【新連載|プロローグ】エッセイ「ケの日のこと」がはじまります。
商品プランナー 斉木
“ハレ” と “ケ” という言葉があります。
友達のお祝いをしたり、家族と旅行に行ったり。携帯電話のカメラロールをひらけば、そんな「ハレの日のわたし」がニッコリ笑って並んでいるけれど、「ケの日のわたし」は、自分自身しか知らない。
6時半に起きて、会社に行って、18時半に家に着いたら、お風呂に入ってご飯を食べて、23時前には寝てしまう。ハンを押したように過ぎ去るわたしの日常。
でも、目の前で笑う友人にも、毎朝すれ違うおばあちゃんにも、決して見ることのできない「ケの日」がある。誰の目にも触れないところで、ただ淡々と刻まれているであろうその日々の連なりに、ほっとすることがあります。
そして、誰にも記録されず、明日には上書きされてしまうような毎日だからこそ、わたしだけはこの日々を愛おしみたい。そう思うようになったのは、本日から始まる新連載を綴る、ある方の一言がきっかけでした。
編集長であり、そして母である、一人の女性が綴ります。
この連載を書いてくれるのは、当店の読みものや、リトルプレスにもご登場いただいている、中村 暁野(なかむら あきの)さん。
ひとつの家族を一年間に渡り取材し、一冊にまとめる、「家族と一年誌『家族』」の編集長を務める中村さんは、プライベートで7歳の娘と0歳の息子を育てる母でもあります。
今年の8月に公開した「あなたのホームは、どこですか?」では、そんな中村さんが母になってから抱えていた葛藤、それを一歩ずつ乗り越える姿をお伝えしました。
「なんてことない」日も、悪くない。
新連載「ケの日のこと」は、そんな中村さんの「ケの日だって悪くない」という一言から始まっています。
「家族」ってなんだろう。ずっとその疑問と向き合ってきた中村さんは、家族とは時に人様にお見せできないような普段の食卓をともに囲み、食べることのできる存在ではないかと話します。
ときにはていねいさや頑張りからかけ離れている、そんな日常だからこそ、その人らしさがより色濃く映し出されるのだと思う。人生はハレとケの両方あってこそ、だと。
この連載では、中村さんに、ご自身の「ケの日」の一瞬一瞬を切り取り、綴っていただきます。第1話目は、ふたりの子どもと共に、慌ただしく過ぎ去るいつもの朝の風景から。
誰にでもある、なんでもない日常に、ふと目を向けるきっかけになればうれしいです。
【写真】馬場わかな
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