【チカラの抜き方】前編:人生は逆算なんてできない。「居直る」ことの意味

編集スタッフ 松浦

「もっと、もっと」もいいけれど。

気づけば、今年も残すところあと少し。

「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と、師走って文字通り、なんだか慌ただしいものです。でも、すべてが綺麗に終わるわけではないから、「結局今年もできなかった…」なんて声もよく耳にします。(私もその一人です…)

いつも年末にそう思うのは、「もっとこうしたい」と思い描くものがあるからこそ。その目標に向かって、なんとなく生き急いでいたのでしょう。

けれど、一年の終わりくらい、ふーっと一息ついてもいいかもしれません。 新年、新しい空気が吸い込めるように、思いっきり深呼吸しましょう。

今回は「チカラの抜き方」と題し、東京・青山で「ごはんやパロル」を営む、桜井莞子(さくらい・えみこ)さんにお話を伺いました。

 

とことんチャーミングな女性、桜井莞子さんに会いに行きました。

「チカラの抜けた人」という言葉とともに頭に浮かんだのが桜井莞子さんでした

桜井さんが「ごはんやパロル」を今の場所に開いたのは、2014年5月のこと。桜井さん、なんと71歳の時です。懐かしいのにどこか新しく、毎日食べても飽きない家庭料理で、オープンから3年たった今も、愛され続けている人気店です。

私が初めてパロルに行った日。寒さのためか、はじめての店への緊張のためか、いつにも増してドキドキしながら扉を開けました。

カウンターに通され「今日のつき出しです」と、出されたのは野菜のスープ。ひとくちいただくと、「はぁ〜」と、気持ちのいいため息が出ました。優しいごはんの香りと、お客さんの楽しそうな笑い声に包まれて、さっきまでの緊張が嘘のよう。すーっと肩の力が抜けていったのを覚えています。

取材当日。オープン前の店内では、真っ白なシャツにエプロン姿の桜井さんが、手際よく仕込みをしていました。食器棚にずらりと並ぶのは、陶芸家・黒田泰蔵さんの白い器。鍋から立ち込める湯気で、カウンターの窓は少し曇り、優しい光が部屋を包みます。

「見てこれ、美味しそうでしょ?」と桜井さん。指差す鍋を覗いてみると、分厚いお揚げのようなものが鍋でグツグツ。

「うわ〜出汁がしみてて美味しそうですね〜!」と目をキラキラさせる私に、「あら騙されたわね!これ布巾なのよ!」と、桜井さんが豪快に笑います。

「使い勝手がいいから煮沸して何年も使ってるの。布巾も喜んでるわ!」

なんて、チャーミングな人!凛としていながら、かっこつけるわけでもなく、どこか肩の力が抜けたその姿に、胃袋も心もすっかり掴まれてしまったのです。

 

計算通りになんて行かない。「居直る」ことの意味

「なんだか、楽しそうでしょ? 私ね、すっかり居直ってるの」と桜井さん。

居直るというと、「急に態度を変える」という意味が一般的で、ネガティブなイメージがあります。そんな言葉を聞いて、きょとんとする私に桜井さんはこう続けます。

「もちろん、いい意味でよ。諦めてるように聞こえるけど、歳を重ねてわかったの。

どれだけ逆算して計画的に人生を送っても、その通りにいかないことってたくさんある。結局どうなるかなんてわからないんだから、とりあえずやってみようって私は思うの。進まなきゃ壁にも当たらないでしょう?

そう居直ってしまえば、『あれもやってない、これもやってない』なんて思わなくなるはずよ」

どこか肩の力が抜けた桜井さんの姿には、この「居直る」ことが大きな鍵となっているのかもしれません。そんな桜井さんの「居直る」の正体が気になり、お話を伺うことにしました。

 

30代で離婚、40代で料理を仕事に。人生は「計算」できない!

桜井さん:
「私ね、30代で離婚したの。息子と娘がいたから、この先どうしようってその時はじめて思った。

子供の前では強く頼もしい母でいたかったけど、しばらくは毎晩のように悩んでました。『私はこの世で一番寂しい人間なんだわ』って思ってたもの。今でこそ『自分がいいなら、それでいい』なんて居直れているけれど、当時はまだそんな状態じゃなかったですね」

そんな桜井さんは、離婚後の45歳の時、日本ではあまり知られていなかったケータリングの会社を立ち上げます。

桜井さん:
「若い頃は将来は何になりたいとか、何も考えてなかった。とにかく気になったものは色々チャレンジしてたと思います。旅が好きだから、子供とも色んなところを旅行したりね。学校を休ませて連れていっちゃうもんだから、よく先生に注意されてたくらいです(笑)」

「でも40代のとき、これからはケータリングが面白いよって仲のいい友人に言われて。当時、海外では一般的で、いろんな撮影の現場に呼ばれてたって聞いて、それなら私もやってみよう!って思ったの。日本でケータリングをやってる人がほとんどいなかったから、始めたはいいけど、すべてが手探りだった」

しかし、持ち前のセンスと明るさで、立ち上げた会社はまもなく軌道に乗ります。

「グッチ」や「イッセイ・ミヤケ」といった一流ブランドをはじめ、人気ギャラリーのオープニングなど、引っ張りだこの日々が続きました。

そして、このケータリングの仕事をきっかけに、50歳で東京・西麻布に最初の「ごはんやパロル」をオープン。お店は、毎日お客さんで賑わい、ケータリング業との両立で、働きづめの毎日です。

「心の底から忙しかった!って思うけど、何より楽しかったのよね。神様、今日も忙しかった、ありがとう!って毎日のように感謝したわ(笑)」

年齢はただの数字と言わんばかりに、タフに仕事を楽しむ桜井さん。しかし、そんな桜井さんが60歳になった時、突然、仕事を辞め、伊豆高原に移住することを選びます。後編では、桜井さんが「居直る」ことを決めるに至った経緯を伺います。

(つづく)

 【写真】原田教正

もくじ

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桜井莞子(さくらい・えみこ)

東京・青山「ごはんやパロル」店主。デザイン会社などを経て、1988年にケータリングの会社を設立。1994年、西麻布に最初のお店をオープンする。その後、2004年に伊豆高原に拠点を移し、料理教室をはじめるが、2014年、71歳の時に再び「ごはんやパロル」を開く。

 

桜井さんの密着ドキュメンタリー映像もご覧ください。

*スマートフォンでご視聴の場合、再生後、縦向きのまま、右下の全画面表示を押してご覧ください。

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