著書『鎌倉 のんで、たべる。』(朝日新聞出版社)がある。 https://www.instagram.com/akalohasunny
▽赤澤さんの書籍はこちらからご覧いただけます。
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